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バンドって本当に楽しいの? 【THE KEBABS 佐々木亮介& 田淵智也 インタビュー】

今回は THE KEBABS の Vo.佐々木亮介さんと Ba.田淵智也さん にリスナー(私)が 直接インタビューする というまさかのnoteをお届けします。どうしてそうなったかは本文を読んでね!



学生の頃にバンドを始めて、その後なんとなくやめてしまった人は 100万人ぐらいいる と思うけど、私もそのうち1人です。



「楽しくなかったわけじゃないけど、別に続けるほどじゃなかった」

「みんな時間がなくなって、集まるのがめんどくなった」

そもそも飲み会の方が好きだった



などなど、バンド辞めた奴が言いそうなことはだいたい全部言って バンドを辞めた私ですが、やっぱり続けている人を見ると「もっとやっても良かったかな」とか「私の知らない楽しさがあったのかな?」と思ったりして、たまにギターをひっぱりだしては、すぐに飽きて放置する、というのを繰り返す非常に一般的な元バンドマンをやっています。




で、私はファンとしては10年ぐらいずっと a flood of circle というバンドが好きなのだけど、なんでそのバンドが好きかという理由のひとつに 死ぬまでバンドを辞めなさそうだから というのがあります。

死ぬまで辞めなさそうというよりも、辞めるって選択肢がなさそう、というのが正確な言い方だけど(もちろん常に辞めたがってるアーティストもそれはそれで好きだけど)、a flood of circleについてはなんかもう 迷いがなさそうで清々しい。ので、長年変わらず好きでいます。



で、今回はそのa flood of circleの佐々木亮介さんが

 

UNISON SQUARE GARDENの田淵智也さん(Ba)

元serial TV drama 新井弘毅さん(Gt)

元ART-SCHOOL 鈴木浩之さん(Dr)


と組んでいるバンド THE KEBABS がTwitterでインタビュー募集をしていたところから話が始まります。



THE KEBABSは、ステージ上の飲み会かよ ってぐらい肩の力が抜けたライブをしているのが新鮮で、ストレートな楽曲も好きだったので結成した時から推してたのだけど、さすがにこの募集が出ていたときはファンとして オオン?! となりました。

好きなアーティストが公開でインタビュー募集していることもなかなかないし、その時抱えていたすべての原稿の〆切をふっとばして(編集さん本当にすいません!!!)応募してみたのだけど、それから1ヶ月したら担当の方から下のメールが送られてきた。



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驚きすぎて、もはや このメールをもらった時の記憶がマジでほとんどない のだけれど、とりあえず仲のいい友人とのラインを見返してみたら


「どうしよう、前日は15時ぐらいに寝るべきかな」

「取材ってやっぱりバンT着てくべきだよね?!」

「とりあえずインタビューに備えて Pixel 4 買ってくる」


という意味不明なラインを連打で送りつけまくっていた。いま思うと15時は寝るには早すぎるし(0時に寝た)、バンTはどっちでもいいと思うし(結局着た)、Pixel4はインタビューに関係がない(結局買った)。本当に好きなアーティストと仕事をすることになった時、ファンはいらん準備をし始めるということを身を持って知れた貴重な経験になりました。


※なお、あのとき 「睡眠はたっぷり取っておこう」「バンTはどっちでもいいと思う」「Pixel4は欲しいなら買っておこう」などと冷静な対応をし、田淵さん&佐々木さん役としてインタビューの練習に付き合ってくれた友人一同、最終的に何の練習にもならなかったけどこの場を借りてありがとう!



というわけで、ここからはTHE KEBABS 佐々木さん&田淵さんのインタビューをお届けします。

私はもしTHE KEBABSにインタビューが出来るなら「バンドのどこが楽しいのか」「何が好きで続けているのか」を聴いてみたいなと思っていたので、内容もそんな感じになっております。以下、どうぞお楽しみくださいませ。



■バンドの楽しさとは

ーまず、THE KEBABSをやっていてよかったこと、一番楽しいことはなんでしょうか?


佐々木:田淵さんは(ライブの)Tシャツに悩むことでしょ?

田淵:いやTシャツ選ぶのは苦痛だよ!笑 

佐々木:そうなの? 勝手にTシャツが趣味なんだと思ってた。

田淵:まあ苦痛は嘘だけど笑 でも THE KEBABS をやっていて楽しいことは(バンドとして)新人ってことかな。本業の UNISON SQUARE GARDEN(以下、ユニゾン)を続けてきて今の THE KEBABS があるわけじゃない? で、ユニゾンはもう走り続けるしかないし、元々決まってるスタンスをこれからも崩さないと思うんだけど、THE KEBABS はその反動だと思う。

「大きい音でいい曲弾けたらバンドは楽しい」ってことが、自分にとってのバンドの楽しさだとするなら、THE KEBABS はそこ以外はふざけてもいいんだよね。新人だから。

佐々木:バンドってそれぞれ制約があって「5分以内に収める」とか「楽器の種類」みたいな、それぞれの制約がそのバンドのオリジナリティになるんだけど、人間だからだんだん苦しくなってくるんだよね。制約があると燃えるんだけど、「もしこの制約をやめて曲を作ったらどうなるんだろう?」っていう別の可能性も感じちゃう。THE KEBABS はそういう制約がないところがいい。

