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#8_日々雑感

0.前書き

◆本記事は「裏 法務系 AdventCalendar2020」(#裏legalAC)の12/14エントリーです。IT企業法務の狼(@kick914)からバトンを引き継ぎました。
◆自己紹介
ここ数年のAdvent Calendarにおける諸先輩の素敵な盛り上がり、横目で見ていましたが、法務職に戻って2年ちょい経ったのもあり初参戦です。よろしくお願いします。
社会人歴15年目、うち法務および関連業務歴は約9年。
現在は創業十数年目のIT企業で法務担当(自分含め2名体制で自社+子会社合計3社対応)。経歴は今春「法務の転職」でこちらにインタビュー掲載いただいてます。
◆テーマ
法務専任者として総務組織にいたのですが、今夏に法務だけの組織となり、なんちゃって管理職になりました。それから頭の周りをふよふよ漂っている「普通の法務なんてどこにもいないよなぁ」ということについて、つらつらと書いてみました。

1.法務とは

 「法務職です」「法務担当です」とひとくちに言っても様々なキャリアと働き方があって「ふつうの法務」はどこにもいない。
 大企業で、コーポレート枠で採用されずっと管理系業務をグルグルする場合もあれば、ジョブローの一環として一時期放り込まれるのみの人もいる。一方で事務アシスタントの名のもとに、派遣社員としてひっそりと法務部門において専門知識のブラッシュアップをする人もいる。法学部や法科大学院を出ている人もいれば、全く違う学部学科を出ている人もいる。
 その一方で、法律というものは約2000本ほどある(それを支える法令まで広げると8000本を超えるらしい)。必要とされる知識が、必要とされる実務能力が、一体どのあたりにあるのかというところは、所属する組織のビジネス領域/業種(主管官庁)/組織の規模/組織の成長フェーズ/管理部門長のキャリア/所属組織の上場非上場、等々により大きく異なってくる。
 

2.部署か、ヒトか

 そんな中で、一人目の法務専任平社員という恵まれた立ち位置で私は今の仕事場に迎え入れられた。そして2年数か月経過し、いつの間にか法務部門が切り分けられて、その長として中間管理職的なことをしている。契約書の審査実務も担当者として並行して行っているので、いわゆるプレイングマネージャーというやつだ。この立場が地味に難しいということを、私は取り組み始めてから思い知った。このツイートをしたようなことに向き合うことになったから。

 組織が小さい間は、社長や、管理部長や、顧問弁護士あるいは親会社でそうした業務にあたっている方々が、契約書や登記や、その中身についてみてくれている。組織が小さいうちは、たかが契約書といっても、忖度できることとできないことの狭間で苦しむことも少なくないし営業優先の面も強いだろうけれど、組織が大きくなり、あるいは上場をするなどの変化を経て、この辺りがひそやかに激変していくこととなる。
 社長や管理部長にお伺いを立てていたことについても、一つ下の部長/チーム長クラスに権限が委譲されていく。私がジョインした組織では、法務の権限移譲は行われていなくて、かくして「法務(チーム/部)が言うならしょうがない」への地道な日々が課せられたというわけだ。

3.必要とされてきた歴史

 「法務」という業務分掌が生まれた背景は大体似たり寄ったりの事情があると思う。新卒時に勤めていた会社然り、昨今のLegalTech系セミナーなどでうかがうこともある他社様の事例然り。
 1つは、セールス(営業)担当の手元での契約内容の吟味不足などによるトラブル頻発に伴う発足、もう一つは規制業種における官公庁対応部門としての設置(例えば、輸送業・運送業の大手は運賃一覧を国交省に提出して認めてもらうという行為の手続きが必要でそれをやるための組織。新しい領域のビジネスをする会社におけるロビイング担当も同じ)。両方を共に両輪で回している中規模~大規模企業も少なくない。
 つまり、「法務」に望まれている役割は、おおむねこの2つと同じかそれに近い源流をもつ、ビジネス手続きと判断だということ。
 さらに言うと、個々の企業における製品やサービスの売買と決済に関してはすでに各部門が機能し始めてから必要とされて生まれてくるばんそうこう的な存在なのだということ。

4.明日はどっちだ

 時に嫌なことをきちんと提言するばんそうこうのような立ち位置だと気づいたところではあるけれど、今年の目まぐるしい社会環境の変化もそうだし、IT企業を取り巻く技術の進歩やGAFAと国家の攻防戦とか、法制とか政策のイマイチ意味わからなさとか、そうしたものも依然としてそこにある。
 そんな中でとてもいいなと思って、じっと眺めて、まとまらない考えを少し後押ししてくれているものがあるので、掲載しておく。
◆法務人材スキルマップ(PDF・経産省)https://www.meti.go.jp/press/2019/11/20191119002/20191119002-4.pdf
国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会 報告書の一部をなす資料です)

 このスキルマップの良いところは、これまでの経歴など関係なく、どっちにどう行きたいか、何ができていて、何ができていなくて正直度のランクにいるのか、というのがひとめでわかるところだ。(おそらく大体の法務担当者がでこぼこなのだろうとおもう)
 手続きの自動化は進み、あまり何も考えなくても契約書はできる世界がすぐそこにある。だが、その契約書が本当にクライアント向けのリスクを低減するつくりになっているのか、居ないのかを判断するのは当面私たちの仕事なんだろうなと思う。(IT企業にいてさえそう思うので、あまり間違っていないと信じている。)
 今いる組織に、今いるチームに、今手掛けている仕事に、向き合う相手の部署に、その担当者に、それぞれにとって、どのような法務の人でありたいか、あるべきか、時々は考えながら歩いて行く必要がある。それを忘れてしまうと、ばんそうこうの役割すら担えずに今いるここを去ることになる。それだけは避けたいなと思う今日この頃だったりする。

Fin.あとがき

 目の前をふよふよ漂っている言葉を並べたので、いつも私の脈絡のないtweetを見ていてくれている友人たちにはいつもと同じ何かを見るように感じられたかもしれない。
 世知辛く書いているけれど、小さな組織からひとまわり大きくなろうとしている組織で、今の仕事を担わせていただいていること、もっと言うと、短い歴史を強く支えてきた社内ベテランの方々に本当にたくさんの壁打ち相手をしていただいていることには感謝以外の何も出てこない日々だ。
 当面はいまいる場所で修行をしていきたいと思っているし、修行の日々がきちんとめぐってまたアドベントカレンダー等のイベント的な何かに参加して、身の丈に合うことも合わないこともまずはやってみる機会をつかめたらいいなと思っている。

次は黒犬さんです。よろしくお願いします。

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