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金沢まち歩きの「おもてなし」 - 芸術・文化編 -


第一章:金沢百万石まつり

金沢の夏を彩る「金沢百万石まつり」は、昭和27年(1952年)から始まりました。この祭りは、毎年6月の第一週末に3日間開催され、金沢の街を華やかに彩ります。江戸時代、加賀藩は一揆を防ぐために城下で大勢の人が集まることを禁止していました。そのため、金沢には伝統的な祭りが少なかったのです。この背景から誕生したのが「金沢百万石まつり」です。
祭りのメインイベントは、前田利家入城行列であり、太鼓の響きが出発の合図となります。先頭の先導隊に続き、音楽パレード、ミス百万石、獅子舞行列、お松の方行列、大人奴行列、珠姫御輿入れ行列、子供奴行列、尾山神社御鳳輦、加賀鳶行列、4代・5代藩主行列、加賀八家老行列、そして最後に前田利家入城行列と、歴史絵巻が4時間に渡って繰り広げられます。
祭りは3日間にわたり、多彩な催しが行われます。一日目には夜の浅野川で約1200基の灯篭が放たれる「加賀友禅灯篭流し」や「子供提灯太鼓行列」が行われ、幻想的な光景が広がります。二日目には地元の民謡に合わせて、市民約1万2000人が街中で踊る「百万石踊り流し」が開催され、金沢の街全体が踊りの輪で包まれます。

第二章:長町武家屋敷跡

長町武家屋敷跡は、加賀藩の上・中級武士が暮らしたエリアです。土塀が続く街並みは、木羽板葺きの屋根がついた土塀や長屋門が通りの両側に連なり、藩政時代の雰囲気を今に伝えています。特に冬になると、雪から土塀を守るために「こも掛け」が施される光景は、金沢の冬の風物詩です。
このエリアの土塀は、武家屋敷ならではの堅牢な作りが特徴です。内部には砂利を混ぜて突き固められ、非常に頑丈な構造になっています。屋敷の角地には「こっぽ石」が置かれ、冬場に下駄の雪を落とす役割を果たしています。また、藩政期から人々の暮らしを潤してきた「大野庄用水」も屋敷の庭に取り込まれており、用水沿いには土産物店やカフェなどおしゃれな店も多く並んでいます。

第三章:妙立寺

妙立寺は、別名「忍者寺」として知られる仕掛け満載の寺院です。外観は一般的な2階建ての寺院に見えますが、内部は中2階や中々2階を設けた4階7層建ての構造になっています。忍者とは直接の関係はありませんが、多くの仕掛けが施されているため「忍者寺」と呼ばれています。
この寺院には、敵が侵入した際の防御策が数多く存在します。例えば、賽銭箱は深さ3メートルもあり、敵が侵入してきた際には落とし穴として機能します。また、本堂裏の引戸を開けて床板を外すと現れる隠し階段や、本殿の右後方上部に位置する隠し拝殿、さらに下男部屋や落とし穴階段、二枚戸といった防御策が巧妙に仕掛けられています。

第四章:金沢・アート&カルチャー

金沢21世紀美術館は、通り抜けできる円型の美術館として知られています。館内には多くのアートスペースがあり、訪れる人々を楽しませます。例えば、アートライブラリーではデザインや写真の専門書、アート雑誌を自由に閲覧できます。茶室では加賀藩主ゆかりの「松涛庵」や「三宇亭」があり、伝統的な茶の文化を体験できます。
また、キッズスタジオでは季節に合わせたテーマの作品制作や芸術体験プログラムが開催されており、子供たちも楽しめます。美術館内にはガラス張りの油圧式エレベーターや、美術館オリジナルグッズを販売するミュージアムショップもあり、訪れる人々に多彩な体験を提供しています。
特に注目すべき作品としては、レアンドロ・エルリッヒの「スイミングプール」や、ジェームス・タレルの「ブルー・プラネット・スカイ」、オラファー・エリアソンの「カラー・アクティヴィティ・ハウス」、フロリアン・クラールの「アリーナの為のクランクフェルト・ナンバー3」などがあります。これらの作品は、金沢21世紀美術館を訪れる人々に新たな発見と感動をもたらします。

第五章:金箔工芸館・金沢箔と加賀友禅会館

金沢箔の国内シェアは99%を誇り、その美しい金箔は多くの美術品や道具に使われています。金沢箔工芸館では、金箔に関する調査研究や、金箔が使われた美術品の展示が行われています。特に、土産として人気のあぶら取り紙は、京都の舞子さんが使っていた化粧紙が始まりとされています。金沢の湿度が高く、乾燥や静電気が起きにくい気候が金箔作りに適しているとされています。
加賀友禅会館では、全国的に知られる加賀友禅の着物が展示されています。加賀友禅は刺繍などの装飾を施さず、職人の手描きによる染めの技法だけで作り上げられるのが特徴です。室町時代の加賀独自の無地染め「梅染」が起源で、藩政期に入ると模様が施されるようになり、絵師の宮崎友禅斉によって技法が確立されました。
また、大樋美術館では、飴色が特徴の「大樋焼」が展示されています。大樋焼は楽焼唯一の脇窯であり、加賀藩御用窯としても知られています。初代長左衛門から文化勲章を受章した10代、11代の作品まで、大樋焼の歴史と茶道文化が紹介されています。
金沢の街を歩くと、その歴史や文化、芸術に触れることができる多彩な「おもてなし」に満ちています。それぞれのスポットを訪れることで、金沢の魅力を存分に感じることができるでしょう。

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