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仲間・友達・思いやり…愛

久しぶりに生まれ育った、大好きな街をプラプラっと・・
“あっ、アイツ居るのかな?”とふと思い立ち、喫茶店のドアを押す
“カランコロ〜ン”・・・
「いらっしゃいませ〜、お好きな席にどうぞ!」
“居た、居た!”‥「ブレンド、お願いします」と目を合わさぬよう伝え、あえて目立たないところに座った。
「は〜い!ブレンドね、少々お待ちください」
と言いながら水を持ってくるが気が付かない・・・
しばらくして・・
「はいお待たせいたしました」とブレンドが運ばれてくる
「ありがとう!不味そうなコーヒーだな!」
「えっ?ヤダァ〜!あんた何やってんのよ〜!」と爆笑!
「元気かよ!」
「見ての通りよ!…元気?」
「見ての通りよ!」
この喫茶店のおばさんは小学校の同級生…
と言うより幼馴染と言ったほうがいいかもしれない!
「ねぇ〜なんで、こんなところ座ってんのよ!カウンターに来てよ!」
「面倒くせいなぁ〜」
「イヤイヤ、面倒くせいのはこっちだわ!」
「そんなにオイラに側にいて欲しいの?」
「そう、ずっと正面から見ていたいの・・良いから早く!」
「普通、こちらで運びますからって、客にやらせないだろう!」
「あんたのくだらない悪戯で余計な仕事増やしてんだから、とっととやんなさいよ!」
「いやぁ〜あまりにも暇そうだからよ、なんか刺激をと・・」
「もう、良いから早く!」カウンターに移動し、落ち着いたところで・・
「ねぇ〜元気だった?」
「さっき、答えた!」
「お前、マジむかつく!」
「元気だった?」
「さっき答えた!」
「洋ちゃん大好き!(爆笑)」
「じゃぁ〜お嫁さんにしてぇ〜!」
「ヤダァ〜!」
「なんでよう!(爆笑)」

近況・たわいの無い会話・懐かしい話が続いた・・・
「そういえばさぁ〜君ちゃん覚えている?」
「君ちゃんって笠井君子(仮名)?」
「そう、亡くなったって知ってた?」
「えっ、知らない・・・」
「彼女さぁ・・村瀬(仮名)と結婚したじゃん!」
「うん」それは知っていた、正直、何で村瀬?とずっと思っていた・・・
「凄いD Vで結局別れちゃったんだけど・・」
「あぁ、やっぱり・・」
何となく、そうなった事が当たり前のような、変に納得出来るような・・
君ちゃんは誰からも好かれる優しく、明るく、いつも笑顔の性格の良い子だった。
一時期“俺、この子の事・・○○かも???”なんて思った事もあったような・・
その子がD Vで・・
あの明るく、優しい笑顔が・・・何ともいえない気持ちになった。
あまり人の悪口のようで言いたくないが、村瀬は、力のある者には調子良く接し、陰に隠れて弱い者イジメといったタイプ・・
「おい、辞めろよ、弱い者イジメは」と言われると
「えっ!冗談だよ、冗談!・お前もう行っていいよ!ごめんな!」
「お前、ダサいことすんなよ!」
なんてシーンが当時よくあった・・
「変な話、離婚は納得だ、でも亡くなったって病気?」
「うん、それがさぁ〜・・」と洋ちゃんは切ない表情を浮かべながら話だした。
村瀬との間には一人娘がいたそうで、離婚後実家の近くで二人仲良く暮らしていた。暫くは落ち着いた生活で、昼間は弁当屋さんで、夜は週に二日程近くの居酒屋でアルバイトしながら生計を立てていたそうだ。
ところが、そんな中、村瀬が居酒屋に呑みに来るようになり、金銭を強請る、仲間を連れてきては店でやりたい放題・・こんなことが続き、居酒屋を辞めざるをいない状況に・・どうしたものかと悩んでいた時・・・・
偶然、同級生の野沢達弘(仮名)と再会する・・
弁当屋に大量の注文が入り、その納品に事務所に…
事務所の奥のソファーに座っている男から
「あれ・・お姉さん、もしかして笠井?」
「・・・・・?」
「俺、野沢、分からねぇか!」
「えっ…野沢君?」
野沢達弘・・中学時代からヤンチャで高校進学するも、友達に対する教員の指導が納得できないと職員暴行で退学、その後裏社会で一家を構えるまでになる。
根は優しく、思いやりに満ちた本当にいい男である。
その日を境に、毎日のように若い衆が弁当を買いにくるように・・
実はあの頃、達ちゃんは、君ちゃんに『ほの字』だった・・・
「俺よ、君ちゃんが好きなんだよなぁ〜、でもよアイツ真面目だし、良い子だから俺なんかと付き合ったら・・やばいべぇ〜!」
「大丈夫だよ!‥心配しなくても、君ちゃんは俺と付き合うから・・」
「お前、マジ、殺すよ!」そんな会話をした事を覚えている。
この再会で君ちゃんは、達ちゃんに色々と相談するようになる。
当然、村瀬の事も・・・
この話を聞いて、黙っていられるような男では無い・・
「わかった、俺が話をつける・・」
「でも・・」達ちゃんの今を知る君ちゃんは最悪の事態を心配した。
「心配するな、誰にも迷惑をかけず、紳士に話すから」
村瀬と達ちゃんの間でどんな話があったのかはわからない・・
ただ、君ちゃんの前にその後二度と村瀬が現れることは無かった・・
達ちゃんと君ちゃんは、その後何度となく、娘さんも交え食事をしたり、遊びに出かけたりしていた。
ある日、娘さんから・・
「ねぇ〜達ちゃん、ママと結婚すればぁ〜」
「えぇ〜それは、ママやお前に後々迷惑をかける事になるから、ダメだ!」
「何で?」
「うん・・色々あんだよ!でもずっとお前らの事は応援してやるから!」
こんな会話もなされたと言う・・・

