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公務員からアカデミアへの転職:博士号の重要性

はじめに

公務員に限らず、ビジネスマンからアカデミアの世界への転職を目指す方々にとって、博士号の取得は「必須」と考えていただい方がよいと思います。

正直、仕事を持ちながら、博士の学位を取得するのは、甘くはありません。
ただ、決して不可能な道ではないと、わたしは思います。

博士号取得の必要性

大学教員の公募をみると、理工系は博士の学位は必須。
人文や社会科学系では、修士でもOKの場合があります。
しかし、人文・社会科学系の場合においても、「博士の学位があることが望ましい」との記述が、公募要件にみられることが多くあります。

博士の学位は、さまざまなものの担保になると思いますが、その最大の価値は、研究能力の証明につきます。

これから大学教員としてのポジションを得るためには、大学に対して研究能力の証明をすることが必要になります。
博士号は、その最も強力な証明手段になると言えます。

要は、募集要件は修士となっていても、博士を持つほうが、圧倒的に有利になるということです。

博士の学位がなくても、実務経験でアカデミアの道が拓けるのではないか?
という考えは捨てたほうがよいと思います。
国のキャリア官僚の経歴でも、その実務経験をもって大学から声がかかることは、ほとんどないと思ったほうがいいでしょう。(本省の局長クラスで、大きな実績を残したなどがあれば、可能性があるかもしれません、、、が)

元厚生労働省のキャリア官僚であり、現在は神戸学院大学現代社会学部教授として活躍されておられる、中野雅至先生は、ビジネスマンから大学教員になる方法としての、自身の経験を踏まえた多くの書籍を出されています。
先生の本を読んでみても、厚労省の中堅キャリアという経歴は、大学教員の採用には、ほとんど影響がないと明言されています。

アカデミアで生きていくためには、研究者としての基礎的な知識とスキルや論理的思考を十分に持ち、これからも研究のアウトプットを出し続けてもらえるということを認めてもらう必要があります。

これを、実務経験を通して、大学に認めてもらうには、相当のキャリアが要求されるでしょう。
それよりも簡単に手に入るパスポートが、博士の学位なのです。

研究能力の証明としての論文執筆

では、博士の学位にこれから挑戦しようとする方は、何をもって研究能力の証明をすればよいのでしょうか?

先の、中野雅至先生の著作の一つである、『ビジネスマンが大学教授、客員教授になる方法』には、大学教員として採用されるための第一歩として、「個人の名前で書き物を発表する」ことを挙げられています。
これは、具体的には学術論文を出すことを意味します。

公務員として勤務する中で、個人の名前で意見を発表する機会は、まずありません。
勘違いして、実名で朝日新聞のオピニオン欄に意見などを投稿したりでもしたら、人事当局のブラックリストに掲載されることは間違いないでしょう。

そういう危ない橋を渡ろうとする方(公務員の中でも、公立学校教員の方が多い気がしますが、、、)を、たまに新聞でみたりしますけど、実名新聞投稿はなんのメリットもないので、絶対にやめたほうがいいと思います。

一方、学術論文の発表は、実名でも、人事上のリスクはかなり低くなると思います。

一つには、人事課の連中が、学術論文が掲載される雑誌を手にする可能性が限りなく低いからです。
わたしが、修士・博士に通っていたのは、職場には報告(といっても許可を得るとかでなく、課内の年一回の人事ヒアリングで口頭でつたえていただけですが)しても、人事課の連中は、みんな学部卒(大学は、帝大クラスが多かったですが)なので、大学院の研究がなにをするのか、たぶん表面上の知識だけ(要は、ネットでググる程度)で、理解していなかったと思います。
まあ、面倒(レールから外れたこと)なことをしているが、実害がないので、放置、、、とうい状態だったと思います。

万が一、人事課が学術論文に気がつくとしたら、あなたが、論文が雑誌に掲載された云々を職場でしゃべり、それに嫉妬した人が人事課に密告。
このパタンくらいでしょう。

仮に、人事課に学術論文の投稿・掲載がばれたとしても、表立ったペナルティを課されれることはないはずです。
(所属する自治体の内規で、そうした論文の投稿もいちいち、職場の許可を得よ!となっている場合、無許可でやれば、別の話だと思いますが、、、)

朝日新聞に勤務先名を記載した実名で投稿するインパクとに比べて、普通の人事課職員が、学術論文の価値や影響を、理解できるわけないと思って、まず大丈夫。
わたしは、ずっとそう思っていて、なんのトラブルにもなりませんでした。

何か気に食わないが、表立って冷遇する理由にもなりにくいはずです。
まあ、人事課担当の頭の中の要注意人物リストに、インプットされるくらいでしょうか?

ただ、わたしの場合、そうした状況に、出先機関に追いやる人事の内申が所属から上げられたため、人事課も「よしよし」と思って、出先に飛ばされました。

基本、自己啓発やリスキリングに取り組んでいることを、職場関係者にしゃべるのはやめた方がいいです。
周りに喋るメリットはまったくないので、いくら仲のよいと思っている人にも、話さないに限ります。

わたしは実名で自分の成果を表に出したいタイプ

わたしは、本来、実名で自分の成果を表に出したい人間です。
なので、公務員や会社勤めは向いていないのでしょう。
組織に貢献するという喜びは、皆無だと思います。

基本、自分の成果はしっかりとアピールして、自身のブランディングに活用したい。
常にそう思っています。
県職員の時代もそうでした。

県職員時代は、仕事の殆どが、経済分析に関連する業務の担当でした。
そうした仕事を通じて、知事の答弁や想定問答(議会や記者会見)を、たくさん作成してきました。

県職員なので、知事がしゃべる内容を、間違いない状態で書き上げるのは、公務員として重要な業務になります。
国会の大臣答弁と同じことです。

その作業を、面白いと思うことは一度もありませんでした。
しかし、知事に近いところの仕事ができるというのは、多くの県職員にとっては、モチベーションの上がる仕事だったようです。

