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覗く、私という女


 私に空いた底の無い穴で濡れた指が、乾きを取り戻す。そうして我にかえったところで、この穴を覗く者は、私という女しかなかった。どうしようもなく、私という女しかないのだ。

ひた隠した恋の微動は、今宵も胸奥で私という女を震わせる。悦びの様を記憶の中で見つめ続け、そうする私を、また私という女は覗く。
覗く私という女を覗く私という女。
私を私という女以外の誰かが覗く日は来るのだろうか。

誰か?そんなはずはないだろう。
あなた、あなただ。
覗いてほしい。あなたに。

もし、あなたが私という女を覗く日が来たら心して欲しい。
私という女にある透明な膜を破るのは、あなたになるから。そして知ることになるから。私という女に透明な膜なんて存在しないことを。私という女なんてものが、はじめから存在しないということを。

絶望という果てを知っていて、どうしてだろうか。
私という女は、絶えずあなたに覗かれるのを待っている。
ずっと待っている。これからもずっと。

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