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伝えたいことがない人はマイクの前に立つべからず

結構前のこと。NHKで「コロナ禍のRADIO」という番組を見た。正確には、夫が録画して見ていたのを横からチラ見した。ラジオを通してコロナ禍の大学生のリアルを届けるアナウンサー志望の学生を特集したドキュメンタリー番組だ。そこで耳にした、学生の所属するゼミの先生の言葉が記憶に残っている。

伝えたいことがない人はマイクの前に立つべからず

どうやら放送の界隈では有名な言葉らしい。つまり、マイクの前で話すというのはそれ自体が目的ではなく手段だ、と。

これを書くことに置き換えてみたらどうだろう。

私は何かを伝えたくて文章を書くのだろうか。エモそうな、あるいは鬱々と思い悩んでいそうな、それらしく取り繕った何かを書くこと自体を目的にしているに過ぎないのではないだろうか。

世の中にはたくさんの言葉が溢れ返っている。抱えきれないほどの「情報」とタグ付けられたどこかの誰かが編み出した文章が、誰かに見つけてもらうのを今か今かと待っている。

表現欲と創作欲と自己顕示欲と承認欲と、自分の存在を肯定したい欲と、いろんなものがない交ぜになったどろりとした骨のない何かをインターネットの海に放る。だいたいは波にかき消されて、藻屑と消えて底に沈んでいく。せめて魚に食べられたかった。カモメに拾われて空を飛びたかった。

書きたいってなんだ。伝えたいってなんだ。

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