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フィルムが教えてくれるもの/#212

2022年になりカメラ業界は、一眼レフカメラからミラーレス一眼へ大きく変化した。2021年はフルサイズミラーレスの相次ぐ発表が業界を沸かせ、今年に入るとAPS-Cセンサーのミラーレスが軒を連ねている。一眼レフカメラに比べるとAFや高感度耐性、レンズの光学性能が飛躍的な進化を遂げた。加えてスマートフォン搭載のカメラもAI技術の発展と共に一眼カメラに劣らない性能を発揮している。一眼カメラが存続するか、それともスマートフォンが新たな時代を切り拓くのか今後が楽しみだ。

そんな時代の流れとは逆行するのがフィルムカメラ。記録はSDカードではなくフィルムに刻まれる。デジタルに比べるとその場では確認できず、画質は粗く、高感度耐性も低い。さらに枚数制限まであるのだ。不便に感じるフィルムカメラだが今の時代だからこそ写真と向き合うキッカケを与えてくれる。

現在はミラーレス一眼の発達により極限まで自動化され押すだけで綺麗な写真が撮れる時代。細かな設定やピンと位置や明るさなどはカメラが決めてくれる。だからこそ撮るものに集中できる。しかし、そこに撮影者の意図を組み込むことが難しくなったように感じる。対してフィルムカメラは露出、ピントなどマニュアルで調整する必要がある。シャッターを切ったのならフィルムを巻かなければならない。1枚写真を撮るのに何工程も必要で、やっと1枚が形になるのだ。だからこそ1枚に集中でき自身の想いや表現を反映できると言える。車で走りすぎるよりも歩いた方が道端の花や季節の移ろいに目が向くのと同じこと。被写体とどれだけ向き合い自身の見た世界を盛り込めるのか。ここに面白さが隠れている。

さらにフィルムの曖昧な写りが記憶に近く、残す意味合いをより深めてくれる。不足した情報は補う必要がある。フィルムの曖昧な写りはその不足分を鑑賞者に委ねている。だからこそ鑑賞者ごとにその写真に対する理解が異なる。1枚の写真を通してそこに何を感じ何をみるのか。フィルムは記憶に近い。うっすらしていた記憶が徐々に鮮明になっていき思い出せる。ぼんやりしていた像にピッタリとピントが合う感覚だ。

忘れかけていたそういう大切なものに気づくキッカケをフィルムが教えてくれる。


SUBARU(マカベ スバル)
鳥取県在住 / なにげない日常をテーマに写真を撮っている / 出張撮影 / 写真イベント企画  / 鳥取のPR活動も行なっている。
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