デラシネ

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Perch.のお手紙 #104

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南の島の朝は早い。


渓谷の狭間から現れる嘘のようなオレンジの朝焼けが見る間に明るくなり

今日もお任せください、と言わんばかりの力強い光がぐいぐいと満ちる。


この島で、神様が太陽をつかまえたそうだ。どうりでいつも朝が神々しい。


キッチンの小さな窓はサッシが白いペンキで塗られていて

私はいつもその窓枠から朝の空を眺めている。


ずっしりと重いマグカップに注いだ深煎りのコーヒー。


目玉焼きの油脂を吸わせてもなおパサついている薄いトースト。


キッチンに1脚だけ置いた背の高いスツールに腰かけ

壁に寄りかかって食べる朝ごはん。


白いペンキはパキパキとひび割れていて、

刻々と移り変わる風景の合間に その不思議な多角形に指でそっと触れてみる。


そろそろ潮時かな

日本に帰ろうかな


ぼんやりと考えてコーヒーを流し込み、ピックアップトラックの巨大なキーを掴んで仕事に向かう。



カヌーという名のレストラン。


小高い場所にある郵便局。


建設中のスーパーマーケット。


抜けた先にある、海、海、海。


全開の窓から甘い花の香り。


木々の隙間からこぼれる、小さな光たち。



ああ、これだから。



今日も下階の女性は謎の野菜を干すだろう。


隣人は上半身裸にサングラス姿で大音量のラジオを流し、向かいの家族は南国らしくない小さな白い犬を散歩に連れ出す。


パーキング一面に干された何かを踏まないように気をつけながら。



また明日考えよう。

明日の朝を迎えてから考えよう。


そんなことを繰り返す神様と太陽の島で。


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さて、今回のお手紙、いかがでしたでしょうか?

実は今回の著者は、いつもこのフッダー部分のテキストを書いてくれている、弊社のさっこさんによるものでした。


以前から告知をしていた「いつかの朝」という妹のヨウコと行う企画展。


私たちの周りの、大好きな人たちに「いつかの朝」をテーマに原稿を依頼しました。


6月7日の火曜日より笹塚のATELIER Perch.にて文章と写真による展示をスタートします。


小さな頃から、姉妹2人で遊びを発明するのが好きでした。 あの頃のたのしい遊びの延長にある様な、今私たちがたのしいと思う展示になると思います