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推し映画について語る6:「大学-At Berkeley」

昨年、元町映画館さんで、フレデリック・ワイズマン監督のドキュメンタリー映画を2本、鑑賞しました。ワイズマン監督は、元町映画館さんの特集で初めて知ったのですが、何ならすべての作品を観ればよかった…と思うほどです。鑑賞したのは「大学-At Berkeley」と「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」。どちらも、5冊分くらいの書籍を読んだのと同等の知見を得られたように思います、めちゃくちゃ勉強になる。何度でも観たい作品です。特に「At Berkeley」!

「大学-At Berkeley」

2019年11月末に鑑賞。元町映画館さんで「フレデリック・ワイズマンのすべて」特集があり、吟味を重ねた結果、こちらと「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」アンコール上映を観ました。

2013年のドキュメンタリー映画です。カルフォルニア大学バークレー校、果たして”今”はどういう状況なのだろうか。

カリフォルニア大学バークレー校は、1868年に創設された州立カリフォルニア大学の発祥地であり、アメリカで最も古く権威のある総合大学。世界有数の研究教育機関であり、学生運動の拠点にもなったリベラルな校風でも知られる。知的・社会的使命を果たすための授業や研究活動、構内で行われる学生たちの様々な活動やイベント、大学を維持・管理・経営していくための無数の会議や行政との折衝など、あらゆる活動を追う。(Filmarksより)

めちゃくちゃ面白かったです!244分の長尺ですが飽きません。

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カリフォルニア大学バークレー校のリアルが、運営側、職員、教授陣、学生、清掃スタッフ、大学警察に至るまで、様々な人々の視点から克明に描かれたドキュメンタリー作品。この4時間の作品に纏め上げるまでに、どれだけの時間と胆力を費やしたのかと思うと、尊敬しかないです。大学って良いなあと、しみじみ感じました。これを観てから学生になりたかった。

印象深いシーンがいくつか。復員軍人学生コミュニティでのディスカッションの場面。彼らの学びへの情熱と、バークレー校への感謝の想いに触れて、なんだか無性に泣けたのです。学びは、人間の魂の尊厳のために、無くてはならないものだと感じました。

序盤の”民主主義の欠陥を埋める新モデル”に関する討議は、もっと聴きたかったです。自分が興味を惹かれる分野が、はっきりわかる映画だなと感じました。(そういう意味でも、学校選びの前に観るとよいなと思ったり)

バークレー校では毎年、学生によるデモが行われるようなのですが、学生側の主張内容を振り返った学長が「彼らの主張には哲学が無い」と一刀両断するところに面白さを感じました。映画の構成的に、まず学生側のスピーチを先に聴き、次にデモ中心部の様子を観てからの学長の言葉だったので、学生の「デモをすることが目的になっている」、目的が欠落した運動の虚しさと、リーダーシップの欠如が悲しいなと思いました。

とても価値のある4時間でした。もっと本を読んだり、議論したりしたい。高校2年生ぐらいの時に鑑賞したら、大学の選び方や学びに好影響だと思うのですよね。教育の現場で、ぜひ鑑賞してほしい作品です。


「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」

こちらも名作でした。2019年7月「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」を鑑賞。本当に観てよかった。単なる"図書館の舞台裏"ドキュメンタリーではなく、アメリカの本質に触れられた気がします。

世界中の図書館員の憧れの的である世界屈指の知の殿堂、ニューヨーク公共図書館の舞台裏を、フレデリック・ワイズマン監督が捉えたドキュメンタリー。19世紀初頭の荘厳なボザール様式の建築物である本館と92の分館に6000万点のコレクションを誇るニューヨーク公共図書館は、地域住民や研究者たちへの徹底的なサービスでも知られている。2016年にアカデミー名誉賞を受賞したドキュメンタリーの巨匠ワイズマンが監督・録音・編集・製作を手がけ、資料や活動に誇りと愛情をもって働く司書やボランティアの姿をはじめ、観光客が決して立ち入れない舞台裏の様子を記録。同館が世界で最も有名である理由を示すことで、公共とは何か、そしてアメリカ社会を支える民主主義とは何かを浮かび上がらせていく。リチャード・ドーキンス博士、エルビス・コステロ、パティ・スミスら著名人も多数登場。第74回ベネチア国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞。(映画.comより)

劇場には年配の方が多かったように思うのですが、10代、20代の若者も観てくれたら、人生の志事が見つかるんじゃないかと思うのです。

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この作品を観て、政治家じゃなくても、教師じゃなくても、人間を育てることは出来るんだなと思ったのです。コミュニティのハブとしての図書館の可能性の大きさにワクワクしたし、NYPLの職員や、集う人々の情熱に泣きそうになりました。図書館って、人間の未来を創る知性を与えられる場所なんだなと…学びたいという気持ちは、未来を拓くのですね。

上映時間が4時間弱と、こちらもなかなかな長丁場だったのですが、NYPLの様々な取り組みを見せてくれるので、ザッピングしてるみたいに多様な情報や問題をインプットできてありがたかったです。

また、12月にアンコール上映を観た際は、2度目の鑑賞なので、NYPLの幹部達や司書やボランティアの、スピーチの内容をずっと追っていたのだけど、本当に「知」のシャワーを浴びている気分になるって楽しかったです。DVDを購入して、ひとつずつのトピックスを掘り下げていきたいくらい。


優れたビジネス書や哲学書を、5冊くらい読んだくらいの学びが得られたように思います。こんな素晴らしい作品が2,000円で観れるなんて、ドキュメンタリー映画って本当に凄いと思いました。またフレデリック・ワイズマン監督作品が上映されたら、必ず鑑賞したいと思います!

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