わたしは、それよりも、個人としてのアウトプットを出したいと願っていました。
なので、残業してまで答弁作成に頑張る!ということはせず、あくまで定時内でおわる最高のアウトプットを心がけてました。

そうした答弁作成に、個人の名前が出ることはありませんが、給料の対価の仕事として、それを不満に思うことはありませんでした。

経済分析の業務を行う中では、庁内向けのレポートを作成して、内部資料として部局の上層部に説明したりすることも多々ありました。
こうした場合、わたしが原案を作成して、起案して所属長の決裁を得ます。
課の外に何か意思表示をする場合、それがたとえ庁内であっても、基本、決裁が必要になるからです。

このときレポートのクレジットは、わたしの個人名ではなく、所属の課名になります。
ささやかな抵抗として、巻末に、本件に対する問い合わせ先で、私の名前と連絡先のメアドを記すくらいのことしかできませんでした。

これも、組織としてはしょうがないと思っていました。

でもある日、許せない事件が起きました。
目立ちたがりやの部長が、地元の大学で、県の課題、、、みたいな関係で講演をした時のことです。

わたしは大学院で学んだ研究成果などを交えて、県の人口減少の要因分析で、自身が勤務していた県特有の現象を明らかにしました。それをレポートにまとめ、企画部門などに説明をしました。

ただ、それを大々的に施策に反映し、予算を取るというのは、現実的でないと、その目立ちがりやの部長に握りつぶされました。
まあ、県の仕事では、特に部長まで登れば、県の外郭団体に天下りが保証されるので、リスクを取ることはまずありません。
こうした、上の保身で、自分のアイデアが握りつぶされることは、入庁以来、よくあることなので、いい分析だったのだが、もったいないなぁ、、、くらいで、半分忘れかけていました。

しかし、それから、半年以上経ったある日、、、

グループウエアで、その目立ちたがりやの部長の予定を見ると、地元の大学で講演をするとの記載が、、、
部長の秘書担当から、その講演資料を入手しました。

すると、その目立ちたがりやの部長は、自分のキャリアに傷がつくと判断して握りつぶした分析結果を、その大学生向けの講演で、いかにも自分が分析をした結果みたいな形で資料を作っていました。
当然、発表者は、部長の所属+個人名でした。

これは、研究者であれば、剽窃(他人の研究成果を引用せずに、自分の研究成果のように振る舞う行為)に当たる内容です。
しかし、公務員の組織の中では、組織の一員として作成された内容を、組織で利用するには全く問題はありません。
一応、その部長も公務出張で、大学に講演に行っていたはずですので。

しかし、わたしは、こうした状況を、生理的に受け付けませんでした。

そういえば、、、
その部長の大学での発表の数週間前に、わたしの分析結果のデータを、所属長から出せと言われたのです。
仕事で作成したものなので、データを渡す拒否権はありません。
研究者として、第三者からデータ提供みたいなこと言われても、非常識野郎!!で速攻、拒否しますが、、、

何に使うのか?
渡す時に訪ねたところ、その課長はお茶を濁しました。
その時、目立ちたがりやの部長から、あの分析結果をデータでよこせ言われたのでしょう。

所属の課長からは、電子データをくれと言われたので、、、

この一件以来、自身の知見は、仕事としてレポートにまとめることは一切やめました。
分析は、基本、過去の資料を、直近の値にリバイス。
それにとどめて、他人に奪われるような新しい知見は、一切、県庁でアウトプットすることは、やめました。

過去の資料のリバイス。
これが、公務員の仕事の基本なので、なんの問題もありません。

ただ、新しい知見やアイデアの創出は、常に考えていました。
新しいこと、周りの課題を解決すること、そして地域貢献すること。自分の持つスキルをそうしたことに投入することは、大きな喜びを覚えます。(知事答弁を作成していて、そうした喜びは全く湧き出ませんでしたが、、)

そうした新しい知見やアイデアの創出は、時間外に考えて知的アウトプットにつなげ、学術論文として発表することにしました。

個人名で発表し、自分の成果として残る。
このスタイルが、わたしには向いていました。

博士号の取得には、多くの場合、複数の査読論文が受理され、公表ということが求められます。
わたしの博士課程の専攻では、3本が必須でした。
論文を書くことは、博士の学位の必須要件なので、こうしたわたしの行動は、知らず知らずのうちに、博士学位取得にリソースがシフトされていったのです。

まとめ

公務員として仕事に取り組みながらも、その成果を自分の実名で発表できないことに違和感を持たれている方。
わたしは、けっこう多いのではないかと思います。

そうした方こそ、学術論文を考えてみられたらいかがでしょうか?
博士課程に在籍しなくても、自身の興味ある分野の学会の会員になれば、その学会誌に投稿できます。

会費も社会科学系の学会であれば、1万円程度です。

これは、次回の話題につなげたいのですが、学会の会員になれば、年に1回は開催される学会の大会で、自身の研究成果を発表することも可能です。

他の研究者の方の研究を、間近で聴講するすることは、研究を進める上で、大きな刺激になります。

ぜひ、個人名で自身の成果を世の中に残したいと考える公務員のみなさん!

論文の執筆・投稿をされることをオススメします。

その積み重ねは、アカデミックの世界の門を、きっと開いてくれるきっかけになると思います。

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