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ぱっとみ真面目な中間管理職の私が、芸人に憧れて芸人を諦めるまでの10年間(8)

今年ディズニーランドと一緒に40歳アニバーサリーを迎える、見た目も平凡、人生も平凡、中間管理職が天職の私が、18歳から28歳まで芸人になりたくてくすぶっていた話。そして、きっぱりあきらめた話。

私の相方

同級生の相方と私とは、熱量というかベクトルが違い、悩むことも多くありました。
お笑いをやってみたい、でも演技もどちらかというと得意ではない、ほかのサークルとかけもちしながら教育を学ぶ、まじめな大学生でした。
自分のことで精いっぱいな私は、「もっと相方に演技力があれば」といった、ネタを書く方の人にありがちな、性格の悪い苛立ちにさいなまれ、徐々に私がコンビ活動を減らす時期がありながらも、相方は私を見捨てることなく4年間相方を続けてくれていました。

ウケた

相方と私の掛け合いが一番うまく機能するのはどんなネタなのか。
悩んでいる中で転機となったネタがありました。
浜辺で足にロープをぐるぐる巻きにされて倒れている女がいる。
通りがかった女が助けようとするが、
「私は人魚姫で、王子様を待っているの」というイカれたやつだった、
という設定のコントでした。
確かこのネタは、私が人魚、相方が人魚で役割を入れ替えて2回ライブを行ったような気がします。
その時、どちらかがネタを飛ばした。つまり、セリフがわからなくなってしまった。流れは止まっていないが、明らかに次のセリフがわからないことは客席にも伝わりかけた。

2人とも頭が真っ白になったその時、私ははじめてアドリブで話し始めました。
私たちはとても"まじめな"コンビだったため、ライブまでにほかのコンビの何倍も練習をしており、かっちり"セリフ通りに"舞台に立っていました。

しかし、追い込まれてアドリブで話し始めたら、急にセリフが「活き」はじめた。
相方「私は人魚なの!(このあとの"予定した"セリフが二人とも出てこない)」

私「・・・いや、だからさあ・・これロープでしょ?」

相方「だから人魚なの!やめてよ!」

私「・・・もう(ロープを)ほどくよ。。」
相方「ほどくな!
私「いま、ほどくなっていったよね?(ロープだってこと認めたよね?)」

相方「・・・・・っ!」
突っ込みのタイミングドンピシャ。はじめて、笑いが起こった瞬間でした。

そうか、私はアドリブでやったほうがうまくいくのか。
手ごたえを感じた気がしました。しかしウケたのは、3分間でその1回だけでした。

見えてきた事実

なぜか大学祭にはライブよりも、美味しいワッフルを作りたがるサークルを楽しむ中で、大学生活が充実することで私の視界にかかっていた靄(もや)も薄くなっていきました。
その代わりにはっきり見えてきたのは「私という人間は面白くない」という悲しい事実でした。

そして私は4年生になりました。

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