伝統芸能の「革命」に込められた想いを探して
「伝統芸能における「革命」とは、すでに「伝統芸能」の四文字に含まれてもいるわけで、殊更とりたてて述べるほどのことではないのかもしれない」
これは、九龍ジョーさんの著書『伝統芸能の革命児たち』の「はじめに」の一節。
「はじめに」は、著者の想いが最も強く現れている部分だと思います。
だけど、これほど印象に残る言葉に出会うことって、そんなにありません。
「一体、どんな想いが込められているんだろう?」
気になって仕方ありませんでした。
『伝統芸能の革命児たち』は、様々な日本の伝統芸能の「今」を、次世代を担う若者たちにスポットライトを当てて紹介した1冊。
今回は、この本とともに、九龍さんの魅力についてご紹介します!
九龍ジョーさん×企画メシ
私がこの本を手に取ったのは、コピーライター・阿部広太郎さんが主宰されている『企画メシ』で、九龍さんが講義を担当されると知ったから。
伝統芸能のことはもちろん、「九龍さんのことを知りたい!」と思い、真っ先に手に取ったのがこの本でした。
講談と神田松之丞
『伝統芸能の革命児たち』に登場する様々な伝統芸能の中で、特に私が印象に残ったのは「講談」です。
講談については、神田松之丞(現:神田伯山)さんを中心に話が展開されます。
昔と比べて人気が衰えていた講談を、ここ数年で一気に盛り上げてきたのが神田松之丞さん。
「テレビで観たことある!」という方も、多いのではないでしょうか?
メディアでの露出だけでなく、講談を通じて確実に現代人の心を捉え、人気を博しています。
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最初、松之丞さんの印象は「現代に現れた、講談の天才」でした。
なぜなら、よく見るバラエティー番組に松之丞さんが登場された時、本当に話が面白かったから。
「『話す』に長けた天才だから、人気なんだろうな」という感想でした。
革命の裏に「工夫を怠らない若者」
一方で、九龍さんは、本の中で松之丞さんについてこんな風に述べています。
松之丞は、百年に一人の天才でもなければ、突然変異の人でもなかった。
芸道を自ら険しくしながら、同時代を生きるご見物たちを納得させるための、工夫を怠らない若者なのだ。
この文章を読んだ時、私は深く反省しました。
松之丞さんの講談をまともに見たこともなかったのに、何となくテレビで観た印象だけで「天才だ」と決めつけていたからです。
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ここまで読んでくださった皆さん、ちょっと講談が気になっていませんか?
そんな皆さんに、ぜひご覧頂きたいのが、神田伯山として初めての読み物となった『中村仲蔵』。『伝統芸能の革命児たち』にも登場します!
※九龍さんが監修されているYouTube「神田伯山ティービィー」。字幕アリで見れるので、「初めて」という方も安心してお楽しみ頂けます!
ものすごく簡単に説明すると…
『中村仲蔵』とは、血のない役者(門閥外の役者)だった初代・中村仲蔵が自らの工夫によって、人気を得ていくというお話。
伝統を守るだけでなく、自らの芸を工夫し続けることで今の時代に評価されている白山さんに重なる作品なのです。
「今」目の前にいるお客さんを喜ばす”工夫”
「伝統芸能における「革命」とは、すでに「伝統芸能」の四文字に含まれてもいるわけで、殊更とりたてて述べるほどのことではないのかもしれない」
もう一度、この言葉に立ち返ってみます。
さまざまな時代の変化を超えてきた、伝統芸能。
何百年という時代を超えてもなお、今の時代を生きる人たちを楽しませていること自体が、まさに「革命」なのではないでしょうか?
そして、伝統を進化させながら「今」に受け継いできた「人」の存在。
講談が決して身近だったとは言えない私も、確かに、神田伯山さんの講談に見入って、惹かれているのです。
それは、「今」目の前にいるお客さんを喜ばすことにこだわり、積み重ねてきた、伯山さんの“工夫“が、そうさせているのだと実感しました。
「今」を切り取る九龍さんの魅力
最後に、私がどうしても忘れられない言葉を紹介します。
対談の中で、伯山さんは九龍さんについて、こう述べています。
「『今』の舞台が面白いかが大事。そして、その『今』を切り取れるのが九龍さんだ」
何百年と続く伝統を前に、潔く「今」を切り取れること。
それこそが九龍さんの魅力の一つなのだと、実感しました。
まさに、『伝統芸能の革命児たち』では、九龍さんを通じて伝統芸能の「今」が記されています。
私たちが今の「革命」を知ることができるのは、九龍さんのような伝え手がいてこそだ、と感じたのでした。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
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