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手紙 明治三十八年十二月三日(日) 高浜虚子宛

拝復

十四日にしめ切ると仰せあるが十四日には六づかしいですよ。十七日が日曜だから十七八日にはなりませう。
さう急いでも詩の神が承知しませんからね。とにかく出来ないですよ。
今日から帝文をかきかけたが詩神処ではない天神様も見放したと見えて少しもかけない。
いやになった。
是を此週中にどうあってもかたづける。
夫(それ)からあとの一週間で猫をかたづけるんです。
いざとなればいや応なしにやっつけます。
何の蚊のと申すのは未だ贅沢を云ふ余地があるからです。

中略

新宅開きには呼んで下さい。
僕先達(せんだって)赤坂に出張して寒月君と芸者をあげました。
芸者がすきになるには余程修行が入る能よりむずかしい。
今後の文章会はひまがあれば行く。
もし草稿が出来んようなら御免を蒙る。
以上頓首

十二月三日          金(※夏目漱石)

虚子先生。



漱石も、〆切には苦労した人。
その〆切に追われる中で赤坂で芸者遊び。(下手な理屈を書いているが)
文豪といえども、聖人君主ではない。



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