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ローマ教皇庁の無意味な謝罪

20世紀(1913)の公式文書「カトリック百科辞典」の時点においても、ローマ教皇庁は、魔女裁判における拷問は「無い」と、表明していた。
※「カトリック百科辞典」:現在はパブリックドメインの情報源であり、ネット上に無料で公開されている。
(参考:その中の記述)
「この上なく、不思議に思うのは、夥しい魔女裁判において、あらゆる種類の魔女行為を含めて被告の自白が、自発的に、かつ、明らかに脅迫や恐怖や拷問なしに、引き出された事実である」
「しかも、気の毒な被告たちは、刑場で真相を打ち明けたところで、死刑になる身の損得には何の影響もないはずの刑場で、全面的に自分の罪を確認したのである」

しかし、夥しい裁判記録は、上記の記述を否定している。
そもそも、威嚇、脅迫、拷問は異端審問における合法的常套手段であり、拷問のうち、「予備拷問」の「指締め」と「梯子」は法的記録には全く記載されず「拷問によることなく自白」と記載される習慣であった。(不潔極まりない牢獄も、拷問とは記載されないが、被告には地獄のような状態だった)

また、法廷において自白を撤回することは、処刑直前の刑場においては、「何の影響もない」どころではなかった。
悔悛者として「絞殺後の火刑」が、「神の法廷で、嘘の自白を行った偽証者」「逆戻りの異端者」として生きながら焼かれることになるためである。

この記述を考えれば、ローマ教皇庁が、「20世紀に至るまで、異端審問と魔女裁判の実態を何も知らなかった」とはありえないはずなので、恐ろしいほどの、欺瞞と傲慢を示すものではないだろうか。

尚、ヨハネ・パウロ二世は、カトリック教会が犯した数々の過ちを率直に認め、神に謝罪した。
2000年3月、教皇は、キリスト教会の分裂、十字軍、異端審問、魔女裁判、反ユダヤ主義、先住民族への凌辱などに関する教会や信者の責任を認め、「神に対し」許しを請うたのである。

(参考)
「ローマ教皇のヨハネ・パウロ2世(79歳ポーランド出身264代目の法皇)が3月12日、バチカンのサン・ピエトロ寺院で、過去2000年間にキリスト教会が犯した罪を認め、神の許しを請うミサを行った。(2000年3月13日NHK朝のニュース)」
ヨハネ・パウロ2世が12日のミサで懺悔した内容は以下の通りになる。

 1.歴史上、あなたがた神の子(ユダヤ人)を苦しめた行為を深く悲しみ、許しを求め、真の兄弟愛を誓う。
 2.(十字軍遠征、異端審問などでは)異端に対する敵意を持ち、暴力を用いた。これらカトリック教会の名誉を汚した行いについて謹んで許しを求める。
 3.(アフリカ、米大陸などへの布教では)人種、民族的な差別に基づいた排他的な行いがあり、罪深いふるまいがあった。異人種の権利を迫害し、彼らの伝統的宗教や文化に対する侮辱的な態度を取った。(毎日新聞3月13日)

歴史的に見て、ローマ・カトリックの教皇がこのような懺悔のミサを行ったことは、一度たりともなかった。
あるいは、その時まで何の反省も、罪の自覚が無かったとも言えるけれど、これは「神に対し」許しを請うただけである。

真に罪の自覚があるならば、まず第一に、ローマ・カトリック教会の傲慢と冷酷、残虐、強欲の犠牲になった数え切れないほど多くの無実の人に、ひれ伏して罪を認め、謝るべきである。

筆者は、「本当の悪魔」の意味で「厳しく断罪されなければならない」のは、ローマ・カトリック教会(魔女裁判期では新教を含む)であると、考えている。

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