ヒハマタノボリクリカエス 13
私達は電車に乗った。
三百二十円の切符を片手に、揃って座席に腰をおろした。
この三人はどういった繋がりなのだろうと、車内の乗客がチラチラとこちらを気にしている。
無理もない。
当人も不思議だし。
ホスト風のハルに、不思議ちゃんファッションのユキさんそしてごく普通のカジュアルミホ。
いったいどういう関係。
ゆられ、ゆれながら私はこれまでの経緯を頭の中で整理してみた。
ハル、ユキさん、私。
けど、ここで今そうやってそんなこと考えているのって私だけだろう。
それぞれに会話はない。ハルは車内の天井を眺め、ユキさんなんて私の存在を無視して携帯を触っている。普通は、今から行く場所についてとか話をするものじゃないですか。
あ、この二人には私の今までの普通は通じないのだ。そうだ。そう思えば楽になるかもしれない。この方が私も気が楽だし、そんな会話なんて意味がないと思う。二人に共感する部分がたくさんある。これは、私も富裕じゃなくなるってこと?
普通、普通。
そういえば。
普通って何?
普通って何だろう。
普通。
答えが出てまま、目的地に着いてしまった。
そこは地下にあるバーだった。
私も近くならよく来たことがある繁華街のはずれにそこはあった。いかにも怪しそうで、汚いビルの中にあった。
ハル、ユキさん、真っ昼間からお酒ですか。
しかも、バーって初めてですけど。
ここってお酒を飲む所だよね。
お酒、まだそんなに呑めないし、しかも私、まだ確実に、未成年ですけど。
「ここだ、さあ入るぞ」
店の名前は「トレインスポッティング」だった。どういう意味だろう。英語、だよね、これって。今度調べてみようかな。
高校の英語って役にたたない。
そして、店のマスターは確実に普通ではなかった。
どこからその容姿を説明したらいいだろう。
まず、眉毛がない。眉毛が本来あるはずの場所にピアスが左右六個埋め込まれている。
髪の毛が両サイドにない、剃っている?そして頭のてっぺんから黒く長い髪が編み込まれて垂れ下がっている。
上半身はほぼ裸。シースルーみたいな服を着ている。乳首にもピアス。そして黒い龍のタトゥーが体中を走っている。
失礼だから先に謝ります。
ごめんなさい。
変態だ。
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