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きれいなシンメトリー親子〜『僕らの世界が交わるまで』感想(ネタバレあり)〜
(以下、映画『僕らの世界が交わるまで』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。)
価値観が合わずすれ違ってばかりいるが、実は似た者同士の母子を、きれいなシンメトリーの構造で描いていたのが印象的でした。
例えば冒頭から、配信中の息子の部屋のドアを開ける母、母がシャワーを浴びている浴室のドアを開ける息子、と対(つい)になる構図で主人公二人を描いています。その後も、家族(エヴリンの夫)の大事な行事を二人して忘れる、一方的に好意を寄せる相手に対して自分の考えを押し付けてしまう、など「自己愛が強い」二人が空回りしていく様子が対称的に繰り返し繰り返し描かれます。
そんなそっくりな二人なのに思いがすれ違ってしまう様を何度も見ていると、何とももどかしい気持ちになって、観客側もいつしか他人の家族の話というより自分事として引き込まれていきます。
また、「ドアの開け閉め」を効果的に使った演出も見事でした。
先述した冒頭の「勝手にドアを開ける母子」もそうですし、終盤でライラはドアを閉めることでジギーを拒絶します。そしてラストは、冒頭の「勝手にドアを開ける」というシーンに対して、「自らドアを開ける」というシーンで締めめくくられ、その巧みさには唸らされます。
初監督作とは思えないジェシー・アイゼンバーグの繊細且つ丁寧な演出が冴えわたり、ジュリアン・ムーアとフィン・ウォルフハードの切なくも可愛らしい演技が光る、素敵な作品でした。
俳優としてだけではなく、作り手としてのジェシー・アイゼンバーグの今後が楽しみです。
これは余談ですが、打ち込みで音楽を作るのが主流である現代において、毎回ギター一本でフォークソングを歌うスタイルを貫くジギーを何だか応援したくなりました。
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