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星降る島をそぞろ歩き ー辺境離島探訪 波照間島

沖縄に暮らしている当時、僕が考えたのは「どうせなら、住んでいる今だからこそ行く気になるが、県外からは観光でわざわざ行かないような島々を巡ってみよう」ということ。離島旅行の記憶をたどります。

波照間島のことは、有人島最南端の島で、季節によっては南十字星が見える、ということだけ知っていました。ある夏、職場の同僚の女性から「波照間島は、船便がしょっちゅう⽋航するから勤め⼈が⾏くのは向かないよ。私はニートのうちに⾏ったよ。」と挑発を受け、癪なので(?)⽬指してみることにしました。

沖縄本島の⾃宅から、陸・海・空を乗り継ぎ5時間。僕を乗せた⾼速船は、無事に波照間島港に到着しました。送迎してくれたゲストハウスのおかみさんに、粗⼤ゴミに⾒まごう古寂びた⾃転⾞を千円で借り受け、散策とまいります(結果論として、臀部を痛めたくない⽅には断然バイクをお薦めします)。 


(1)売店と「泡波」

 集落内に⼤⼿コンビニ等はなく、売店が数軒あるのみ。島内唯⼀の酒造所が製造する幻の泡盛「泡波」を⼊⼿できたらラッキー!とガイドブックの類で喧伝されているせいか、来店客の多くが開⼝⼀番「泡波置いていませんか?」と尋ねては肩を落とす光景が散⾒されました。ちなみに「泡波」、飲むだけなら島内や⽯垣島のバーでも扱っています。

(2)星空観測タワー 

当⽇予約でバスに⾶び乗り、星空ツアーにピン参加。やけにこなれたガイドによる解説が⼩笑いを誘います。余韻は冷めず、ゲストハウスに戻った後も外の草むらに寝転がりました。島には市街地がないので夜が暗く、満天の星空を肉眼で楽しめます。特に天の川の輝きには感動しました。

星座の輪郭を⽬で追って古代⼈のこじつけに嘆息し、異星⼈の存在に思いを馳せ。時期的に南⼗字星は⾒られなかったものの、星を眺め飽きることのない夜でした。
(下記2枚目は昼に再訪した観測タワー)

(3)⽇本のいちばん南にあるカフェ「kukuru cafe」

集落内には沖縄そば屋、セレクトショップ、かき氷屋、居酒屋などが点在しており、旅⼈同⼠、情報交換したり⼀緒に訪問したり、⼀期⼀会の交流を深めます。僕もゲストハウス初日はぼっちふて寝でしたが、二日目はたまたま意気投合した旅人たちと、島内を散策しました。

しかし昔、多摩の奥地で「東京最⻄端」を掲げたコンビニを⾒たときは思わず脱⼒したものですが、「⽇本最南端」カフェにはそれなりに説得⼒があります。いただいたのは“台湾⾵”かき氷ですが。

(4)ニシ浜

日本一との呼び声も高い「ハテルマブルー」のエメラルド。遠浅でシュノーケルにも適していますが、その日早朝の南米大地震の影響で「津波注意報」が発令中。警察にシュノーケル器具貸し出しを禁じられ、商売あがったり状態のレンタルショップでオリオンビールをすすりながら眺める天然ビーチの輝きは、一層忘れられない光景となりました。

(5)最南端の碑

最南端の碑のある高那崎は「断崖絶壁」の四字熟語が似合います。といっても東尋坊のような火曜サスペンス劇場感は皆無。全身に受ける海風の強さも相まって、ただ地球の雄大さ、太平洋の懐の深さを噛みしめ、立ち尽くすのみです。ここでふと、RPGの「世界の果て」(=マップ画面上の端っこ)を連想してしまった私は、野暮なのでしょうか。



余談ですが、石垣島や波照間島が属する八重山諸島には、琉球王朝に滅ぼされた豪族「オヤケアカハチ」の伝説があります(実在の人物です)。アカハチの出生地は波照間島といわれており、島内には生誕地の碑もあります。沖縄本島(琉球王朝)の歴史では「王朝に逆らった逆賊」ですが、地元・八重山では「本島の支配に抗った英雄」なんだとか。

うるま市にも、琉球王朝への反逆者で地元勝連の英雄・阿麻和利(アマワリ)伝説が残っています。薩摩藩の侵攻、琉球処分、“鉄の暴風”沖縄戦、米軍統治と返還後の基地問題など、本土では沖縄は「蹂躙される土地」として取り上げられることが多いですが、少し視点をずらせば、中心と周辺は容易に反転するという興味深い例を見ました。

さて残りは、余談と写真アラカルトです。

中心部の集落を除けば、ほぼサトウキビ畑か野原。遠出して日没を迎えると遭難します。

島内ではしばしば野育ちのヤギに遭遇します。

マンホールの「おすい」が可愛くて、思わず一枚。

津波警報で同僚の言葉がリフレインし、どうなることかと思いましたが、帰りの船は無事に出航。ちなみに波照間空港と石垣空港の定期便が復活する話が出ているものの、うまく進んでいないようです。

波照間島、訪問した沖縄の離島の中ではダントツでもう一度行きたい離島No.1です。どちらかといえば不便な島ですが、全体的に自然の美しさを最も感じることができたことと、やはり肉眼で見たミルキーウェイのインパクトかな……と。いつか必ず再訪したいと思っています。

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