第178話 「しゃべらんとイイ女」の真意


ゆかりちゃんは、若いころ「しゃべらんとイイ女なのになぁ」と言われたらしい。

「けっこう言われた」

「何人にも言われた」

「よく言われた」

と言っていた。


「なんだと~、って思った」

「しゃべっちゃアカンのか!って、思った」

と、ゆかりちゃんは言う。


若いころということは、当然発言した男も、若い。・・・若い。


◆ケース①

「しゃべらんとイイ女なのになぁ」といった男子の、心の声。

「ゆかりちゃん、アホやなぁ。ルックスはイイのになぁ。残念だ~」

「もう、黙っときなぁ、もったいないから」

「オレは、ゆかりちゃんのアホを知っちゃたけど、黙ってたら、知らん男は近づいてくるんだからさぁ」


◆ケース②

「しゃべらんとイイ女なのになぁ」といった男子の、心の声。

「ルックスは、イイ女。しゃべったら、めっちゃ楽しいやん! 最高!」

「気さくだし、庶民的だし~! 話しやすいし」

「最初はイイ女だから緊張したけど、気さくに話せるわ~」

「天然で、めっちゃカワイイし~!」

「ストレートに褒めるのは照れるし、引かれるかもしれんし・・・」

「かるく、茶化しとこうかぁ~」

「悪意がないのは、雰囲気でわかってくれるだろうし。こんなに会話が盛り上がっているんだし~」


◆ゆかりちゃんの思考 

ケース①しか浮かんでいない。ケース②が、想像できない。女性は男性に「女心が、ちっともわかっていない」というが、僕に言わせれば、女性も『男心はわかっちゃいない』と思う。

ゆかりちゃんの思考は、おそらくは以下のようなものだろう。

「なんだと~」

「わたしは、しゃべっちゃアカンのか!」「・・・あかん、のか(半泣)」

「どうすればいいの?」

「そんな、しゃべらんとか、ムリやし・・・」

「悪かったわね! ぷんぷん!」

「なんか、イイ感じ! って思ってたのに~」


うぶ。ウブ。純粋。ピュア。天然。アホ。あほ。鈍感。若いからね。そういう感じだったのだろう。


◆ケース②の男A 心の声

「あれ? 『良く言われるの~^^』って、返ってこないなぁ」

「しゃべったら気さくで、でも、ルックスは抜群って、さりげなく褒めたつもりなんだけどなぁ」

「なんか、怒らせちゃったのかなぁ」


◆ケース②の男B(男も鈍感) 心の声

「良し! オレは、がんばって『イイ女だ』って褒めたぞ!」

「しゃべらないとイイ女で、しゃべったらカワイイって、伝えたぞ!」

「オレは頑張って、言ったぞ!」

「わ~! 行っちゃったぞぉ~!」

「あれ? なんかおかしいぞ。あ、ぜんぜん脈、ないんだぁ」

「好きな人、いるよなあ、きっと」

「オレじゃぁ、ダメだよなぁ」


◆同窓会

50代になってからの同窓会で、当時の人気ナンバーワン男子から、「オレ、あの頃ず~っと、ゆかりちゃんのことが好きやったんやで~」と言われたらしい。

ゆかりちゃんは、「もう~! そのとき言ってよ~!」と、帰宅して悶えていた。


◆〆

僕は、「やはり神様はいるんだ」と思う。

僕と巡り会う、運命だったのだ。

だから、鈍感だったのだ。天然だったのだ。


僕は、そんなゆかりちゃんが大好きなのだ。

僕は、その天然に惹かれたのだ。



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