20201121 夜の散歩道「坂に導かれて」編(4)

さてさて、創作料理のお店にて、なんとも味のある酒器で熱燗をやりながら「次は何をいただこう?」かと頭を悩ます。メニューを見れば一品料理の「唐揚げ」や、ちょっと唐突感のある「肉厚ラムショルダー」なんてのもある。「さすがにラムショルダーはないな」と心の中で呟きながら他のメニューも見てみると「キムチ鍋」など鍋ものもあったりするが”ソロ呑み”で鍋はちょいとキツイ。日本酒にピッタリの「厚揚げ」なんかも捨てがたいが、鍋までではないけどもうちょっとお腹にずっしりくるものがいいなー、と考えていた。そしてずっと目にしながら敢えて避けていたメニュー「串揚げ」を自分に認識させてみた。「お腹には貯まるけど、油っこかたったりするし・・・。そもそも、串揚げ専門店って訳ではなさそうだからなー。」と、この点についてはやや不安を感じいている自分がいた。正直、串揚げって街の居酒屋的なお店で食べると、満足感はあるんだけど「旨い!」って素直に思えた経験が全然ない。もちろん、美味しくないって訳ではないのだけど、美味しい串揚げってどうしたって串揚げ専門店でないと食べられないと思っているし、こちらのお店は店構えとか含めて”串揚げオーラ”(?)みたいなものを発している感じではなかったし、それはマスターからも”串揚げ食べていけ〜”ビーム(?)もなかったので。とは言え、お通しに野菜スティックと各種ソースを出していたから、結構串揚げは定番なのだろうと思い直す。そして、覚悟を決めて(大げさ過ぎ)マスターに「串揚げを頂きたいんですけど、おまかせでお願いできますか?」と声を掛けた。マスターは、ちょっと笑みを浮かべながら「いいですよ。何本くらいにします?」と返してきたので、「5本くらいにしておきます。」って投げ返す。まー、様子見ってとこだ。

カウンターから見える調理場は、決して広いスペースではない。壁際に小さい業務用フライヤーがあるが、イメージ的にはこういったフライヤーでは、何個も唐揚げとかコロッケとか、フレンチポテトとかを揚げるのに使う感じのものなのだ。しかし、マスターは食材を指した串を人差し指と親指で軽くつまむようにして持ち、その最初の1本をフライヤーの油の中へ落とす。かと思ったら、マスターはその串を人差し指と親指でつまんだまま油の中には食材だけを入れて、じっくりと揚げ始めた。素人にはもちろんわからないが、でも何やらじっと油の中の串揚げを見つめて観察しているような姿に「おー、このマスターったら仕事が丁寧なんだな」とちょっと感心しつつ、先程よりは串揚げに期待を頂き始める。そして、1本目は確か「レンコン」だったか?(うる覚えでゴメンなさい)「どうぞ」と差し出された串を右手に持ち、口へと運び込んでみる。すると串揚げを一口噛んだほんのわずかな瞬間だが、自分の五感に「サクッ!」という音と食感が鳴り響いた。「えっ!衣が薄っ!」という衝撃が走る。そして、衣が薄いゆえに噛んだ瞬間に衣からレンコンへのバトンの受け渡しが実に鮮やか。そして、レンコンもシャキシャキ感をしっかり醸し出していて、衣とレンコンを噛みしめている口元が”ニヤリ”と緩んできているのが自分でも分かるほどであった。

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でも、一番の衝撃は「ベーコンうずら卵」の串揚げ。(↑この写真)

なぜって、それは次回にしておきましょう。それにしても、この串揚げをまた食べたくなってきた(笑)