2022年9月22日世界平和統一家庭連合(旧統一教会)記者会見での福本修也弁護士の意見文字起こし

昨今のマスコミや政府で様々に議論されているところを見ながら法律家として申し上げて置かなければならない点が1点ございます。
それはフランスで2001年に制定された『反セクト法』を日本にも持ち込むべきであるという議論がされていることは皆さんご承知のことと思います。
ただ、この『反セクト法』を正確に理解しその時代的背景や実際の運用等をよくわかった上で議論されている方がどれほどいらっしゃるのか、私は疑問に思っております。

そもそもこの『反セクト法』が制定された経緯には1994年、1995年、1997年に『太陽寺院』という秘密主義の新宗教運動がスイス、フランス、カナダのケベック州で数十名の命を奪う集団自殺事件、組織的殺人事件が起こったのがきっかけでございます。

この事件の犠牲者の多くがフランス人だったんですね。
そのためフランス国内で、いまの日本と同じようなものすごい新興宗教に対する憎悪の報道、議論が議会を動かしてできたのがこの『反セクト法』なのですね。
そういった背景があるということをまず知っていただきたい。
この『反セクト法』について日本国内でで最も権威を持っておられるのが山形大学の教授の中島宏という方がいらっしゃいます。この方が書かれた論文に
フランス公法と反セクト法
がございます。この論文には学術的に制定された背景などが論じられているのですが、この論文の最後、408~409ページ(PDF中64~65ページ)に先生のご意見が書かれていますので紹介したいと思います。

いずれにせよ、その規模や教義の内容に関わらず宗教であると主張する団体に対する規制は、信敦の目由保障の観点から慎重且っ冷静であるべきであり、背景にある事情や法的伝統を見ずして反セクト法の安易な類似立法を求めるのは危険である。

特定の宗教団体を「狙い撃ち」にする事は、法的には政教分離原則から導かれる国家の宗教的中立性違反並びに信教の目由の侵害になる虞(おそれ)があり極めて望ましくない。

宗教団体に対して対策が求められる際に忘れてはならないのは、まずは現行法で何が出来るのかという視点であり・安易に新たな立法に頼るべきではない。

日本における『反セクト法』の権威者がこのように警鐘を鳴らしている、そのような危険な法律であるということをみなさん認識して頂きたい。

さらにイタリア宗教社会学者であり弁護士でもあり、保守的なカトリックグループの副会長を務めておられ、またフランスの『反セクト法』の議論にも加われたマッシモ・イントロヴィニエ氏が、最近の日本の状況を見てこのような投稿をなさっていました。

「カルト」:フランスの法律は日本のモデルか?
この副題として
フランスの反セクト法は、外国に輸出されるよりもむしろ国内で廃止されるべき失敗し誤った法律である。

となっています。

この中で、もともと『反セクト法』のターゲットとされていたのが、サイエントロジーとエホバの証人なのですが、この20年間でサイエントロジーやエホバの証人は1件も適用されていない。むしろ有能な弁護士が雇えない弱小な教団が処罰を受けているという実態があるということが報告されています。

このマッシモ氏が結論としておっしゃっているのが

現実の犯罪を行った宗教団体(および非宗教団体)と個人を起訴するのに、特別な法律は必要ない。特別な法律は宗教の自由に対する危険を作り出すだけであり、問題を混乱させることにより、現実の犯罪を起訴するのをより難しくするのである。反セクト法の20年間は、そのことをふんだんに証明した。それは失敗と誤りのモデルである。進歩はそれがフランスで廃止されることによってなされるべきであり、決して他国に輸出されることによってなされるべきではない

国内外の専門家はこのような見解をこの『反セクト法』に対して持っているということを皆様には改めて理解していただいた上で、現在行われているこの『反セクト法』制定に対しての議論を冷静に受け止めて頂きたいと考えております。

これが私の法律家としての意見でございます。



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