見出し画像

健さん(16)事件!健の部屋に美人女子大生が

そんな話からまた一週間、ひとみも圭子も美智代も、そして女子高生集団も、お目当ての健とは、何の進展もなかった。
しかし、金曜日の夕方、とんでもない事件が発生した。

情報源は、女子高生のまゆか。
「ひとみ先輩!大変です!」

ひとみは、まゆかからのコールなので、すぐに「健のこと」と察しがつく。
「うん!何なの?健さん?」
まゆか
「はい!健さん・・・今、月島の駅の改札口を出て・・・」
ひとみは、胸がドキドキしてたまらない。
「うん、だから、その次を言って!」
まゆか
「メチャ、大きなキャリーケースを引いた可愛い女子大生と歩いていて・・・」
「仲良さげで、健さんの顔が、やわらかで」

ひとみは、ますます焦る。
「改札を出たんだから・・・帰って来るのかな」
まゆか
「う・・・そうなると、美人女子大生連れ込み?」
ひとみ
「わかった!見張るよ、監視する」
まゆか
「はい!お願いします!」

そんな情報提供から、約15分後、ひとみは家の窓から、健と「美人女子大生」をアパートの前で発見。
健は、スーパーにでも寄ったのか、エコバッグを持っている。
女子大生は、まゆかの言う通り、大きなキャリーケースを引いている。

ただ、ここで戸惑ってしまうのが、やはり、ひとみ。
「健さんの恋人かなあ」
「すごい美人で・・・スタイルもいいなあ・・・モデルさんみたい」
「私みたいな、下町っぽい丸っこい女が出る幕じゃないし」
「そもそも健さんと、スマホのアドレス交換もできていないのに」

さて、健と大きなキャリーケースを引いた美人女子大生は、ひとみの戸惑いなど、知る由もない。
そのまま、すんなりと健の部屋に入ってしまった。

ひとみは、これでは仕方がない。
まゆかに、そのまま伝える。
「健さんと・・・女子大生・・・そのままアパートに」

まゆかは、焦るようながっかりするような、ひとみに怒るような。
「もーーー!何かあったら困るじゃないですか!健さん・・・ついに女子大生と暮らすの?ひとみさんがノロマなばかりに」

ひとみは、「ノロマとは何だ」と思ったけれど、もはや仕方がない。
「また何かあったら連絡するから」と、まゆかとの話を終える。

また、こういう時には、「嫌味半分のアドバイス」をして来る父良夫父が、「今日は美智代さんの店で飲み会」とやらで、家にいない。
それも、ひとみの焦りを増幅させる。
「本当に、のん気なお父様で」
「健さんが女を連れ込んだと言うのに、何の役にも立たない」
「おまけに酔っぱらって帰って来る?」
「その上、私より上手に焼いたシシャモとアジの開きで、ご満悦?」
「そこまで行ったら、お酒飲まないで、緑茶で十分」

しかし、そんなに焦ったところで、父良夫は夜の十一時まで帰って来ないし、健の部屋の灯りも、その前に消えてしまった。
ひとみは、お風呂に入っても落ち着かず、寝床に入っても一人悶々とするしかない。
何とも、苦しいばかりの寝付けない夜となってしまったのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?