いざ、乳酸菌研究の旅へ
パン学校の授業はいよいよ乳酸菌の世界に突入。
(色々あって3週間遅れております。がんばろう~っ)
まずは自分で、乳酸菌にまつわるワードを検索して、
そこからどんどん知識を広げ、深めていこうという課題。
ほぼ知識のないところからのスタートだったので
めちゃくちゃ時間がかかりましたが
パン屋的に説明できるようにしたい!と思うところを重点的に
なるべくわかりやすい言葉でまとめてみました。
腸内ではたらく乳酸菌
善玉菌と悪玉菌
腸内に住む菌は、善玉菌と悪玉菌に分けられます。
善玉菌は、腸内を酸性にして悪玉菌の増殖を抑えたり、腸の働きを良くしたり、免疫力を高めたりする働きがあります。乳酸菌やビフィズス菌がその代表です。
ウェルシュ菌、ブドウ菌、大腸菌などに代表される悪玉菌は、腸内で有害な物質を作ったり、感染症や下痢などの原因になったりする働きがあります。
乳酸菌は、糖を分解して乳酸を作り出す細菌の総称です。
ヨーグルトや発酵食品などから摂取することができます。
小麦アレルギーとは
小麦アレルギーは、小麦や小麦製品を食べると、じんましん、下痢、腹痛、
呼吸困難などの症状が生じる食物アレルギーです。
小麦アレルギーの原因は、小麦に含まれるタンパク質に対する免疫細胞の過剰な反応で、免疫グロブリンEという物質が過剰に反応することで起こります。
乳酸菌がアレルギー反応を抑える
乳酸菌を摂取し、腸内細菌のバランスを整えて、T細胞という免疫細胞の分化を調節することで、アレルギー反応を抑えることができます。
T細胞は、獲得免疫の主力として、体を守ります。
T細胞には、Th1とTh2という2種類があり、
Th1は、ウイルスや細菌などの感染に対抗する働きをします。
Th2は、寄生虫などの大きな異物に対抗する働きをします。
Th2が過剰に活性化すると、免疫グロブリンE を産生してアレルギー反応を引き起こします。
乳酸菌は、Th1を活性化してTh2を抑制することで、免疫グロブリンEの生産を減らすことができると考えられています。
パンのなかの乳酸菌
パンはなぜ膨らむ?
そもそもパンがなぜ膨らむかというと
酵母菌が糖分を分解し、炭酸ガスとアルコールを発生させ、
そのガスを、小麦のグルテンの膜により閉じ込めるからです。
ところがバゲットやカンパーニュ生地は砂糖を加えないため、酵母菌のエサとなる糖分がありません。
現代のパン作りは酵母菌を主体として生地を膨らませるものが多く、酵母菌を主体としてバゲットやカンパーニュなど砂糖を入れないパンを作る場合には、一般的にモルトシロップ(麦芽糖)を添加します。
それに対して、乳酸菌のはたらきを利用してデンプンを糖分に分解するのが、ルヴァン種やサワードゥを使った大昔からある製法であると言えます。
パンのなかの酵母菌と乳酸菌
酵母菌は、デンプンをそのまま分解することはできません。
小麦には、α-アミラーゼとβ-アミラーゼの2種類のデンプン分解酵素が含ま
れています。
乳酸菌もアミラーゼを有していて、
小麦のデンプンをデキストリンや麦芽糖、ブドウ糖にどんどん分解し、
酵母菌が分解できる状態にします。
酵母菌はそれを利用して発酵していきます。
一方、乳酸菌は糖分をさらに分解して乳酸を発生させます。
それによって、生地中の㏗が下がり、微生物の繁殖を抑制する効果があります。
そのため、乳酸菌を主体にしてつくったルヴァン種やサワードゥのパンは、長期間保存することができます。
ところで、ほかの雑菌が住めなくなる中、なぜか酵母菌は、乳酸に耐えられます。そのため、ここでは酵母菌と乳酸菌は共存関係にあるといえます。
グルテンとは
グルテンとは、小麦やライ麦などの穀物に含まれるタンパク質です。
水とこねると、グルテニンとグリアジンという2種類のタンパク質が絡み合ってグルテンができます。
パンやうどんなどの食品に多く含まれています。
グルテン自体は体に悪いものではありませんが、
一部の人には以下のような症状を引き起こす可能性があります。
セリアック病:グルテンを摂取すると腸粘膜が破壊される重度のアレルギー
グルテン過敏性:グルテンを摂取すると腹痛や下病などの消化器症状が出る
小麦アレルギー:小麦に含まれるグルテン以外の成分に対するアレルギー
乳酸菌がグルテンを分解する
乳酸菌は、小麦に含まれるタンパク質を分解し利用するためのプロテアーゼという酵素を持っています。
この酵素は、パイナップルやパパイヤにも含まれています。
パイナップルをたくさん食べると口の中がひりひりするのもそのためです。
プロテアーゼは、タンパク質をアミノ酸などに分解して、旨味や栄養素を作り出します。
これにより、タンパク質の一種であるグルテンが人間の消化しやすい状態に分解されるため、ルヴァン種やサワードゥで作ったパンはグルテン過敏症や小麦アレルギーの方にも有効である可能性があります。
パンにおけるプロテアーゼの効果
プロテアーゼのはたらきにより、タンパク質が分解されアミノ酸が生成されるため、旨味がアップします。グルテンが分解され小麦の粘り気が低下させることで、パン生地の進展性がアップします。
さらに、アミノ酸と糖が結合されることで起こるメイラード反応を引き起こし、パンの風味がアップします。
まとめ
とにかく乳酸菌はすごい
腸内ではたらく乳酸菌は、腸内を酸性にして悪玉菌の増殖を抑えたり、腸の働きを良くしたり、免疫力を高めたりします。
ルヴァン種やサワードゥなど、乳酸菌を主体とするパン作りでは、乳酸菌は、酵母菌がはたらきやすい住みやすい環境をつくり、また乳酸によりほかの雑菌の繁殖を抑えます。
また、プロテアーゼという酵素により、人体にとって消化の負担になるグルテンを分解することができます。それにより、グルテン過敏症やグルテンアレルギーにも有効である可能性があります。
ほかにも、アミノ酸により旨味や風味をアップさせたり、乳酸菌を主体に作られたパンは人間にとって様々な良い効果をもたらします。
感想
ほんとうに、菌の世界もヒトの体の細胞も、うまくできてるなぁと、感心しっぱなしでした。以前読んだ「はたらく細胞」や「もやしもん」の世界を思い出しながら、想像の世界が広がる乳酸菌研究、楽しかったです!
ここまで知ると、乳酸菌を利用しない理由がない。
これからも少しずつ、私は乳酸菌研究者!という意識を持って
知識を広め深めていきたいと思います。
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