紫式部日記第102話丹波守の童女の青い白橡の汗衫、

(原文)
丹波守の童女の青い白橡の汗衫、をかしと思ひたるに、藤宰相の童女は、赤色を着せて、下仕への唐衣に青色をおしかへしたる、ねたげなり。童女のかたちも、一人はいとまほには見えず。宰相の中将は、童女いとそびやかに、髪どもをかし。馴れすぎたる一人をぞ、いかにぞや、人のいひし。

※白橡:団栗色の意味。白橡(しろつるばみ)とは、橡で染めた白茶色に近い色のこと。鈍色(にびいろ)の薄いもの。青白橡と赤白橡の2種がある。橡とはドングリの古名。
※汗衫:かざみ。童女が用いる上着

(舞夢訳)
丹波の守の童女が着ている白橡の汗衫が素晴らしいと思っておりましたが、藤宰相の童女は赤の白橡の汗衫を着ていて、お仕えする人の唐衣には青色の白橡を着させているのが対照的でもあり、心憎く思う。
童女の顔は、一人はあまり美しいとは見えない。
宰相の中将の童女は、背が実に高く髪型も見事に整っています。
ただし、その中のいかにも場慣れしている(物怖じしていない)一人を、見物者たちは気に召さないようで、いろいろと言っています。

衣装の描写はともかく、場慣れしている(物怖じしていない)一人についての見物者の評判を書くとは、どういうことだろうか。
高貴な女性が人前で顔を見せない時代であり、万が一そういう事態になった場合に女性は恥ずかしそうな態度を見せるのが、紫式部は当然と思っていたようだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?