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映画には『ジャンル』だけではなく、『タイプ』ってやつがあると思う

数日前に、黒澤明監督の映画『野良犬』を観ました。
白黒映画でした。

この記事はネタバレありありです。


古い映画です。1949年制作の映画ですから、かの敗戦から、まだたった4年です。その頃、映画を作るほどに復興していたというのが、少し信じられないほどの驚きです。

映画の中の日本(東京)の日常が、ものすごく貧しく不衛生でした。当たり前なんですが…。
プロ野球が大人気で、大いに盛り上がっているのにも驚きました。
「たった数年で?」と、当時の日本人のエネルギーを想像して、思わず、「恐れ入ります」と頭が下がりました。


約2時間の映画でした。
もし、妻のゆかりちゃんが一緒に観ていたなら、途中で寝ちゃったかなぁ。

冒頭は退屈です。
新米の刑事がピストルをられるのです。普通なら緊張感が走ります。
でも、白黒で、古い映画ですからリアリティーを感じないのです。間違いなく映画で、100%お芝居なのです。そう感じちゃうのです。

まずは、「絶対に面白くなる」「無駄なシーンやカットなどあり得ないのが映画だ」「集中して観るぞ」と思い定めます。

僕は、映画に入り込むために、10分前後の努力を要しました。

”黒澤監督の映画だから、間違いなく観る価値がある”

という大前提があるから、だからできた、という努力です。

でも、逆に言うと、10分間さえ努力すれば、あとは没頭できる映画でした。


* * *

観終わった僕に残ったのは、

この映画のテーマは「環境のせいにするな」だな
サブテーマは「環境のせいにしたくなるのも分かるよ」だな

という思考です。

「環境のせいにするのか、しないのか」という、この1つだけを鑑賞者にぶつける。
そんな、骨太な映画です。

時代背景を思うに、納得のテーマです。


そして僕は、数年前に観た黒澤監督の映画、『醜聞(スキャンダル)』を思い出します。


この映画も「裁判とは、正義が勝つ、ではない」という、たった1つの骨太テーマでした。

まだまだ、他の黒澤映画を観ないと何とも言えませんが、でも、1つの仮説が僕には浮かんでいます。

骨太なワンテーマを強烈に訴える

というスタイルが、黒澤映画なのではないでしょうか。

そのワンテーマを、観客の心のド真ん中にぶん投げる。
それのみに、2時間の映像と音声(音響)を集中投下する。

現時点では、僕は、そんな気がしています。


* * *

黒澤映画は、観ている2時間よりも、観終わったあとが充実します。
言い換えるなら、観終わったあとが楽しい映画です。

反対の映画もありますよね。
僕は、大好きな映画なのですが、トムクルーズ主演の『カクテル』です。
観ている1時間40分。僕は楽しくて仕方なかった!


でも、鑑賞後には、「ああ、楽しかった~」以外、何も残っていません。

『ミッションインポッシブル』も、

『オーシャンズ』シリーズも、


鑑賞中が楽しい映画ですよね。

『シンドラーのリスト』や、日本映画なら『壬生義士伝』や『鉄道員ぽっぽや』などは、鑑賞中はもちろんですが、それ以上に、鑑賞後が楽しい映画です。

鑑賞後、その人の残りの人生に”一石を投じる”映画なのです。

そして、「黒澤映画は”鑑賞後”に全振りしている」と思うのです。

鑑賞中の面白さへの工夫も、たくさんあることでしょう。しかし、それは、鑑賞してもらって『鑑賞後、深く考えてもらうため』の小細工です。

メインは、観終わった人が、どんな想いを持ち帰るか、です。
この1点だけです。

僕は、そう思います。


* * *

「映画 ジャンル」と、Google検索してみました。
すると、こう出てきました。

アクション映画、冒険映画、アニメーション映画、伝記映画、コメディ映画、犯罪映画、ドキュメンタリー映画、ドラマ映画、ファミリー映画、ファンタジー映画、フィルムノワール、歴史映画、ホラー映画、音楽、ミュージカル映画、ミステリー映画、ロマンス、SF映画、短編映画、スポーツ、スリラー映画、戦争映画、西部劇である。

引用:Wikipedia


僕は、どのジャンルにも、2タイプか3タイプあると思います。

タイプ1

黒澤映画のように、鑑賞後に重きを置いた映画
いわゆる、考えさせられる映画

例えばアニメ映画でも、『もののけ姫』は、このタイプです。

タイプ2

ミッションインポッシブルなどのように、鑑賞中に重きを置いた映画
エンターテインメント作品、という映画

ジブリ映画でも、『魔女の宅急便』は、こっちだと思います。

タイプ3
タイプ1とタイプ2の中間的な映画
良質なミステリー映画や、ユーモアあふれるヒューマンドラマなど

『容疑者Xの献身』や『八日目の蝉』などは、このタイプの前者でしょう。
『トゥルーマン・ショー』などが、後者の代表例です。


* * *

僕は、どのタイプの映画も好きです。
特に好きなのは、タイプ1。
考えさせられる映画です。

ゆかりちゃんは、タイプ1は好みません。

これまで、映画の好みを『ジャンル』だけで分析していました。
ゆかりちゃんが好まないジャンルは明確でした。暴力、流血、などはNGなのです。
でも、お気に召すと思ったミステリー映画がハズレたり、1度観て大絶賛だった映画を、TVでもう1度観たなら爆睡したりと、僕にとっては謎でした。

タイプだったのです。

観ているその瞬間が楽しいか、が重要なのです。
面白いとか、楽しいとか、笑えるとか、キュンキュンするとか、そういうのが重要なのです。

大絶賛した『レ・ミゼラブル』は、おそらく1度映画館で楽しんだから、そのときはもう、レミゼ(の内容)に飢えていなかったのです。


* * *

この記事の結論です。

僕は、タイプ1の映画は1人で観ます。
ゆかりちゃんを誘うときは、タイプ2で、かつ、ゆかりちゃんの好きなジャンルの映画です。
タイプ3も誘いますが、タイプ1寄りの映画はNGですね。

そんなふうに考えた、というのが、この記事の結論です。

僕は、ゆかりちゃんが大好きです。






チャオ!


※この記事は、エッセイ『妻に捧げる3650話』の第1067話です


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