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笠女郎が家持に寄せる歌(14)うつせみの 人目を繁み 石橋の

うつせみの 人目を繁み 石橋の 間近き君に 恋ひわたるかも
                        (巻4-597)

世間の噂が煩わしいので、石橋のすぐ近くにいる貴方に逢うことができず、恋い続けています。

石橋は川の浅瀬に飛び石を置き、橋としたもの。
世間の噂がうるさく、煩わしいので、石橋を渡って逢いに行くことができないので、ますます、恋する心は、辛く募る。

すぐ近くに見える貴方に逢うことができない。
貴方も私に気づいて逢いにくることもない。
「うつせみ」は「世間」の意味と「現世」の意味がある。

笠女郎は、「現世」では、逢瀬は難しいと思い始めたのではないだろうか。
恋い続けていても、現世では、縁がないのではと。
そうなると、「世間の噂」が理由ではなく、「現世」では、愛する家持との縁がないということになる。

ただ、それでも、笠女郎は、家持を恋い続ける。
どうにもならない、ならなかったけれど、悲しいまでの、恋慕と思う。

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