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理想的な実写化では?~映画『カラオケ行こ!』感想(ネタバレなし)~

(以下、映画『カラオケ行こ!』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレはありません。ただし、映画に関する情報を出来るだけ入れないで鑑賞したいという方はご注意ください。)


最初に実写映画化のニュースを聞いた時は、「和山やまさんの原作の空気感をどうやって映像に落とし込むのだろう?」と思っていましたが、鑑賞後は「なるほど、こう来たか!良い!」と大満足です。

原作漫画の単なるモノマネに終始せず、映画独自の作品世界を作り出していました。
漫画の映画化作品には、原作をそのまま再現しようとするあまり、演技がオーバーになってしまうなど、映画としていびつな出来になっているものが相当数あると思います。しかし本作は、決してわざとらしくない抑えた演出や演技、セリフ回しによって、「合唱部の中学生がヤクザにカラオケを教える」というぶっ飛んだストーリーに、現実味を与えることに成功しています。
また、和山やまさん特有のユーモアも、全く面白さを損なうことなく映画にそのまま受け継がれていました。私が見た回では、上映中何回も大きな笑いが起きていたのが印象に残っています。

キャスト陣は全員本当に良かったですが、特に成田狂児を演じる綾野剛が素晴らしかった。軽くて抜けていて物腰が柔らかい一方で、どことなく狂気をはらんだ怖さも感じさせるという、複雑で魅力的な人物を原作のイメージに囚われすぎずに見事に演じ切っていました。狂児と、齋藤潤演じる主人公の岡聡実との、どことなくズレているやり取りもずーっと見ていたいと感じる微笑ましいものでした。

たくさん笑って、登場人物に感情移入して、さらに思わず涙しそうになるという上質なエンターテインメントに仕上がった作品だったと思います。

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