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【患】がんのステージⅠ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳを緩和ケア医が説明します。 #74

こんにちは、心療内科医で緩和ケア医のDr. Toshです。緩和ケアの本流へようこそ。

緩和ケアは患者さん、ご家族のすべての身体とこころの苦しみを癒すことを使命にしています。

今日のテーマは「がんのステージって何?」です。

動画はこちらになります。

みなさん、がんのステージという言葉を聞いたことがありますか?

がんの悪性度の違いじゃないの?と思われている方はいませんか。がんのだんだん治りにくくなる度合いじゃないの?と思っている方もいるかもしれません。全くの間違いというわけではないのですが、実はどちらも違います。患者さんの多くはあいまいに思っている方も多いかもしれませんね。

今日の記事では、がんのステージⅠ~Ⅳについて、それぞれ大まかにお話します。この記事を見ることで、がんのステージ分類について正しく知り、自分の病気がどんな状態なのかを正しく理解できる方が増えればうれしいです。


ステージⅣは末期がん?

今日はある患者さんのお話から始めます。その患者さんは70代の女性の方です。

昨日呼吸器内科の医師から、肺がんと告げられ、とても気持ちが落ち込んだので、緩和ケアで話を聞いてほしいと希望されて、緩和ケア外来を受診しました。

彼女は入室するなり、私に向かって言いました。

「主治医の先生に末期がんと言われたの。私、死んじゃうんですか?怖くて、怖くて、昨夜は全然寝られなかった。私どうしたらいいんですか?」

私は、昨日の呼吸器内科のカルテを見ました。どこにも、末期がんとは書いてはいませんでした。カルテには、対側の肺に転移のあるステージⅣの肺腺がん。遺伝子変異の結果を見て、抗がん剤治療の決定を、と書いてありました。

私は患者さんに聞きました。「主治医の先生は、末期がんと言われましたか?ステージⅣの肺がんと言っていなかったですか?」

彼女は、「そう、ステージⅣといわれましたけど。でも、ステージⅣって末期がんのことですよね?」

私は、そうか、ステージⅣのがんを、末期がんと勘違いしてるんだな、と思いました。そして彼女にお伝えしました。

「ステージⅣを末期がんだと思っておられるのですね。ステージⅣのがんは末期がんではありませんよ。あなたのがんは、確かに転移があり、手術では取り切れない進行がんではありますが、決して末期というわけではありません。主治医の先生は、治療のことは言われませんでしたか?」

彼女は「うーん、そういえば、抗がん剤はできると言っていたような気がします。」

私は「そうです。あなたの場合のステージⅣは手術はできませんが、抗がん剤での治療はできます。治療のできない末期がんでは決してありません。しかも、あなたのタイプの肺がんは良い治療薬が出てきて、抗がん剤を続けながら長く生きられるようになったり、治る人も出てきています。決してあきらめることはありませんよ。」とお伝えしました。

「そうだったんですか。近所で、5年前にステージⅣのすい臓がんと言われて、あっという間に亡くなった人がいたので、私はステージⅣというと末期がんだとばかり思っていました。私の勘違いだったのですね。安心しました。ありがとうございます。」と言いいました。

皆さんの中で、この患者さんのように、ステージⅣのがんを末期がんだと思っている方はおられませんか?

末期がんとは、積極的抗がん治療ができない、あるいはしないほうが良いと判断した状態のがんのことです。ステージⅣのがんは、ほとんどの場合は末期がんではありません。進行がんではありますが、治療ができる場合が多いのです。

がんのステージを正しく知ることが大事です。


がんのステージ分類

それでは、がんのステージとは何かについてお話しします。

がんのステージは、Ⅰ,Ⅱ、Ⅲ、Ⅳの4段階に分類されます。がんの種類によっては、0を入れて、5段階に分類することもあります。

これは、実はがんの拡がりによって、分けているのです。そして、ステージによって、治療法が異なってくるので、分けているのです。がんのステージⅤがあると思っている人もいますが、がんのステージはⅣまでで、Ⅴというのはないので注意してください。