10年間、a flood of circle(以下、フラッド) で自分に制約を課して、その中で作れる曲を重ねてきたから、THE KEBABS は「自由にやったらどうなるか」っていうのを試してる。

フラッドではライブの途中にお酒飲みたいって思っても一応そこは歌うんだけど、THE KEBABS だと田淵さんが歌ってくれるし「そもそも歌ってなくてもいいかな」と思う。自由でいいよね、THE KEBABS は。


ー去年のカウントダウンジャパンで THE KEBABS のライブを観たんですが、佐々木さんが曲の途中でお酒をお代わりして、代わりに田淵さんが歌ってましたよね...?


佐々木:歌ってたてか、怒られたよね笑


(※注 曲の途中で佐々木さんが消えたため、田淵さんが「おい佐々木、お前のパートだぞ!」と叫びながら急遽ボーカルに入っていた)


田淵:あれも歌わなかった1、2秒の間にすごい葛藤があって、ユニゾンではバンドでボーカル以外のメンバーがしゃべるのダサいと思ってるんですよ。でもTHE KEBABS だからいっかって思った...

佐々木:そういう、田淵さんがユニゾンでは守っている美学をTHE KEBABSで解放してるのは、俺がその引き金を弾いてるだけなんだよね笑 だから田淵さんに罪はないよ笑 

田淵:THE KEBABS は新人だから、普通は「ダサい」になるところが「ウケる」になるんだよね。人間って相手によって話すときの態度が違うと思うんだけど、これを自分の言葉で「仮面をかぶる」って呼んでいて、それをバンド単位で出来てるのは、わりと楽しめてるところかな。


ーTHE KEBABSにもバンドとしての制約や美学はあるんですか?


佐々木:それが、なかったんだけどだんだん生まれつつあるよね笑 とりあえず真面目な曲を書かないとか。「変にエモい曲を書かない」っていう笑

田淵:でもそれも2ndアルバムとかでは変わるかもね。

佐々木:そうだね。でも「これをやらない」って制約を決めると、バンドとして強くなるんだよね。「これはフラッドやユニゾンでもできるな」って曲をやってるうちはたぶん駄目だし、1stアルバムの『猿でもできる』とかは無意識に今のTHE KEBABSの方向性が出た曲かな。

田淵「ふざけてるなーって曲を平気な顔をして作る」っていうのがTHE KEBABSのオリジナリティになりつつあるよね。試行錯誤してるインディーズバンドって、ポップスでもポストロックでもなんでもやるじゃん。

でも、あれこれやってるうちはオリジナリティに繋がらなくて、そのうち自分達に向いてるものがわかって「これをやろう」って決めるとオリジナリティに繋がっていく。

THE KEBABSの場合、それが1年で見つかったのはそれぞれのメンバーのキャリアの為せる技だし、片手間のなかで「鼻くそほじりながら出来るバンドをやろう」っていう...

佐々木:これTHE KEBABSのキャッチコピーね笑

田淵:バンドをやることに特別な技術はいらないから「難しいことをやらない」っていうのは最初から決めてたよね。曲が難しくない、時間が短い、構成が複雑じゃないバンドをやろうっていう。


■お互いにミュージシャンとして

ーTHE KEBABSをやる上で、佐々木さんと田淵さんがお互いにミュージシャンとして好きなところってどこなんでしょうか?


佐々木:僕は忌野清志郎さんが大好きなんですけど、彼が昔のインタビューで「いまのロックはあまりにコードが変わりすぎる」「コードを変えることで間をもたせようとしている」ということを言っていて。でもそこから10年してユニゾンはその価値観をひっくり返したんじゃないかと思う。

ユニゾンはコード進行も展開もめちゃくちゃ変わるのに、ひと目でロックバンドってわかることをやっている。清志郎さんが言うことももちろんわかるんだけど、ユニゾンは清志郎さんの言うレベルを超えて、コードを変えることで新しいロックを実現してるなって思った。

だからそのインタビューを読んで「清志郎さん、ユニゾン観たら良かったのにな」「ユニゾン観たらなんて言ったかな」って思ったんだよね。

田淵:恐縮だな...笑 僕は、日々の中でいろいろ考えていると、当然バンドを辞める可能性とか「やめた方が楽だな」って考えがまったく浮かばないわけではないのね。でもいろんな可能性を考えた結果「バンドは続けるのがカッコいい」って思ってるからいまも続けてるんだけど、佐々木はいつ聞いてもバンドを辞める理由を知らないんじゃないかなって思う。

佐々木:笑

田淵:それがすごく励みになるし、自分もバンドやるかって思う。佐々木は喋ってるとバンドを続けようって思えるミュージシャンの1人だなと。


ー佐々木さんって、バンド辞めようって思われたことあるんですか?


