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ミュージカル『パリのアメリカ人』と映画『巴里のアメリカ人』は別物だった話

 劇団四季の『パリのアメリカ人』を観た(2/24マチネ)。映画『巴里のアメリカ人』は数年前に鑑賞済みだが、かなり記憶が薄い状態で公演に足を運ぶことになった。(マリガンだっけ?モルガンだっけ?くらいのレベル)(正解はCMのあとで……) 

ガーシュウィンの音楽

 そもそも映画を観たのはガーシュウィンの音楽が目当てだった。ガーシュウィンといえば、映画にもミュージカルにも登場する代表曲《アイ・ガット・リズム》など数多くのポピュラー音楽、管弦楽《ラプソディ・イン・ブルー》やオペラ《ポーギーとベス》などのクラシック音楽で知られている。ジャズとクラシックを融合させた曲調は「シンフォニック・ジャズ」と評された。ちなみに私は《ラプソディ・イン・ブルー》を聴くとのだめを思い出す世代。中学高校時代は吹奏楽部だったが大学ではオーケストラに入ると決めたのはのだめの影響だと思う。

 さて、話を元に戻そう。ガーシュウィンの書く曲は『パリのアメリカ人』の主人公ジェリー・マリガンみたいに明るくてちょっとお調子者という雰囲気の曲が多い気がする。もちろんブルースの要素もたくさんあるのだけれど、やっぱり根っこにはラグタイムがある。(ラグタイムってなに?という方はスコット・ジョプリンの《エンターテイナー》を思い浮かべていただければ。きっと曲名は知らなくても聴いたことがあるはず。)映画でもミュージカルでもガーシュウィンの音楽が絶えず流れていて、誰が聴いてもわあ!アメリカ!!な雰囲気が味わえる。

映画とミュージカルの物語の違い

 映画とミュージカルで決定的に違ったのは、戦争についての描写だ。冒頭からまったく違っていて、あれ?こんなシーンあったっけ?忘れているだけ?と思ったがやはり違っていた。映画のほうは戦後のパリの様子はあえては描いていなかった。ミュージカルのほうはそこを分かりやすく前面に押し出している。かなりストーリーが違っていたようだ(細かいところは映画を見直さなければ……)。ミュージカルはそれぞれの場面がとても美しくかわいらしく作られていたし(セットと衣装が素敵!)、バレエを踊るシーンも本格的で見入ってしまう。舞台芸術としてきちんと完成されていた。が、映画とは別物で観る必要があったようだ。

 個人的には映画の冒頭、朝ジェリーが起きるシーンと、子供たちが「英語を話して!」と駆け寄ってきてジェリーがタップダンスを披露するシーン(とても長い)が好きなので、そこがミュージカルで観られなかったのが残念。映画を原案としてはいるが、別物として観たほうがおそらく純粋に楽しめただろう。レベルの高いダンス、バレエ、歌は十分に楽しめたのだが、いまいち物語の世界に入り込んでいけなかった。ちなみに一緒に観劇した友人は映画を観ていなかったが、すごくよかった!と、楽しめたようだ。

 自分の中ではいろいろと迷走したが、それでもやはり、ガーシュウィンのゴキゲンな音楽とリズが踊るバレエのシーン(思いもよらずコンテンポラリーな雰囲気)は素晴らしい。うーん、、、認識を改めてもう一度観たい!

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