がんは、1個のがん細胞が、身体の中でできるところから始まります。

がんの正常細胞と違う特徴には2つあります。1つは、無尽蔵に増殖すること
もう1つは、血液やリンパ液を使って遠くの臓器に到達し、そこでも増殖することです。これを転移と言います。

正常細胞は、ある程度増殖しますと、それ以上は増えずに、場合によっては細胞自身が死んでしまいます。また、ある臓器の細胞が違う臓器に移されても、生きていくことはできません。無尽蔵に増え、さらに体中に拡がって、そこでも増殖できるのが、がん細胞なのです。

ステージ0、Ⅰ、Ⅱは、がんの増殖がまださほどではなく、元の組織や臓器に留まっている場合で、早期がんと言います。

ステージⅢ、Ⅳは、がんが元の組織、臓器から飛び出して、周りに拡がり、あるいは他の臓器に転移している場合です。これを、進行がんと言います。

ステージ0
ステージ0は、がんが周りにほとんど広がっていない状態の場合です。

がんは粘膜の中の細胞が悪性化する病気です。その粘膜の中にまだ留まっている状態です。胃がんや大腸がんでは、内視鏡を使って治療をします。

取り切れれば、ほぼ完治できます。

ステージⅠ
ステージⅠは粘膜よりも少し出てはいますが、まだ1か所にとどまっている状態のものです。

多くのがんでは、手術が標準治療です。

ステージⅡ
ステージⅡは、ステージⅠより少し大きくなり、周りに拡がってきている状態です。1か所に留まっているとはいえず、ややがんが周りに飛び出しかかっている状態になってきます。

治療は基本手術です。

がんの種類によっては、再発予防のため、抗がん剤治療、放射線治療を組み合わせることがあります。

ステージⅢ
ステージⅢは、がんが、周辺の組織や、他の組織に拡がっている状態です。近くのリンパ節にも転移していると、ステージⅢになります。

治療法は、まずは手術を考えます。ただし、同時に、抗がん剤治療、放射線治療も加えることが多いです。すなわち、3つの治療の総力戦が必要となります。

ステージⅣ
ステージⅣは、がんが元の場所を超えて、離れた場所の臓器や、リンパ節に転移している状態です。

一般的には、完治は難しい状態となります。がんをコントロールしながら、生活の質を高めていくことが治療の目標となります。

ステージⅣには末期がんも含まれます。しかし、ステージⅣ=末期がんではありません。私は、ステージⅣのがんの患者さんでも抗がん剤が効いて、がんが無くなったケースも何人も見てきました。

治療は、多くのがんでは抗がん剤を選択します。手術は基本的には選択しません。遠隔転移があるということは、がんが全身に散らばっている可能性があると考えられますので、血液を介して全身に広がる抗がん剤を使うのです。再発した場合も、ステージⅣと同じと考えて、抗がん剤での治療が主になります。

まとめますと、

ステージ分類とは、がんの広がりによって分けており、その分類によって治療法が変わってくるのです。

ステージ1,Ⅱは早期がんで、がんが広がっていないので、手術をします。

ステージⅢ、Ⅳは進行がんで、がんが広がっている状態です。ステージⅢは手術、抗がん剤治療、放射線治療の3種類の治療法を組み合わせることが多いです。

ステージⅣは転移があるので、手術はせず、抗がん剤治療を選択します。

以上、ステージ分類について話してきました。

ステージⅣと言っても、ほとんどの場合治療はできます。末期がんと思ってあきらめないでください。また、ご自身の状態が今、どうなっているのかを正しく知り、これからの治療や生活の役にたててください。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

私は、緩和ケアをすべての人に知って欲しいと思っています。

このnoteでは緩和ケアを皆様の身近なものにして、より良い人生を生きて欲しいと思い、患者さん、ご家族、医療者向けに発信をしています。

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