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『あみぐるみ戦隊アムンジャー』 第6話

アムンジャー生活が楽しくなってきたアミの前回のお話はコチラ ↓ 

雨上がりのお昼時。

中庭のアジサイを眺めながらアミは学食に向かっていた。

もちろん肩には編み玉の妖精・マルちゃんがちょこんと乗っている。

「ん?」

水色のアジサイの横の地面に誰かが座っていた。

なんと編み物をしている。

「マルちゃん、マルちゃん。あそこで編み物してる人がいる」

アミは小声でマルちゃんに言った。

「あっ」

アミたちの視線に気づいたのかその人が顔をあげた。

綺麗な顔立ちの男性だ。

男性はアミと目が合うと、フッと優しい笑みを浮かべた。

思わずドキッとする。

「ク、ク、クロ...」

とたんにマルちゃんが目を丸くして驚いた声を出した。

「黒?マルちゃん、どうしたの?」

「クロッシェ様なのだ!!!!」

男性はスッと立ち上がるとこちらに向かって歩いてくる。

「えっ?クロッシェ様って誰?なになに??」

アミは戸惑いが隠せない。

「編み玉の妖精と一緒にいるってことは君がアミだね」

男性はアミのすぐ近くまでやってきた。

「おっと、いきなり失礼。僕の名はクロッシェ」

「クロッシェ?」

「クロッシェ様はあみぐるみの国の王子様なのだ」

マルちゃんが興奮気味に言った。

「え??えっと、なんで王子様が大学の中庭に?」

アミは全く状況がつかめない。

「アミ、君を迎えにきたんだ」

「あの...えっと、まったく全然よく分からないのですが」

「これは君のものだね?」

クロッシェ王子は何かを手のひらに乗せてアミの前に差し出した。

小さな小鳥のあみぐるみだった。うす汚れていて少しつぶれたような形をしている。

「あれ、これは...」

アミには見覚えがあった。それはアミが初めて作ったあみぐるみで、ストラップにしてずっとカバンに付けていたものだ。

いつの間にかストラップが切れたようで失くしてしまっていたのだ。

「偶然この世界に来た時に拾ったのだけれども、僕はこのあみぐるみを一目見て気に入った。国に帰ってすぐに城の者たちに持ち主を探させたら、アミ、君だということが分かった。それから君がアムンジャーとして活躍していることもね」

「...」

「それで僕は決めた。アミ、君をあみぐるみの国の次期プリンセスとして迎え入れようと」

そう言うとクロッシェ王子はスルスルアミアミと何かを編んでアミの手の平に乗せた。

真っ赤なふわふわしたハートのあみぐるみだった。

「ぜひ僕と一緒にあみぐるみの国に来てほしい」

「すごいのだ!アミ、プリンセスなのだ!」

マルちゃんはピョンピョンとアミの肩の上で跳ねまわった。

アミは想像もしていなかった展開に呆然としてしまった。

「突然のことで戸惑うのも無理はない。アミ、ひと月後のこの時間にまたこの場所で待っている。それまでゆっくり考えてもらえないだろうか」

クロッシェ王子は透きとおるような瞳でアミを見つめた。

アミは思わず頷いてしまった。

「は...い」

「ではひと月後、またここで」

クロッシェ王子はそう言うとスッと立ち去った。


「えーーーー!ちょっと、どういう...」

アミは手のひらのハートとクロッシェ王子の立ち去った方向を交互に見た。

「アミ、本当にすごいのだ。おめでとうなのだ」

マルちゃんはまだ興奮が冷めない様子で言う。

一体何がどうなっているのだろう。

アミは頭の中がグルグルしてきた。


アムンジャーライフに慣れてきたと思ったら今度はあみぐるみの国のプリンセス?

アミはどうしたいのかな?ゆっくり考えよう!

頑張れ、アムンジャーアミ!


ー第7話につづくー

☆☆☆

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王子様からもらった真っ赤なふわふわのハート❤

あみぐるみの国では指輪の代わりにあみぐるみを渡すのが定番だとか。

愛を伝えるにはシンプルなハートがぴったり✨

キュンですね(*´ω`*)

最後まで読んでいただきありがとうございました♪とっても嬉しいです(*^^*)