医薬品エンジニアの人材育成

私は製薬メーカーにエンジニアとして約16年間働いているが、後輩の育成の仕方にいつも悩んでいる。というのも、製薬のエンジニアリング業務は、幅広い設備の知識はもちろんのこと、医薬品の特性、製造工程、原価計算、会計・税務、物流、環境・省エネ、薬事やGMPといったレギュレーション、ICT・IoT・AI技術など、多岐な知識と技術と経験が必要であるためOJTによる育成がメインとなり、これらを一気に体系的に教育するのは難しいと考えている。
しかも、私の部署は私も含めて中途採用が多く、製薬メーカー出身ではないエンジニアの方に対する育成はさらに難しいと感じている。難しいが故に、一人前のエンジニアになれれば、社内でも社外でもニーズは高いと思う。

では、どうすれば効率的に人材育成を行うことができるのか。OJT以外に良い方法はないものか考えてみると、スキルマップを作成して計画的に育成していくオーソドックスな方法がまず考えられるが、さらに効率的に育成していける方法がないだろうか。私は2年間だけ製造オペレーターを経験し、製造の工程管理、生産設備のメンテナンス、SOPの作成・改訂、要員管理、工程改善などを学んだが、その時の上司から今でも忘れられない考え方を教わった。それは、「分からないなら自分で調べるより先に周りの先輩や上司に聞け。誰にも分からないならことだけを自分で調べて、それを周りに教えること。」というものであり、大学の研究室で教わった「自分で考えて自分で調べる」という考え方と正反対のものであった。会社は学校とは違い組織として事業を営んでおり、聞いて周りに迷惑をかけるよりも、迷惑をかけてでも早く自分が成長していくことの方が、会社にとってはプラスであるという考え方だ。それ故に、聞いても教えてくれない先輩がいたら、上司からコテンパに叱られていたのを覚えている。そんな環境だから、こちらから聞かなくても先輩の方から色々と教えてくれた。

この考え方に人材育成のヒントがあると思い、私の今の部署において、まず自分がこの考え方を実践するようにしている。自分だけではほとんど効果がないが、周りが感化されて同じようなことを実践するようになると、人材育成のスピードが飛躍的に上がるのではないかと考えている。本当は組織の長がトップダウンでやるのが一番早いと思うが、今の自分にできる精一杯のことであり、今後も続けていけたらと思っている。

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