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【全】がん患者さんを亡くしてつらい遺族にはピアサポートが必要です。飛鳥の会を紹介します#77

こんにちは、心療内科医で緩和ケア医のDr. Toshです。緩和ケアの本流へようこそ。

緩和ケアは患者さん、ご家族のすべての身体とこころの苦しみを癒すことを使命にしています。

今日のテーマは「がんで家族を亡くした方の遺族会」です。

動画はこちらです。

皆さん、今日は、がんで家族を亡くした方のための遺族会についてお話します。

大切な方をがんで亡くし、長い間つらい時間を過ごしている遺族は多いです。そのつらさを誰にも言えず、うつになった遺族のうち、医療機関にかかっていないひとは94%もいるという調査もあります。

しかし、そんなつらさも、同じような体験をした人同士なら、わかりあえることも多いのです。それが、ピアサポートです。今では、ピアサポートを行っているがんの患者会は日本中に広がっています。

ところが、がんで家族を亡くした方のピアサポートをしている遺族会は、まだまだ少ないのが現状です。私は10年前、ホスピスで働いている頃に、ピアサポートの重要性を知り、遺族の方々に呼びかけて、遺族会を作ってもらいました。集まった遺族の方はとても気持ちが楽になったと言ってくれました。

私は、このようなピアサポートをする遺族会がもっと増えれば、つらい気持ちを抱える遺族が減るのではないかと思っています。ですから、どのようにこの遺族会ができたかをこの記事でお話したいと思います。

この記事を見て、がんで家族を亡くした方のピアサポートをする遺族会の重要性を知り、日本で多くのこのような遺族会ができればうれしいです。

本日もよろしくお願いします。


飛鳥の会、誕生まで

私がまだホスピスで働いていたころ、半年に1回、その期間にホスピスで亡くなった患者さんの遺族をお呼びし、我々スタッフと話しあう会を設けていました。

それは、ホスピスを作る前に、私が勉強に行ったホスピスで、そんな会を定期的に催すことは良いことだと教えてもらっていたからです。

その会では、遺族の方々と、患者さんの懐かしい話や、私たちの知らなかった患者さんのエピソードなどを話しあい、楽しいひと時を過ごすことができていました。何回か会を重ねていくうちに、遺族から、この会がまたあるなら、次回も来たい、と言う声があがりました。

私は、少し戸惑いました。私たちが開催している会は、過去半年に亡くなった患者さんのご家族だけに来てもらっていたからです。

「どうしてまた来たいと思ったのですか?」とその方に聞くと、

「いやぁ、私と同じような境遇の人と話したら、とても気持ちが楽になったので、この会はとてもいいと思ったんですよ。」と言いました。

私は、ちょうどその頃、がんの患者会で行われている、ピアサポートの勉強をしていたので、そうか、これがピアサポートか、と思いました。

患者さん同士のピアサポートでは、我々医療者にはできないこころのケアを、患者さん同士で行っています。そんなピアサポートが、遺族にも必要なんじゃないか、とその時思いました。

がんで家族を亡くした遺族の会をつくろう、と私は決めました。そして、遺族に声をかけて説得し、生まれたのが、「飛鳥の会」です。


本当にできて良かった「飛鳥の会」

飛鳥の会は2010年7月10日に発足しました。当初は緩和ケアホーム飛鳥で亡くなった患者さんの遺族のための親睦会としてスタートしました。当日は30名の方が参加しました。

2014年より、奈良県の他の施設で亡くなった患者さんの遺族も参加可能となりました。現在会員数は約90名です。

すべて遺族が、独自に運営しています。私はあくまで、アドバイザーという形で参加しています。

当初は、年配の方でも気軽に参加できるような、レクリエーション主体の会にすることから始めたそうです。バーベキュー大会や、ハイキングなど、みんなで楽しめるような企画を考えたようです。私も可能な限り、参加しました。

そのうち、遺族が自分自身の話をする「語りの会」、医療者が講師の講演会などの企画もするようになりました。参加できない人のために、会報を作って郵送したり、ホームページも開設しました。

会を通して、遺族同志で、少しずつ悲しみが癒えるような会を目指したそうです。

今の飛鳥の会を見ていると、同じ遺族同士の話し合う場があることで、遺族は気持ちが癒され、安心できているように思います。また、男性の多くは、遺族ケアの「ケア」という言葉に抵抗があります。「ケア」されたくないという心理が働いているのでしょう。

しかし、飛鳥の会では男性の遺族が意外と多いです。飛鳥の会のスタッフが、あまり「ケア」と言う言葉を使わないで、一緒に楽しみましょう、というスタンスを取っているのが良いんだと思います。

男性の遺族で、はじめは表情も硬く、ぼつぼつ話をしていたような方が、少しずつ明るく話すようになってきました。少しずつ奥さんの死を受け入れられるようになっているようです。

また、「悲しみは変わらないけれども、つらい思い出も少しずつ癒されています。」と語ってくれた方もいました。自分で自分を癒すのを助ける場所を提供できているんだな、と私は感じました。

飛鳥の会を通じて、私の遺族外来に来るようになった人も何人もいます。飛鳥の会は、治療が必要な気持ちのつらさを持っている方の受け皿にもなっています。

気張らない、無理をしないといった、自然体で活動してきた飛鳥の会だからこそ、10年以上も続けられていると思います。今後も、継続してもらいたいと思うと同時に、私も積極的に関わっていきたいと思っています。

2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで亡くなる時代です。がんで大切な人を亡くす方も今後も増えていくでしょう。そんな方々のつらいこころを助けたいのです。

ピアサポートで、お互いのつらい気持ちを癒しあうことのできる遺族会が、もっと必要です。私はこの「飛鳥の会」のような遺族会が全国で増えてほしい、とこころから願っています。

遺族のこころのケアとして、遺族同士のピアサポートはとても効果があります。お互いのつらい気持ちを癒しあうことのできるピアサポート形式の遺族会がもっと必要です。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

私は、緩和ケアをすべての人に知って欲しいと思っています。

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