エンジニアリングのコア業務

近年、製薬会社では、固定費削減の一貫として、自社のエンジニアリングを外注することがしばしば行われている。エンジニアリング業務は繁閑があるため、固定費として見るとそこにムダなあるように見えてしまい、その固定費をより多く研究開発費に回した方が理にかなっていると考えられている。
一方で、自社にエンジニアリングを残しておいた方が良いと考えている製薬会社もあり、オーナーズエンジニアリング、ユーザーエンジニアリング、インハウスなどと呼ばれ、外注先のエンジニアリングと差別化されてきた。では、自社に本当に残さなければならないコアのエンジニアリングには、どのようなものがあるのだろうか。

まず、エンジニアリングという言葉を定義しておきたい。広義には、工学的手法を用いて品質・コスト・納期をコントロールし、モノづくりを実現することだと考えている。具体的には、技術士法を引用すれば、計画、研究、設計、分析、試験、評価といった業務がエンジニアリングに該当する。では、こういった業務の中で何が自社にとってコア業務になるのであろうか。

私の部署では設備導入からその維持管理(保全)まで行っているが、設備導入でいうと、基本計画や基本設計といった思考や思想の部分がコアであり、これが決まってしまえば、後はその設計や計画にしたがって工事管理や試運転・バリデーションを進めていけば良いので、この工事管理、試運転、バリデーションといった実務的な部分は、外注に頼っても良いと考えている。また、保全については、メンテナンスプログラムを構築したり、社内調整をして計画を立たり、省エネや故障分析したりする部分がコアであり、実際の修繕は業者に頼っても良いと考えている。
設備導入や保全以外でのエンジニアリングとしては、処方設計、製品分析、技術移管、技術開発、装置・設備開発などの研究よりのエンジニアリングがあると思うが、これらの中でもやはり分析や実験の実務的な部分は外注やパートタイマーの方にお願いすることができると思っており、仮説を立てる、実験計画を立てる、結果を考察するといった思考や思想の部分がコアとなると考えている。

このような思考や思想といった知的労働がコア業務になり得ると共に、近年ではAI技術の向上により、知的労働の中でも非コア領域に仕分けされるものもでてくるであろう。そう考えると、究極的には人間の感性や芸術といった非サイエンスの部分がこれからのコア業務になっていくと思うし、サイエンスを基にしているエンジニアにとっては、AIを活用してより知的価値を生み出すことが、コア業務になっていくと考えている。
こう考えると、AIやIoTの技術にしっかりと付いて行って、積極的にその技術を活用していくことが、これからのエンジニアリングに大切なことだと思っている。


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