マンハッタンの西の物語
『ウエストサイド物語』__、1961年に日本で映画が公開された際は、そう邦題が付けられていたようである。
しかし、そのころの日本人にとって、ニューヨークというのはまだまだ遠く、マンハッタンの西側の物語ってなんぞや、という感じではなかったろうか。
今までの舞台や映画では、ウェストサイドがどの辺なのか、というのはあまり明言されていなかったと思うが、今回のスピルバーグ版では、再開発後は「リンカーンセンター」ができるというような看板が立っていた。
また、Jet songで街を練り歩く時に「W61st」の標識もあったので、あの辺で間違い無いのだろう。
私は、今までウェストサイドストーリーの舞台は、マンハッタンのもう少し下の方かな?と勝手に思っていたので、スピルバーグ版を見てとても驚いた。
(私は12年くらい前にNYに住んだ時期があり、土地勘はあるのだが、いかんせん帰国してからはNYに行っていないので若干感覚が古いかもしれない)
リンカーンセンターのあたりなんて、高級住宅街である。シュランク警部のセリフは、なるほど納得である。
さて、この後も、スピルバーグ版ウエストサイドストーリーについて、舞台版・1961年映画版との違いを踏まえながら感想を書いていくのだが、私が観たウエストサイドストーリー(WSSと略す)について、簡単に紹介しておく。
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・1961年映画版(DVDで何度も観た)
<以下はすべて舞台>
・劇団四季
・宝塚歌劇団 宙組
・来日版(シアターオーブにて)
・来日版(2019年IHIステージアラウンド東京にて)
・来日版(定かではないのだが…オペラ風の物…)
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である。ちなみに、舞台版で一番好きな演出だったのは、IHIステージアラウンド。セットも細部まで作り込まれていて好きだったし、体育館のダンスパーティ前の高まりと言ったらなかった。
キャストの雰囲気が、私の思うウエストサイドストーリーに近かったのは宝塚。おそらく、私が観た舞台版では役の設定の年齢に一番近いのは宝塚であったろうし、組ごとに上演する彼女たちは、JETSやSHARKSのように寝食を共にする生活をしているので、その空気感がほかでは出しえない物だったと思うのだ。
ちなみに、これらの舞台版と映画版の大きな違いは
・America(舞台版は、女の子たちのみ。)
・CoolとGee, Officer Krupkeが入れ替わっている(そのため、舞台版ではRiffが歌うCoolが、映画版ではIceがメインに)
・AmericaとTonightが入れ替え
・舞台版にあったバレエシークエンスが、映画版にはない
だろうか。他にもあるが、細かいところなどはWikiを見て欲しい。
ここまで映画版と舞台版のちがいを書いてきたが、今回のスピルバーグ版は、全然違うのだ。(この後はネタバレを含みます)
最初はびっくりしたが、細かい設定や曲順、ストーリーが違っていても「ウェストサイドストーリー」という物語であることに違いはなかった。
より、<映画>として表現された作品だとおもう。2回目に鑑賞した際にプログラムを買ったのだが、どうやら制作側もそれを意図していたようである。
さて、今回のWSS、Tonyは刑務所帰りなのである。
しかし、これがとても効いていて、私が今まで観たどのWSSよりTonyが元JETSぽいのだ。正直、1961年版もだけど、Tonyってあんまり不良感がない…が、今回は「確かに、Tonyは元JETSだな」と思わせてくれるので、決闘時の結末もなんだかリアルである。
人物設定といえば、Mariaの婚約者のChinoってば、SHARKSの一員でないのである。今までのWSSではBernardoってなんでChinoをMariaの婚約者に選んだのかよくわからなかったのだが、スピルバーグ版のChinoは、夜間学校にも通っており今後就職したらそれなりの給料がもらえそうなのである。そうなると、BernardoがChinoを選んだ理由がわかってくる。ただ、真面目に働こうとしていた彼が物語のラストにしてしまうことが余計悲しくなってくるというのも事実である。あまり描写はないが、Chinoは心からMariaを愛していたのか、それともBernadoの復讐からの行動だったのか…
また、今まで登場していたBernardoとMariaの父は声すらも今回は出てこない。Anitaが二人と同居しており、家でドレスを作っているようである。Bernardoも単にフラフラしているのではなく、ボクサーとして仕事をしている。
これまでのWSSの少年たちといえば、Tonyしか働いていないので、誰がどう見てもTonyがまともに見えるのだが、スピルバーグ版ではそれぞれ職についたりしており、多分年齢もちょっとだけ上の設定だ。16歳くらいの少年少女が学校も行かずに不良している、という描写が昔の話とはいえ、現代人には想像がしにくいせいかもしれない。
Mariaも、ブライダルショップでは働いておらず、デパートで清掃の仕事をしている。TonyとMariaの結婚式のシーンは、ブライダルショップではなく、彼らのデート先(しかもメトロに乗っていく)のクロイスターズ美術館で行われる。
この美術館と曲が素晴らしくマッチしていて荘厳で、この映画で特に好きなシーンの1つだ。
大きな役の設定の違いといえば、JETSの溜まり場・Tonyの仕事場であるDocの店の店主Docである。なんと、今回はDocはいない。いるのはDocの奥さんのバレンティーナで、演じるのはなんと、リタ・モレノ(1961年版Anita)である。
役の違いは他にもあるが、大きなところはこれくらいで、あとは、JETSもSHARKSも他のメンバーの影が薄い、というところだろうか。
Actionとかセリフちょびっとしかないし、タイマンも張らせてもらってない。
一番の違いは、セリフだと思う。舞台版も1961年映画版も、日本語版も細かな変更はあるのだが、結構一緒だったと思う。
が、今回のスピルバーグ版は同じセリフの方が少ない。実は、私は1961年映画版のセリフを半分くらいは覚えているため、これはほんとにリメイクなんだな、、、と鑑賞中に思ったくらいである。
同じセリフって…Killer!Killer!のとことか、Enough for you?のとこくらいだろうか。非常階段のシーンなども全然違う。
違いばかりを述べても仕方がないので、私の好きなシーンについて書きたいと思う。
1つはさっきのOne hand, one heart
体育館でのMombo
Americaーーーここは、昼間でとても華やかな雰囲気がとても印象的だったし、1961年と同様に男女の掛け合いとなっているのもよかった
CoolーーーCoolは元の舞台でも最高に大好きなシーンなのだが、今回は歌う場面も歌い手も変わっていて、衝撃的だった。でも、”Pow”という擬音語のはまり方がラストを想像させ、怖いくらいである。
Killer!Killer!のところーーーTonyがBernardoを殺したと知ったMariaの前にTonyが現れて、MariaがTonyを責めるのだが、ここの映像がとても美しいのだ。座り込むMariaの前にレースのカーテンが揺れて、、、さすが、の一言に尽きる。
というか、全編好きなシーンである。
すべてのカットが流れるように美しく、無駄がない。
そして、印象的だったのが衣装である。
JETSはブルー系、SHARKSはレッド系なのだが、注目すべきはMariaの衣装だ。
ダンスパーティは、これまでのWSS通りに白いドレスに赤いベルト(リボンではない)。おそらく、まだ染まっていないけど、SHARKSのチームだ、ということなのかなと。
そして、後半、Rumbleの前のMariaは水色のワンピースを着ている。これは、何を意味しているのだろう。
書いていたらまた観たくなってきた。2回観たけど、もう一回行こうかな・・・。
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