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人情溢れるもんじゃ屋のお婆ちゃん

中学の頃、よく授業を抜け出して行った、もんじゃ焼き(駄菓子屋)屋があった
そこは同級生の家でもあり、隣の中学のワルどももよく来ていて・・
色々悪い相談、いや楽しい企画会議を・・・
そこのお婆ちゃんはオイラたちヤンチャ坊主の良き理解者で・・・
みんな大好きだった。
ひとりでも良く抜け出しては行ったものだ・・行ってみると、すでに誰かいたり、後から来たりの超人気店!
「ばぁちゃん・・もんじゃとラムネ!」と入っていくと・・
「あいよ〜、今何の時間だい?」
「数学」
「数学か・・あんたは数学が嫌いなのか?」
「うん、算数の時代から嫌い、わからねぇ!」
「ハハハッ!まぁ、金勘定ができれば問題ない!・・ほらよ!」
ともんじゃを出すと・・何気なく店先へ・・実はこれ見張り役をしてくれている。そんな状態で、よくお婆ちゃんと色々な話をした、自分の祖母の話や親の事、友達の事、良い事、悪い事、喧嘩の話・・友達との会話の中にも自然と入って来て、まるで仲間の様な雰囲気、時に友達であり、先輩であり、やっぱりお婆ちゃんで・・流石に彼女にはならなかったな!(笑)
ある時、隣の中学のやんちゃ仲間と、ちょっとしたトラブルがあった学校を「△△中をシメに行こうぜ・・」なんて話をしていた時・・・
ずっと横で片付けをしながら聞いていたお婆ちゃんが、
「あんた達・・その喧嘩はやめな!だって筋が通ってないだろう、筋の通らない喧嘩はよろしくないね!・・・あんた達の格も落ちるよ!」
その一言で、全員納得、廃案!…何気ない一言に重みがあったんだなぁ〜!

ある小学生が、万引きをした時の事・・それを見つけたお婆ちゃん!
「ボク!今僕がポケットに入れたガムねぇ〜(小学生が慌てて戻そうとすると)
あぁいいよ!持っていきな・・ただ覚えておきな、それ僕たちは本当なら10円で買うよな…その前のお婆ちゃんはそれを7円で買ってお店に置くんだ!…商売だからね・・3円の儲けだ!・・たった3円、その積み重ねでお婆ちゃんはご飯食べて生きられてんだ!僕たちが美味しい、美味しいってニコニコしてくれるから頑張れるんだ!・・その事だけは良く覚えておきなよ!」
素直に話を聞き、反省した表情で「ごめんなさい」と再びガムを返そうとすると・・「いいよ!ボクはちゃんと話を聞いてくれた、そのお礼とご褒美だ、そのガムはお婆ちゃんが奢ってやる!・・またおいで!」
小学生はちょこんと頭を下げ小走りに帰って行った・・
「お婆ちゃんすげぇなぁ〜」
「感動したべぇ〜!」
「この店は、俺たちが守ろうぜ!」・・・
と我々やんちゃ坊主達は感動と共によりお婆ちゃんが好きになった!
確かな記憶ではないが、その後、その子は親を連れて店に来て、謝罪・・でもお婆ちゃんはニコニコしながら、この子は素直な良い子だとお母さんに話していたって聞いたような・・・・

そう、売掛・ツケって言うものの経験もこの店からだった・・・
いつ頃からか・・なぜそうなったのか・・その辺のことは良く覚えていないが・・
広告の裏側だったか?藁半紙だったか?店の奥にクリップで束ねられた物が吊るされている
それぞれ表紙に名前が書かれていて・・
2枚目以降は
○月○日・・
もんじゃ−1・ベビースター1・ラムネ〜1
そして最後に名前
これは自分たちで申告・記載する。
その紙の隅にお婆ちゃんが〇〇〇円と赤の色鉛筆で・・・
小遣いをもらったらまとめてみたいな感じ・・ただ常にはダメ!
今日は無いのに友達の付き合いでって言う時とか状況に応じて・・
その辺はお婆ちゃんが判断してくれていたように思う。
「あんた、貯まっているよ!大丈夫??」なんて声をかけられる者も・・
お婆ちゃん曰く・・・
「あたしはあんた達を信じているから…それにもんじゃ食うため、遊ぶために、人様にたかったり、カツアゲしたりなんてみっともないことしてほしく無いからね・・」
中には踏み倒されたと言うか、裏切られた事もあったようで・・
「仕方ないよ、そのうち気付くさ…稀代の悪なんてそういるもんじゃない、みんな良い子だよ」
懐が深いと言うか・・でっかいんだよなぁ〜!

ある日、いつものように授業を抜け出し、もんじゃを堪能していると・・
お婆ちゃんが、「襖しめて、黙ってな!」と
ドキッとして言われた通りに襖を閉め息を殺す・・
「あぁ先生!いつもご苦労様ですね!」
「どうもどうも、こちらこそいろいろお世話に・・」
(やばい!〇〇先生だ(生活指導の怖〜い先生)・・・
「どうしました?こんな時間に・・」
「いやいや、ウチの坊主達が迷子になってないかと・・」
「ハハハッ!この辺なら目をつぶってでも歩ける子達だからね・・」
声の大きさからして、店の中にすでにいる様に感じた・・
「お婆ちゃん、もし迷い込んで来たら・・お願いしますね!」
「はい、はい!承知しましたよ!」
「じゃぁ・・失礼します!」
立ち去る先生を呼び止めるように
「先生、大丈夫あの子達は大丈夫だよ!みんな良い子だよ!変な髪型や服装も変だけどさ、みんな良い子だよ!ウチの店の自慢の客だからね先生……大丈夫だよ!」
「ありがとうございます」
しばらくして・・・「もう帰ったよ!でもあの人は良い先生だね!」
確かに、怖いが良い先生だった!
鋭い目が笑うと信じられないくらいその鋭さが消え優しが溢れてくる・・
学校に戻り何食わぬ顔で先生とすれ違った時・・そのすれ違い様に
「おい、町田!もんじゃ美味かったか?・・今度、先生も誘えよ!」
「えっ・・ええええ〜」(バレバレじゃん)
「はっはっはぁ〜!お婆ちゃんに迷惑かけんなよ!」と肩をポン!
思わず「はい!」認めちゃった!
そんな事が何度かあり・・懲りないアホ餓鬼!(笑)
「お前らまた、行ったのか!・・馬鹿野郎〜!」その繰り返し・・
あの手この手で抜け出して、どこか先生達もそんなやりとりを楽しんでいるかのようで「馬鹿!そんなわけねぇだろっ!」って言われるかもしれないけど・・・
間違いなくそんな時代だった。
先生や近所のおじさん・おばさん・兄ちゃん・姉ちゃん・爺さん・婆さん・・・
みんなが心のつながりみたいなものがあって、人情に溢れていた・・
とても大切な心を感じられた・・
こんな時代だからこそ、今こそ、そこに帰らなくちゃいけない

お婆ちゃんが・・
「あたしはこの子達を信じてんだ、今もこの先のこの子達の事も信じてんだ!」
って言っていたと聞いた事がある。・・嬉しかったなぁ〜!

こんな爺さんになった今でもあの時の事はよく覚えている・・
あの頃の大人達や仲間の何気ない言葉や心・思いが・・
今でもちゃんと支えになっている・・・・・・・・・・・・感謝

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