再会から2年の月日が流れた頃・・
君ちゃんの体に異変が起きた・・膵臓癌の末期だった・・
重ねて若年性アルツハイマーも発症していた・・この発症原因は、過去の頭部への損傷・外部からの衝撃の可能性もあるとのことだった・・・
失われていく記憶、奪われていく体力と君ちゃんは必死になって戦った・・
達ちゃんは何も言わず、ずっと寄り添った・・
誰が行っても分からず、ボーッとしていた君ちゃんは、達ちゃんが来たときだけはニコニコとしていた・・
ある時・・
「俺、お前が好きだったんだぜ!」と言うと・・・
「もっと早く言ってよ〜」と君ちゃんは泣いた
もしあの時、『好きだ』と言っていたら二人の人生は全く違ったものになっていたのかもしれない・・・
君ちゃんはご両親と娘そして達ちゃんの優しさに包まれ静かに旅立った。
「何だか、切なすぎるよね!この話聞いた時、眠れなかったよ」
「・・・・・・・・そうだなぁ」
「今、娘さんと達ちゃんは・」
「自分がヤクザである事や自分の思いを娘さんとご両親にも全部話して、決して表に出ず、陰で支えるって約束して、娘さんは君ちゃんのご両親と一緒にいるみたいだよ、達ちゃんも実際に色々助けているみたいよ!」
「そうか、あいつらしいな!で、達ちゃんは何処にいるの?」
「分かんないけど、地元は離れているみたい、事務所ももう無いらしい」
「そうか・・・・・堅気になったのかな?」
「どうだろうね、でも簡単になれないんでしょ?」
「う〜ん・・・まぁ〜ね」
「あんなに明るくてみんなから好かれていた君ちゃんがね・・切ない!」
「本当に良い子だったよな!」
「好きだったでしょ?ねぇ〜」
「ちょっとね!、洋ちゃんの次に・・」
「けっ!あっそうありがとう!、達ちゃんも凄いよね!かっこいい!」
「惚れちゃうだろ!」
「メロメロ!(笑)」
「俺の次とか言えよ!」
「(笑)ねぇ〜でもさ、あの頃のあんた達の馬鹿グループ、みんなカッコいいよ!
いい奴ばかりだったよね!・・本当にやっている事は馬鹿みたいなんだけど(笑)
みんな好きだったなぁ〜
楽しかったし、仲間とか友達を本当に大事にしてさぁ〜・・・
本当の思いやりって言うか、仲間意識っていうか・・ネッ!
絶対大事だよね!これからは特に大事だと思う!
何だかさぁ、変に良い人ぶってるエリートみたいな、なんかそういう奴らに言ってやりたいよね、お前らにこういう思いやりや優しさとかあるのか?
本当の友達や仲間はいるのかって!
あたし、忘れもしない、縁日でさぁ〜あたし達が絡まれてさぁ〜
二枚刃のカミソリ持った奴ら・・それ聞いたあんた達が助けに来てくれてさぁ〜
あれ、やばかったよねぇ〜!でもすごく嬉しかった・・・
あぁ〜懐かしい、あの頃に帰りたいネェ〜!」
「あったねぇ〜そんな事も!懐かしい〜あの頃に帰りたいなぁ!」
「ネェ〜あの頃に帰ったら何したい!」
「勉強!」
「馬鹿じゃないの!・・・お前は授業抜け出してもんじゃ行ってろ!」
「馬鹿、それじゃぁ変わんないじゃねぇか・・」
「いいんだよ!それで、変わっちゃダメなんだよ!あたし達はそれで良いの」
「そうだな、じゃぁ一緒にもんじゃ行くか!数学の時間?英語?」
「う〜ん、理科!」
「よしっ!」
「あの頃の先生達も良かったよね!」
「人間味があったよな」
「そう!めちゃくちゃだったけど!今じゃぁ大変な事になっちゃうんだろうけど、なんか、愛があるって言うの?そう感じたよね!」
「岩(ガン)さん(岩田先生)にばったり会って色々話した事があるんだけどさ、その時に言れた言葉が嬉しかった、お前らは学業としての成績は最低だったけど、人としての成績は最高だ!少なくても俺は高評価をつけてきたよ!それが一番大切なんだよ!って」
「やばい…泣いちゃう!」
「でしょ!また、殴ってください!って言いたくなったもんな!」
「よく殴られていたね!何だその目は、やるか?オイッ!とか言われてね(笑)」「誰が?洋ちゃん?」
「オメェだよ!」

“カランコロ〜ン”
「あっ、いらっしゃいませ〜!どうぞお好きな席へ・・・」
ふらっと立ち寄った幼馴染が営む喫茶店…切ない話を聞かされたがその切なさから仲間・友達の大切さ・素晴らしさを再認識した、自分が大切してきたもの・思いは間違っていないと確信した・・
そして、たとえバラバラになりそれぞれの道を歩んでいても自分には多くの仲間がいる、遠くから、心で支えてくれる、叱ってくれる・理解してくれる人がいる・・目の前にいなくても、声は聞こえなくても・・・・そんな思いがした。

“洋ちゃん、ありがとうな!あの頃に戻れた気がしたよ!
また寄らせてもらうよ!じゃぁな!

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