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ベトナムで韓国人に励まされたときの思い出

社長のパワハラが日に日に増している。

毎日今日こそは何も起きない様に祈るもむなしく、2日に1回は、暗号の如く読み取るのに時間がかかるメッセージの後、パワハラ電話がかかってくる。よくもここまでねちねちと日曜日の昼から人を追い詰められるものである。ちなみに社長は365日監視とメールチェックを欠かさない。


愚痴っちゃいけないと思いつつ、ベトナム人社員に愚痴をこぼす。
12歳下の彼女は私の味方だし、理解はしてくれるが、言語の隔たりもあり、本当に言いたいことは伝わらない。
彼女には自分の見せたくない部分をたくさん見せている。
その度に自己嫌悪に陥った。

私以外の外国人社員は何か食べながらのびのび仕事しているのに、私は常に社長の電話に怯えながら、監視カメラをいつも気にしながら仕事をする。
みんなとは給料も違うし、立場も違う。
愚痴をこぼす相手、共感してくれる人がいないのは辛い。

先週日曜日、また激しく電話で責められ消耗していたが、友人とごはんを食べる約束をしていたので、なんとか重い気持ちを無理やり切り替えて、約束していたレストランへ足を運ばせた。

知り合いの韓国人2人と、1人初対面のアルメニア人がいた。
アルメニア人以外英語がそこまで得意じゃないので、何となく4人で英語で話そうとするが、会話がうまく続かず、会話を途切れさせまいと変に気を使い、気疲れした。
韓国人女子とアルメニア人が先に帰り、私と韓国人男性と2人でなんとなく話をすることに。

私はその彼と深い話はしたことがなかった。
でもそのときは、誰かに弱音を吐きたかった。

「私、今会社でパワハラにあってて、もうこの国にいられないかもしれない。」
韓国語で彼に話した。

彼はとても私に同情してくれた。そしてこう言ってくれた。

「日本語でもいいから、とにかく思ってることをため込まないで吐き出さないとだめだ。もし誰も聞いてくれる人がいないなら、オッパ(お兄さん)がいつでも話聞くよ。」

日本人じゃない人に、日本語とは違う表現で慰められる。
やっぱり韓国人は感情をストレートに表に出そうとする人が多いから、こういうことが言えるのかもしれない。
思わず泣きそうになってしまったのをぐっと堪えた。
ここで泣けないのが自分だな。と思う。

多分彼も超ストレス社会の韓国で、きっと色々あったのだと思う。
心の健康はすごく大事だという彼の言葉は重みがあった。
彼はちなみに日本語が全くわからない。
それでも日本語でもいいから、と言ってくれたその言葉に、とても心が動かされた。
これが欧米ドラマなら慰められたあとにベッドインだが、現実はそうはならない。

昔韓国留学中に、ある友人に同じような事を言われたことを思い出した。
自分の言いたいことが韓国語でうまく言えず苦しんでいるとき、ある韓国人の女の子は、彼と同じ様に
「オンニ(お姉さん)、日本語でいいから言ってみて!」
と言ってくれた。
因みに彼女も日本語は全くわからない。

恐らく日本人だったら、韓国語でいいから何でも言って!とは言わないのではないだろうか。

自分の愚痴を話すことに、いつしか罪悪感を覚えていたけど、彼に少し聞いてもらって、救われた。
それから一切会うことはなくなってしまったけど、あの時の言葉は忘れられない。

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