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「技術力は人である」舞鶴で世界レベルの高精度部品を 萬工業株式会社

萬工業株式会社は1961年に先代が起業。「いろいろな事に挑戦していく」という意味を込めて、”よろず”と書いて”萬(まん)工業”と名付けたそうです。

創業当初は、商社として物流に関わっていましたが、取引先の町工場をまわるうちに「これが日本の技術力だ」と感じ、もの作りの世界に挑戦。金属加工を専門に扱うようになり、自動車部品をはじめとした精密部品を軸に様々な機械加工部品を手がけて来られたそうです。

今回は、創業者の息子であり、萬工業の2代目社長である、城代高典さんにお話をお伺いしてきました。

「ものづくりを舞鶴でしているのはいい人がたくさんおられるから!」あえて大手メーカーの工場から遠い場所で勝負する想い

インタビューを受ける城代社長

早速ですが、萬工業の強みを教えてください。

萬工業では、粉状の金属を焼き固めて成形された「焼結(しょうけつ)金属」を、さらに高精度なものに仕上げる金属加工部品をメインに製造を行っています。

例えば、トヨタ自動車のハイブリッド車に取り付けるパーキングブレーキは、ほとんどの車種で弊社の製品を使用しており、1日に12,000個ほど製造しております。その他にも、マウンテンバイクやロードバイクの変速機、新幹線のパンタグラフ、最近では新工場をJR真倉駅近くに立ち上げ、半導体製造装置に使われる超精密部品なども製造しています。

萬工業で作成された様々な製品

弊社のように、大手企業に部品を出荷する工場の多くは、コスト面や流通面などから、納入先の工場付近に工場を構えることがほとんどです。しかし、萬工業はあえてそこから遠い「舞鶴」で、もの作りを行っています。

例えば、トヨタ自動車の工場が近くにある、岐阜や名古屋の作業員はある程度工業製品に慣れています。もちろん同じような自動車部品を扱う会社も多く、人の取り合いになる。そのような環境下では、作業員も条件に応じて、転職、また転職と繰り返すような人も少なくありません。

ところが、舞鶴ではそういったことはなく、いい意味で擦れておらず、みんなまっさらな状態から始まる。人を見つけることは簡単ではないのですが、来ていただいた方はすごく頑張っていただける方が多いんですね。

素直で、細かいところをおろそかにしない、粘り強さがあります。そういった、いい人と一緒に頑張れることが萬工業の強みだと思います。

「この舞鶴で、地域の方々と一体となって、考えながらもの作りをしていくことに意味がある」と考えています。

いい機械を使用しても、最後は人の力。流出不具合ゼロへの誇り

製品出荷前検査の様子

大手企業と取引する中で、求められる技術力はどのようなものでしょうか。

萬工業は、大手自動車メーカーや機器メーカーに様々な製品を出荷しています。そこで求められるのが、顕微鏡や高精度寸法測定機器でしか製品の良し悪しを判断できないレベルでの緻密な仕事です。

高精度の機械をもってすれば良いものはできますが、最後は人の力です。機械が仕上げた製品の最終検品を、顕微鏡を使って人の手で行います。
 
製品を納品している自動車会社も、以前は「安くて良いものは世界中どこからでも手に入れる」という方針でしたが、近年は「安くて良いものを近くで手に入れる」という方針に変わりつつあります。その中で、製造工場から距離もある萬工業が生き残れているのは、やはり「距離に代えられないもの」があるからです。
 
値段に対する品質の良さ。それを支える社員の能力の高さ。この総合力が高く評価されているのだと思います。
 
弊社は、「納期遵守率100%、流出不具合0%」を誇りにしています。納期遵守率というのは、納期までに商品を納品するということ。流出不具合は、出荷後に加工ミスや製品に傷などが見つかるということです。

萬工業では、今まで、納期が遅れたことはありませんし、この4年間は流出不具合0%を達成することができております。毎月数百万個もの部品を取引先に納入するなかで、流出不具合を0にするのはとても大変です。このことを、社員も誇りに思っているからこそ、商品の出荷前検査もきっちり行ってくれているのだと思います。

 競争力のある価格で、納期をきちんと守りながら品質を担保するのは非常に難しいことですが、会社全体の意識で「自然に良いものができる」という環境ができあがっています。

「いいものを作るのは人間の能力。」社員一人ひとりと真摯に向き合う

社員一人一人が品質目標シートを記入し、掲示している

会社として、技術力を担保するために工夫している点を教えてください。

誰が作業をしても一定レベルの製品を納品するためには、手順書の整備が必要です。検査方法など、今まで積み上げてきたノウハウを誰が読んでも理解でき、同じレベルの作業ができる内容の手順書を作成しています。あとはやはり、従業員同士の協調性が必要なので、「報告・連絡・相談」の「ほうれんそう」が大切だと考えています。

そのためには、我々管理者側が「しっかりと聴くこと」が重要です。毎朝1人ひとりに「気づき事項」を報告してもらい、問題が起きたらすぐに全員が把握できるようにしています。

社内教育にも力を入れており、やる気のある社員には、ポリテクカレッジ京都(近畿能開大京都校)などに通って、スキルアップが図れるよう会社としても応援しています。

そのため、日々の業務を通じて、社員の成長が感じられた時、例えば、小さなことでも「社長!できました!」と報告してくれると、一番うれしいです。

会社が大きくなっても従業員を大切にしなければ、会社は成り立たないと思います。社員のうち、半分以上が女性で、子育て中の人もいますが、急な休みなどは、仕方のないことですし、今まで休みを断ったことはありません。

社員が「うちに来てよかった」と思ってもらえる環境になるよう心がけています。

「1/1000mm台の傷や誤差を見極める」舞鶴で宇宙品質を目指す

新工場で宇宙品質に挑む

これから萬工業が目指す未来について教えてください。

萬工業では、小物の高精度部品ができるように社員全員で努力しています。目標は「宇宙品質の製品」を作ること。

1/1000mm台の傷や誤差を見極めることのできる、技術力を持った工場に発展すること。難しいことのように聞こえるかもしれないですが、誰でも始めはゼロの状態から始まります。僕もそうでした。

 「宇宙品質」なんていうと、すごいところを目指しているように思われるかもしれませんが、そんなことはありません。社員のみなさんと一緒に、努力と試行錯誤を重ねながら、目標に向かって歩んでいきたいと思っています。

舞鶴から宇宙へ

社員の能力を信じ、各個人が最も才を発揮できるよう試行錯誤する社長のもとで、宇宙品質の製品がこの萬工業から生み出されるのは、そう遠い未来ではないかもしれません。

 そんな、舞鶴に夢を与えてくれる萬工業のこれからに、みなさん、乞うご期待ですよ。

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