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ぼくの記憶

どうして

独りになっちゃったんだろう。





ぼくは

肉球を怪我して
右目や右鼻も
なんだか良くなくて

2日続く雨の中
雨ざらしの駐車場の隅で
独りぼっちだった。

どっちに行って良いのかもわからないから

いっぱいおっきな声で鳴いて
鳴いて鳴いて

泣き叫んだ。





そしたら


知らない人間のお母さんが
ぼくを濡れない場所に連れていったんだ。




そこにはお母さんとお父さんと
ぼくよりちょっと大きい男の子と
細いお姉さんと
トラ柄の大きなお姉さんが2匹いて

ぼくは急に大家族になった。





それから

肉球が痛くなくなってきた頃


今度は

真っ黒な格好の魔女みたいな人が
ぼくを小さな箱に入れて
どっかに連れて行った。

男の子はあの時 確か
泣いていたんじゃないかな。


ぼくは怖くて、不安で
おしっこをずっと我慢していたんだ。

気付いたらぼくは
また知らない濡れない場所に居て





それから



魔女みたいな人が 毎日
ご飯をくれて
トイレをきれいにしてくれて
おもちゃで遊んでくれて

色んな人間が来て
ぼくと遊んでくれて

そうしてるうちに

すっかりぼくは
ここのお家の子になった。





ぼくは

ヒゲも肉球も鼻も身体も真っ黒で

耳を当ててよーく聞かないと
聞こえないほどの
小さい心臓の鼓動が

漆黒で静寂な夜を連想したから

nuit noire(黒い夜)から文字を拾って
ノイって名前にしたんだって。



ぼくはこの間 1歳になった。







彼を引き取った後

病院に初めて連れていった時に
「お名前と誕生日を書いてください。」
と言われて

なんとなく逆算して出した七夕を誕生日にしました。


2021/7/7に推定1歳。



友人家族が拾わなければ
出会わなかった命と

私は今 暮らしています。





本当にうちに来てくれてありがとうと思う。
毎日 朝目覚めたら可愛いと思う日々。





抱きしめて
お互いの温度と匂いを感じながら

今、在ることに感謝しています。



私達は生きている。

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