月夜登閣避暑(白楽天)
旱久炎氣盛 中人若燔燒 清風隱何處 草樹不動搖
何以避暑氣 無如出塵囂 行行都門外 佛閣正岧嶢
清涼近高生 煩熱委靜銷 開襟當軒坐 意泰神飄飄
回看歸路傍 禾黍盡枯焦 獨善誠有計 將何救旱苗
月の明るい夜 楼閣に登り 暑さを逃れる。
日照りが何日も続き もはや凄まじい熱気の中に暮らしている。
これでは あらゆる人が業火に焼かれるような苦痛を感じてしまう。
清々しい風は どこに消えたのか。
草木は 微動だにしない。
さて どうしたら この悪魔のような暑さから 逃れられるのだろうか。
となると まず この街の喧しさから 逃れることが第一だ。
汗だらけになり必至に進み続けて 都の城門を出ると、高々とそびえ立つ仏閣が見えた。
その仏閣を高く登るにつれて 爽やかな風が吹き 街の喧しさからも遠ざかり 蒸し暑さは全く感じない。
襟を開けて軒端に座ると 気持ちはゆったり、精神も軽くなる。
やっと涼を取り、帰る道の周囲を見ると 稲もきびも 全滅だ。
高い塔に登り、我が身一つは確かに満足をしたけれど
旱魃で枯れた苗では 何の救いになるのだろうか。
※月燈閣:長安東南の仏閣、進士の合格者が蹴鞠をしたという記録がある。
※中人:人にあたる。人が凄まじい熱気の中に暮らすと訳した。
※塵囂(じんごう):世間の喧騒
※岧嶢(ちょうぎょう):高くそびえ立つさま
○元和二年(807):長安の作。諷喩詩
熱暑に苦しむ中、高い塔に登り涼気を得たものの、再び地上に降りれば旱魃の害を目にする。
やはり官僚としての、責任感を感じているのだろうか。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?