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雪は温かい。 (前編)

久しぶりに外が白くなるほど、雪が降り続いている。


天気予報では、これから更に雪が降り続き、場所によっては積雪30cm以上となるそうだ。

JR線も見合わせ、帰宅ラッシュの電車の遅延は間逃れないだろう。

部屋から観ていても、
雪の冷たさを感じられそうな、
そんな日に聴いた話。

「積雪30cmなんか、全然。秋田はもっと積もるよ。ちゃんと出勤しなさいよ。」

冗談でぼやいた、
『明日は、大雪だから出勤出来ない。』に
真面目に返された。


彼女は、
山形県出身の80代女性。
そして、物忘れや記憶力の低下がある。
いわゆる、認知症である。

出身地は山形県。中でも山側にあった集落に住んでいたそうだ。


「 故郷の山形はね、ほんとにたくさんの雪が降ってたの。八王子の30cmなんて目じゃないの。

昔、だいぶ昔だけど、
私が小学生の頃なんて、通学するだけでも大変だった。
だって、ひと山超えないと学校にいけないんだから。片道1時間はかかってた。しかも、冬は雪道だよ、もっと時間がかかるし、
カンジキ*付けてたと思うけど、それでも、足は沈むし大変だった。」


少し説教口調でそう言った。


「ああ、今思い出した。」

ハッと何か、思い出したように顔を上げる。


「今思い出せば、小学校の通学は1年生から6年生まで、みんな一緒に下校してた。

誰に言われた訳でもなく、一緒に帰ってた。
居残りの子がいたら、
終わるまでみんなで待って下校してた。


1列になって、先頭は5年生、最後尾は6年生で、それ以外の1〜4年生中間に、年長者が守るように集団下校していた。

誰に言われた訳でもなく、自分たちが考えて動いてたんだ。」



ねぇ、知ってる? 

雪ってあったかいんだよ。


続く。


*雪や泥の上など不安定な地面を歩くための民具。靴・わらじなどの下に着用する。履くと接地面積が増え体重が分散されることから、雪に深くめり込まず、さらに斜面などでずり落ちにくくする効果がある。



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