デビル・フレンド26 強引な女
教区会議を終え、休憩を挟んだ後に、それぞれが、より専門的に分けられた会合に参加する。
私は、エクソシストが集結する “ Exorcism and Deliverance Conference “ 通称エクデリ会議に出席した。
キュミルの調査報告書を提出し、席についた。
私たちエクソシストには、階級的な序列は存在しないが、年齢や経験、成果などから自然と優劣が形成される。
この地域で最も権威のある"エクソシスト・ブラヴォーマノ"から名前を呼ばれ、私は即座に返事をして、席を立った。
私の背筋は緊張感で張り詰め、汗が流れ落ちるのを感じた。
彼はすでに直近で暴走しているキュミルに注目しているようで、私に対し速やかに調査を行うよう指示を出した。
さらに、彼は私の経費の使用範囲の増額も、提案してくれた。それにはありがたいと思ったが、同時に重大な責任を感じた。
そして、彼は私に一人のエクソシスターを紹介した。
彼女の名はエクソシスター・アルマティ。流れるような長い黒髪が彼女の特徴で、その美しさは一見しただけではアジア系か白人か区別がつかないほど透明感のある白い肌をして居た。
ヨーロッパ系の鼻筋と高い頬骨が彼女の顔に強い印象を与えていた。繊細な肌は、彼女の洗練された美しさを一層際立たせ、日本人女性が好む特有の大きな二重瞼は、少女的なあどけなささを示していた。
彼女の顔を一目見て、私は何とも言えない不安感に襲われた。
心が読みにくく、何を考えてるのか、どう言う性格なのか推察が難しい特有の雰囲気があった。
エクソシスト・ブラヴォーマノは、彼女と密に連絡を取り、助力をこうように、私に指示した。
その言葉は提案というよりは、キュミルの事は2人で解決しろという意思が込められてる様に感じた。
私は「アーメン」と了承の意を伝え、アルマティにも会釈をした。
エクデリ会議が終わると、アルマティがすぐに話しかけて来た。
「よろしくお願いします」と淡々と挨拶する彼女に、呆気に取られながらも、私も敬意を持って挨拶した。
通常、聖職者の役職は男性しかなれない。
司祭と同階級の称号であるエクソシストも、一般的には男性しか慣れないが、特別優秀な女性のみエクソシスターの称号を、大司教以上の推薦を得て、特例で得る事が出来る。
女性で有りながら役職を持つ彼女は、それほど有能だと言う事を示して居る。
とても頼もしいはずなのに、何か胸騒ぎのような、嫌な予感を、私は感じて居た。
彼女はとても強引で、出来れば自分も教会に住みたいと、挨拶もそこそこに提案して来た。
私は本能的に、危機感を感じ、部屋が無い事を理由にして断った。
単純に出会って間もない事が大きいとは思うが、彼女は自分より格上な感覚がして、警戒感を感じた。
出来れば、あまり身近に居てほしくないというか、彼女が近くにいると、妙な緊張感を感じてしまう、自分に気付いて居た。
残念そうと言うよりは、悔しさが滲む顔で、引き下がる彼女に、でも何か問題が起きたり、困った事があれば直ぐに連絡すると約束して、私は1人帰路についた。
教会への帰り道でもアルマティの事が脳裏から離れなかった。
彼女の言動や態度が、何故か印象に残り、私の心に奇妙な違和感を残して居た。
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