佐々木:...ないっすね。

田淵:これこれ、この感じね。

佐々木:バンドは続けるとかじゃないかなっていう...「なんで生きてるの?」と同じで、なんでやらないのかがわからないし、皆やればいいのになって。

僕の意見ですけど、歌詞とか曲を一緒に作るって普通に考えたらめちゃくちゃ恥ずかしいことだと思うんですよ。自分の中身を全部見せないと一緒に音楽できないし、「これがカッコいい」って思ってるのを否定されるのってやっぱ辛いじゃないですか。だから(バンドをやるって)勇気がいるんだけど、それを乗り越えて一緒にやると、新しいものが見えてくるそのプロセスが楽しいんですよ。

「この人と面白いことができるかも」「良い時間が過ごせるかも」っていうのがバンドの良さだと思っていて、普通はそれは初期衝動で、だんだんなくなっていくことが多いと思うんだけど、俺は毎回その都度、その人とその時にバンドできることが楽しい。もちろん、曲が書けなくて悩んだり、メンバーと揉めるとかはやっぱりあるけど、バンドは続けるものだと思ってるから「これがあるから続けられる」とかはないですね。



ーちなみに、メンバーの話がありましたが THE KEBABS って喧嘩したりするんでしょうか?


佐々木:THE KEBABS はそんな感じじゃない笑

田淵:大人になってから組むバンドは、揉めてはいけないって学んでから組んでるしね。

佐々木:それもあるし、喧嘩しても何も生まれないことを知ってるというか笑 (バンドメンバーでの)子供じみた傷つけ合いはもう過去のものだっていうのもあるよね。



■今回のインタビュー企画について

ーTHE KEBABSはこういったファンによるインタビューや、対バン募集などの参加型企画も積極的に行っている印象ですが、なぜでしょうか?


佐々木:田淵さんがやりたいって言うからですね笑

田淵:真面目な話、音楽シーンって一方的にアーティストが音楽を届けるだけで、ユーザーも企みに参加するみたいなことがあまりにもないなと思っていて。プロならファンの意欲は無視した方が良いって考え方とかあるけどTHE KEBABSにおいては「そのこだわりいるかな?」っていう。

いまはYouTuberみたいなタレントにはファンの方も参加意識があるみたいなことが多いじゃない? でも音楽シーンは一方通行なコミュニケーションがまだ多くて、それって古いんじゃないかと思って。

音楽について文章を書きたい、インタビューをしたい、対バンをしたいっていう人がいるなら、それは掬ってあげた方がいいんじゃないかって思ったの。そしたらファンが音楽に興味がなくなる理由を、1個でも減らせるかなと思ったし。

佐々木:田淵さんは何かを表現したい人、アートをやりたい人を応援したいっていうのがあるんでしょうね。表現するパワーがある人を応援したいっていう。

田淵:THE KEBABSは新人だからそういう試みがやりやすいんだよね。面倒くさいやつもいるだろうけど、それは容赦なく無視する(笑)

佐々木:そういう「どうやってバンドを転がすか」っていうのが試せるのもTHE KEBABS やってて楽しいとこですね。


ーTHE KEBABSはいつまで続ける予定なんでしょうか?

佐々木:特に決まってないっていうね。体が元気なうちはなるべく死ぬまで音楽やりたいやつ4人がそろってるから、いつまでっていうのは決めてない。

田淵:飲み会みたいな感じに近いよね。空いている限りは、出来るだけ続けていくつもり。


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インタビューはここで終わりで、このnoteもこれで終わりたい気持ちでいっぱいですが、インタビューの会話の中で「聞いた話だけじゃなくて評論を書いて」「自分の感想も書いておいて」という話があったので、一応ここから私の感想も書いておきます。



私はバンドはちゃんとやらずにすぐに辞めてしまったし、そういう人は多いんじゃないかと思うのですが、田淵さんが言ってた「大きい音でいい曲弾けたらバンドは楽しい」って言葉は真理だなと思いました。
ギターをFコードで挫折してしまった人も、メンバーと揉めてバンドを脱退した人も、私みたいに特に理由もなく辞めた人も、この「大きい音でいい曲弾けたらバンドは楽しい」って感情は共通してたんじゃないかと思うし、そういうバンドの根本的な楽しさを的確に表現した言葉だなと思う。


それから、佐々木さんが「一緒にやると、新しいものが見えてくるのがバンドの良さ」だと話していたけど、佐々木さんは前にもライブで「飲み会やるよりバンドの方が楽しいじゃねぇかって話になって、組んだバンドがTHE KEBABSだった」と言っていた。

それを聞いて思ったのだけど、バンドをやるってたぶん「この人と一緒になにかしたら楽しそう」の言い換えというか、大人になってから言う「今度飲みに行きましょうよ!」が、学生時代は「バンドやろうぜ!」だったんだな...と思いました。私はバンドは続けられなかったけれど、でもやっぱり「バンドって楽しそうだなー」というのは今もあって、だから自分が得意なジャンルでバンドのようなことがやってみたいし、出来たらいいなと思います。


まとめて言うとTHE KEBABS、自分もバンドをやってみたくなるようなバンドでした。インタビューさせてくれてありがとうございました。1stアルバムも楽しみにしてます!




※なお、今回のインタビューへのサポートはお受けすることができません。何卒ご了承くださいませ。

読んでいただき、ありがとうございます!