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映画を音声ガイド付きで観るとかなりおもしろいという話

はろー、まいしろです!皆さんは「音声ガイド付き映画」をご存知ですか?


音声ガイド付き映画というのは、その名の通り音声でガイドしてくれる映画のこと。
主に視覚に障害のある方のために作られたもので、セリフだけではわからない映画の様子を、ナレーションで説明してくれます。


この「音声ガイド付き映画」を観たことがある方は少ないかと思うのですが、かくいう私もそんな一人。今回、Palabraさんから「よかったら音声ガイド付きの映画観てみませんか?」とお誘いいただき、人生初の音声ガイド付き映画を鑑賞してみることにしました。

こちらの記事は映画・映像のバリアフリー化を手がけるPalabraさんからご依頼をいただいて書いたものです!


今回、鑑賞するのはこちらの作品。

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・「知的障害者のアート」をテーマにしたドキュメンタリー
・1999年に公開された
・佐藤真監督による作品


すごく有名な作品でファンからの人気も高いらしく、期待がどんどん高まります。


まずは普通に映画を観る

まずは音声ガイドなしの通常版映画を観てみます。

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絵を描く人が出てきたり...

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陶芸をする人も出てきたり...

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ギャラリーで展覧会を開いたり...

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ラストは「しげちゃん」という方の作品が映されて終了。


結論からいうととてもいい作品でした。「障害者のドキュメンタリー映画だよ」と言われたときは、反射的にこういうのを想像していたのですが

まひるの_アートボード 1


実際はこんな感じでした。

まひるの-02


「まひるのほし」はまったり見れる作品で、いろんな障害者の方を丁寧に追いかけたドキュメンタリーでした。


個人的には、ただただキャンパスに絵の具を垂らしただけの絵を描く「ユキエちゃん」という女性が印象的でした。

彼女の絵はシンプルですが、その分「この絵を誰かに認めて欲しい!」「自分の気持ちを誰かに伝えたい!」といった欲をほとんど感じず、「キレイだから」「描きたいから」という衝動だけで描かれているように見えます。

大人になってからユキエちゃんのような絵の描き方を私はしたことがないし、下心なしに「描きたい」という初期衝動で絵を描けるのはうらやましくもありました。


いろんな方がいるので、仲良くなれそうだなーという方も、私は仲良くなれなさそうだなーという方も出てくるのですが、みんな「言葉だけじゃ足りないから作品にぶつけてる」という感じがしたのがよかったです。

冒頭、絵の指導をされている方が「外に出せていないだけで、内にはいろんな感情があるんだ」ということを話されていて、それがほぼそのまま作品のテーマになっていたように思います。


音声付きガイド作品はかなり楽しい


思っていたより良い作品でほくほくしつつ、次に「音声ガイド付き映画」を観てみます。

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普通の映画と同じように始まって...

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「河川敷に半袖の人々が20名ほど。地面には大きな絵画が...」というナレーション。

冒頭から、想像の1.5倍速ぐらいの速さでナレーションが進んでいきます。体感的には最近のYouTuberぐらい。現代人にかなり合わせられた速度です。


さらに驚いたのがナレーション自体の内容。

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このシーンには「砂浜にぽつんと立つ青年、少し離れたところに車椅子。水面の向こうに山がかすむ...。」というナレーションが。

観る前は「人が11名います。右奥には山がありますね。」みたいな超・事務的ナレーションを想像していたのですが、実際聞いてみるとかなり小説の描写に近く、文言だけで楽しめるような内容になっていました。

さらに視聴を続けると...

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こんなシーンあったっけ?!

一度観た映画のはずなのに、見覚えのないシーンが登場しました。

正確にいうと「観たはずなんだけどたいして気にしていなかったシーン」なのですが、改めて音声で説明されると「あ、このシーンってそういう意味だったんだ...」と、2回目にしてようやく監督の意図に気づきます。

この時点で思ったのが、「音声ガイド付き映画、かなりおもしろいのでは?!」という事実。

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2〜3時間の映画すべてを覚えることはできないし、当然見逃しているシーンもあるというのはわかっていたはずなのですが、音声ガイド付きで観てみると「想像以上に自分は映画のいろんなシーンを見逃していたんだな...」と実感しました。


ナレーションを作っている人の苦労がしのばれる

言葉だけで映画を説明しているのはかなり面白く、「なるほどなぁ〜」と感心するナレーションはたくさんあったのですが、特にすごいなと思ったのがこれ。

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絵の説明!


「まひるのほし」はアートをテーマにした作品なので、どうしても絵画やアート作品が出てくるのですが、アートをどう音声で説明するかというところにナレーションの匠の技が光っていました。

上の絵だと「明るめのトーンの作品。左半分をべったり覆うモスグリーンに、右半分の朱色がはみ出す。ところどころに白が重なる」という説明。ただただ説明するだけではなく、ちょっと叙情的な表現を入れてあるのが良いなと思いました。


これ以外にも...

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「太くシンプルな輪郭線。力強く塗り込まれたふくよかな身体。」

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「細長い粘土板。土台の真ん中にひも状の粘土。小さな穴が一列に空いている。紐の左右に肉厚な輪っかが5個ずつ並ぶ。」

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「明るい色調。青い下絵と文章の点の上に、緑やピンク、黄色の点が重なる。子ども・遊んでいるといった文字が垣間見える。」

どれも「短い時間で絵の中の一番大事そうなところをなんとかして説明する」という言葉の限界に挑戦していて「自分ならどう説明するか」を考えながら聴くのも楽しいなと思いました。


映画を音声ガイド付きで観るとかなりおもしろい

音声ガイド付き作品は、映画の製作陣と話し合いながら作ることも多いそうで、ただのナレーションというよりは「映画をより深く理解するためのツール」という方が近いように思います。

個人的には、ポン・ジュノ監督のような考察が楽しい作品や、ウエス・アンダーソン監督のようなグラフィックが楽しい作品は、音声ガイドで楽しむとより新しい発見があるのではないかと思いました。

目の不自由な方のために作られた「音声ガイド付き映画」ですが、一般の方でもかなり楽しめるので、ぜひこれまで機会がなかった方も楽しんでみてください!


映画「まひるのほし」配信情報


今回ご紹介した映画は以下のURLからご覧いただけます。期間限定でワンコイン配信を行っているので、気になった方はぜひチェックしてみてください。

音声ガイド版をご希望される場合は作品ページから「オンライン配信 音声ガイドミックス版」をお選びください。ワンコイン配信は2021年5月31日までとなります。


読んでいただき、ありがとうございます!