見出し画像

バリキャリじゃなくて、ごめん。

「まいちゃんはバリバリ働くキャリアウーマンになりそう」

「進路決めた?」という自称進学校の合言葉みたいな会話の流れで、昼休みに弁当を食べながら友達が言った。私はまんざらでもないように「そうかな」なんて答えて笑った。

あの頃。自分には無限の可能性があって、何者にもなれると信じて疑わなかったあの頃の私へ。

ごめん。私はバリキャリになれなかったよ。勉強頑張ったけど、ごめん。28歳の私は扶養内で働くパートタイマーになったよ。

新卒で入った会社を辞めてからずっと私の背後には罪悪感が張り付いている。結局半年くらい専業主婦をやって、今は扶養内でパートとして働きはじめた。当たり前だけど扶養内だってパートだって仕事は仕事だ。そうとは分かっていても「私は正社員ではない」罪悪感が脳裏をかすめる。夫に負担をかけていると思うし、スキルアップも収入アップも望めない環境が将来のプラスになるとも思えない。

でも正社員としての転職活動はしなかった。転職サイトで検索するくらいはした。人手不足のIT業界、求人情報はたくさんある。でもその仕事内容を見るたびに私の心は縮んだ。自信がない。また前と同じように心身めちゃくちゃにならない自信がない。

よく晴れた日に布団の上に丸まってしくしくと涙を流すあの情けない自分の姿が。泣きながらご飯を食べて泣きながら眠りにつく虚しさが。死にかけみたいな顔にアイシャドウとリップとなけなしの笑顔を貼り付けて満員電車に揺られるあの苦しさが。自分の心にわだかまっている残像が蘇る。

扶養控除について調べていると、そこには損とか得とか、働きたくない奴の言い訳だとか、離婚や死別のリスクを考えていないとか、扶養内パートを隠れ蓑にする奴が非正規の待遇を悪化させるから迷惑とか、そんなフレーズが目に入る。どこの誰が書いているのか知らないけれど、子供ももたずに夫の収入に依存している私には社会的な価値などないのだろう。

私だって正社員で安定して働いて収入を得て子育てして社会に貢献する模範的女性像を夢見ていたころがある。バリバリ働いて稼いで税金いっぱい納めて、自分も家族も幸せでいられたらそりゃあさぞかし最高でしょうね。夫に捨てられたら終わり、ってねえ、分かってるよそんなの。

まあ、でも、うっせぇわ。

社会の役に立つバリキャリじゃなくてごめん。非正規でごめん。子供がいなくてごめん。自分の心の健康を優先して働くペースを選んでごめん。

ごめんだけど、頼むから放っておいてくれないか。

もしよかったら「スキ」をぽちっとしていただけると励みになります(アカウントをお持ちでなくても押せます)。 いただいたサポートは他の方へのサポート、もしくはちょっと頑張りたいときのおやつ代にさせていただきます。