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心の声がモレる妻を、「ピュアだなぁ」と僕は思い、愛おしく感じてしまった…

その日は日曜日だった。

僕は、夕方6時ごろに帰宅した。
在宅だった妻のゆかりちゃんが、僕に駆け寄ってきて、

「わたしを見て!」

と言った。


「なに、なに、なに、なに~ぃ?」と、戸惑う僕。

「イイから、こっち来て!」

と、僕の手を取り引っ張るゆかりちゃん。


(なんだろう?
 …まさか、
 まさか脱ぐ気か?)


僕は、リビングの中央に立たされた。

ゆかりちゃんが、僕の正面に向かい合って立った。
その両手は、僕の両手を握ったままだった。


真剣な表情だった。


そしてもう一度、

「わたしを見て!」

と言った。


(……こ、この流れは?
 目を閉じるのか?
 その場合、キスに応じる以外の選択肢って、あるだろうか?)


ゆかりちゃんは、目を閉じることなく言った。

「今、これ、スッピンなの!
 エステに行ったら、凄いのよ~!
 もの凄く顔がキレイなの!
 わかるやらぁ~⁈
 肌が、凄くキレイになったの~~~!」



僕は咄嗟とっさに、「お、おお~っ!」と言った。

ゆかりちゃんが嬉しそうな表情を見せたので、
もう1度、「お、おお~っ!」と、重ねて言った。


そもそもゆかりちゃんは、普段から肌がキレイなのだ。
普段からスベスベのツルツルだ。


エステのおかげとは思はないが、今、それを言う必要はない。
ゆかりちゃんは喜んでいるのだから。


ゆかりちゃんは、鏡で顔をチェックした。
そして、こう叫んだ。

「このキレイな顔、
 写真に撮っとこぉ~っと!」


即、ゆかりちゃんはスマホで自撮りした。

今年の『図々しい大賞』受賞だな、と僕は思った。


ゆかりちゃんは、本音がモレる
心の声がモレる人なのだ。


ゆかりちゃんは、スマホで撮った写真を確認した。

「…ん?
 写真じゃ、肌がキレイだってことが、
 良く分からないなぁ~」


と言った。
やはり、本音がモレている。


僕は、(スマホには先入観って、無いからなぁ)と思った。
ちなみに僕の心の声は、モレたりはしない。






おしまい


※この記事は、エッセイ『妻に捧げる3650話』の第1606話です
※来年の創作大賞に向けてエッセイを推敲中(過去記事の書き直しです)
※今後、何度も書き直します(たぶん、他のエッセイも書き直します)

PS

私、奈星 丞持(なせ じょーじ)は、note創作大賞2024に応募しました。
恋愛小説です。
タイトルは『恋の賭け、成立条件緩和中』です。
こちら ↓ です。

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