侮蔑と真心(5)

ジャンはニケの熱心な看護もあり、順調に回復した。
その後は、修道僧フランシスコの手伝いとして、各地の教会や修道院内の祭壇や内部装飾の制作や修復の仕事に取り組んだ。
元々が、真面目で腕の良い職人でもあったので、すぐに顧客もつき、一年後には修修道僧フランシスコの付き添いなしで、仕事を依頼されるほどになった。
これには、ニケはもちろんのこと、修道僧フランシスコ、領主も大喜びである。

ニケ「さすがね、過去のことはしらないけれど、お世話してよかった」

修道僧フランシスコ「道に倒れていて、まずジャンの手を見たのさ、これはすごい腕の職人だとね、このまま死なせるには惜しいと思ったよ」

領主「もし、ジャンが良ければ、ずっとこの国に留まってもらって、フランシスコの後継をお願いしたい、もちろん修道僧になれとは言わない」

ジャンにとって、他に考えることはなかった。
あの暴虐なフィリッポやルチアの顔など、二度と見たくもなかったし、それ以上に自分を好いてくれるニケには愛情が育っていた。
そして、ジャンとニケは、本当に自然に結婚、夫婦となった。
そして、しばらくは、つつましいながらも、平穏で愛情にあふれた生活を送るのである。

しかし、そんな生活の中、特にジャンの表情に変化が現れた。
ジャンの故郷、つまりフィリッポとルチアに暴虐された街に、大問題が発生したのである。

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