予防歯科に通うようになり、別な意味で、僕は僕を褒めてあげたくなった…
僕は、予防歯科に通い続けている。
かれこれ15年以上になる。
はじめは、「予防歯科」という言葉を知らなかった。
歯科助手さんに、「3ヶ月に1度、クリーニングに来るとイイですよ」と教わり、その通りにしただけだ。
神奈川県藤沢市に住んでいた頃、たまたま通った歯医者さんが最高だった。当時、開業したばかりで、明朗会計を自慢している歯医者さんだった。
明朗会計はモチロンありがたい事だったが、それ以上に、その歯医者さんの歯科助手さんが、とてつもなく最高でありがたかった。
歯石除去中やクリーニング中に、ただの1度も痛みを感じないのだ。
何なら、うたた寝だって可能な感じなのだ。
口を大きく開けるまえに、「リップクリームを塗りますねぇ~」と、唇にまで配慮してくれた。後にも先にも、出会ったことのないサービスだ。
その歯医者の歯科助手は、全員、ホスピタリティが高いのかもしれない。
でも、僕が当たった、あの歯科助手さんだけが、そうなのかもしれない。
さらには、あの歯科助手さんが僕にだけは、そうだったのかもしれない。
いつも同じ歯科助手さんだったので、この真相は分からない。
もう1つある。
僕を担当したその歯科助手さんは、かなりの美人だった。
正確には、キレイ30% かわいい70%の、メッチャ可愛い方だった。
やさしくフレンドリーな永作博美さんという感じだった。
推定年齢は27歳。
彼女のおかげで、僕は歯医者さん嫌いを克服した。
僕は、引っ越しを機に、その歯医者さんに行かなくなった。
それは、とても残念だった。
その後しばらくして、僕は、4年半暮らすことになる横浜市神奈川区菅田町に引っ越した。
その新居のアパートから徒歩3分の歯医者さんに、僕は定期的に通った。
僕を担当する歯科助手さんが、これまた最高だった。
推定年齢42歳。
彼女は、僕は殿様か? 王様かな? と勘違いしてしまうほどの、手厚い配慮をしてくれた。
小まめにウガイをさせてくれた。これは何気に、とてもありがたかった。
口を開けっ放しだとアゴが疲れるのだ。
他の歯医者の場合、歯科助手さんによっては、アゴが痛くなるほど開けっ放しにする。
その方が、作業効率は良いのだろう。それは分かる。
患者ファーストではなく歯科助手の都合ファーストのも、ちゃんと分かる。
菅田の歯医者さんの、僕を担当する歯科助手さんの場合、アゴが疲れたことなど1度もなかった。
また、その歯科助手さんは、これから行なう作業の説明を、とても丁寧に説明してくれた。それも都度つど、毎回。
処置中にも、
「歯ぐきのスキマの深さを測りますね~」とか、
「風を当てますね~」とか、
「ここ、もう少し、続けますね~」とか、
これから【何を】【どう】するのかを、その都度丁寧に教えてくれた。
納得感があり、安心できた。
『大切にされている感』が、ひしひしと伝わってきた。
当然だが、どの処置も、1度も痛かったことなど無い。
「惚れてまうやろ~~~!!!」と僕は、何度も叫びそうになった。
1度、いつもの歯科助手さんにアクシデントがあったらしく、別の歯科助手さんが対応したことがあった。
その結果、あの手厚い配慮は、歯医者さんの特徴ではなく、いつもの歯科助手さんのオリジナルな配慮だと判明したのだ。
ピンチヒッターの歯科助手さんに処置をしていただき、その3ヶ月後の、次の処置中に、いつもの歯科助手さんは、
「前回は(私じゃなくて)スミマセンでした」
と、僕にだけ聞こえるような小声で、そう言った。
3ヶ月後を予約して帰るときも、僕のシフトと、その歯科助手さんの出勤日とを合わせるようになっていた。
ある日、いつもの歯科助手さんが、処置中に、
「なせさんって、独身なんですか?」と、意味ありげな質問をした。
僕は「はい」と答えた。
当時僕は、今の妻、ゆかりちゃんと遠距離交際中だった。
住民票的には独身だから、「はい」という返事は、決して嘘ではないが…。
その時、微妙な沈黙が、僕と歯科助手さんの間に生じた。
その沈黙は、僕が、
「田中さんは独身ですか?」
と聞き返すのに、ちょうど良い間だった。
僕の第六感は、彼女はデートに誘って欲しいのだなと捉えていた。
(ちなみに、田中さんというのは仮名)
よくぞ自制したと、僕は僕を褒めてあげたい。
おしまい
PS
私、奈星 丞持(なせ じょーじ)は、note創作大賞2024に応募しました。
小説です。
タイトルは『恋の賭け、成立条件緩和中』です。
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