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うちの子、ジジイだと思ってなめていた

 「キイッ・・バッターン!」
猫扉が開く音に顔を上げると、目の前におかしな光景が・・・。
うちの子の口元から大きな砂袋みたいな、ビーズクッションみたいな丸くて重量感があるものがぶら下がっている。薄茶色に茶色の斑紋の謎の物体!だら~んと猫のひげ袋の下に・・! 休日の朝、洗濯機回しながらも溜まった疲れにうとうとしていたわたしは、事態を理解するのに時間を要した。

 てけてけてけ・・中年太りのうちの子の胴体の半分くらいもある物体を銜えたまま、わたしの前を横切り、カバーつきの猫トイレに頭を突っ込む。
「バサバサバサーッ!」
うわっ!鳥さんだぁ~!よろよろと立ち上がるわたし。(もうね、ほんとに寝ぼけた頭の中で救急車のサイレンが鳴り響いてたけど、如何せん体がまだ目覚めない。)
 ようやくトイレコーナーにたどり着いたら、うちの奴が獰猛な顔つきしてトイレ内でバサバサやっている鳥さんに何回も襲い掛かっている!

 まだ生きているじゃないの!助けなくちゃ!

 それからはもう夢中だった。にゃんこを引き剥がし、別室に閉じ込め、鳥さんを段ボールに確保。背中の羽根が抜けて血だらけだけど首も翼も無事みたい。それはキジの雌だった。

 これです、これこれ!(画像はお借りしたものです)首を銜えて運んできたから、丸い袋みたいに見えたんだね。
 キジの一家がうちの近くを通るのを何回か見たことがあるから、きっとその中の一羽だと思う。
 多くの場合、強面の雄が「ケッケッー!」と大きな声で威嚇しながら通り過ぎるので、うちの子は目を合わせないようにしていた。

 (これはまだ雪があるころの画像だけど) 
 こ~んな顔して目を細めて知らん顔して・・・。実は狙っていたんだね。ジジイだと思ってなめていたら、まったく!

とにかくキジさんを助けなくちゃ!

 それから急いでいつもお世話になっている動物病院に電話した。診て下さるそうなので、段ボール箱を抱えて行ってきたよ。

 背中の傷はけっこう酷かったけれど、他には傷がないみたい。応急手当をしてから野鳥保護センターに送ってくださるそうだ。ボランティアということで、無料だった。
 ああ、よかった。早く傷が癒えて自然に帰ることができるといいな。家族からは離れてしまうけれど、多分まだ若い雌だから新しく家族をもつことができると思う。そう信じたい。

 さて、せっかくの大物を取り上げられたうちのにゃんこさま(=^・^=)、しばらくキジたちがいた辺りを未練たっぷりで嗅ぎまわっていたけれど、どうやらキジの家族は引っ越しをしたらしく(当たり前だ~)、二度と姿を見かけることはなくなった。

 実はまだ若かった頃、キジの雛を捕まえて食べてしまったということがあった。でもそれは人間で言えば20歳くらいの時。もうすぐ人間で言えば64歳のジジイがこんなことするなんて思わなかったから、本当にびっくりした。お元気でなにより・・とは言え、目の前でやられたらやはり鳥さんを助けるよ。ごめんね~~m(__)m


 ※これはまだ春の初めころのできごと。Twitterでは呟いていたけれど、記録するのが遅くなってしまった。