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Journal:Satsuki(皐月)2.

5/11
仕事前にカフェで、そろそろ終盤に差し掛かった「坂本龍一 本当に聴きたい音を追い求めて」(ミュージックマガジン増刊)を読む。後半の過去インタビュー・対談・寄稿記事の章は、個人的に「うわーうわー!」となるような会話が繰り広げられていて、ルーツやピースを共有出来る誰か、同ベクトルで意見交換出来る誰かが居ることは物凄く素晴らしいことだと実感する。絶対的にいつでもフラットに熱く音楽を通した時代の流れや、互いに持論を展開し合える友人が私にも1人は居る。大学時代から変わらず、いつ会ってもこの空気感を共有出来る友人が居るだけでもうすごく嬉しくて幸せだ、という事に改めて気付く。


5/13
何となく今の気分だったので、昔コンクールで選曲したモーリス・ラヴェル「高雅で感傷的なワルツ」を久しぶりに弾く。結構細かいニュアンス忘れている。この曲はピアノソロも好きだけど、やっぱりオーケストラver.がダイナミックでついつい踊り出したくなる躍動感があって好きだなぁ。ピアノよりも管弦楽器特有の音の間の浮遊感があって心地良い。
この曲に雰囲気の似ているラヴェルのもう1つのワルツ「ラ・ヴァルス」。数年前に生で聴いたマキシム・パスカル指揮の「ラ・ヴァルス」は本当に素晴らしかった。空間、美、派手過ぎないフランスらしいエスプリ。夢見心地で個人的理想のラヴェルの音だったのを鮮明に記憶している。もう一度聴きたいなぁ。
あと、今日は人生で初めて盲目にハマったアーティストT.M.Revolutionのデビュー記念日だった。27周年となるそうだ。かれこれ26年は聴き続けているアーティストという事になる。classic・Rock・Metal・R&B・Soul・Jazz・Ambient・World Music etc…と常に音楽と旅し続けている気がするが、西川貴教氏はずっと変わらず自分のベースに鎮座している気がする。
そして20代の頃お世話になった某ベーシストの命日でもあった日。もう9年か。
どちらも私には無くてはならなかった出逢い。


5/14
雨の日曜。引き続きラヴェルの「高雅で感傷的なワルツ」に加えて、年に何度もやってくるドビュッシー熱の波。10代の頃から相も変わらずフランス近代、印象派の熱に浮かされたままだ。何かで読んだけど、人は10代~20代前半までに吸収した音楽や文学の影響を生涯色濃く受けるそうだ。すごく頷ける。
今日はドビュッシーのプレリュード1巻をバラバラと。1巻の中では「沈める寺」が一番好きだ。響きが本当に美しい。ずっとずっと響きの余韻に浸っていたくなる。下の動画はモニク・アースの演奏。ドビュッシーのピアノは彼女の演奏がとても好み。


5/16
真夏日。昼休憩に小1時間ウォーキング。新緑が深呼吸を誘い本当に気持ちが良い。平日の昼は人が少なくて、犬を連れて公園のベンチでうたた寝しているおじいちゃんとか、主婦が集って世間話をしていたりとか、公園の警備員さんがノロノロ運転の自転車で見回りしていたりとか、時間の流れがゆったり流れてて、どこか違う空間に迷い込んだような錯覚に陥る。

BGM代わりにpodcastの「Radio Sakamoto」を聴きながらウォーキング。以前気が向いたときにちまちまと聞いていたのだが、ここ最近改めて過去放送分を順番に聞いている。ゲストがBRAHMANのTOSHI‐LOWだった10年前の放送が凄く良かった。教授とTOSHI‐LOWの掛け合いは微笑ましくもあり、時にとても真っ直ぐで、とても大事な根っこの話をしていたように感じる。それにしても、過去の放送の文字起こしが20年遡って読めるというのは本当に嬉しい。


5/17
引き続き真夏日。5月半ばに30度超えとは?
暑さを考慮していつもより少し遅めの時間にウォーキング。学生達の下校時間だったり、お母さん方のお迎えの時間だったりで、昨日に比べて時間が早く流れている現実味のある感覚。
積んでいたちくま文庫「skmt 坂本龍一とは誰か」(坂本龍一/後藤繁雄 著)を読了した。1999年と2006年に出版された「skmt」「skmt2」の合本文庫版で初版は2015年。編集者がひたすら観察し考察した坂本龍一像を、教授との会話や日記引用で記録のように綴られる。ヒストリーやインタビューを単純に綴ったものとは異なり、2人の思考のやり取り、教授の脳内回路、ルーツ、発想の生まれる瞬間が、垣間見ることが出来る。非常にシンプルながらクリエイティヴィティに富んでいて、個人的には教授の関連著書の中でも「音楽を自由にする」(坂本龍一/新潮社/2009)年)の次に並ぶくらいに好きな本となった。

夕方早めにお風呂を済ませ、ゆっくり夕飯のカレーを仕込む。夫の帰宅前にある程度の家事が済むと達成感と共に気持ちの余裕が出来る。日々時間に余裕が出来るように前倒しが出来る性格だったら良いのに。しかしながら週に何度か在宅勤務が叶うようになった今は、本当に生活が良い方向に変わったとしみじみ。

5/19
デビュー作から好み過ぎて追っている恒川光太郎氏の文庫新刊「真夜中のたずねびと」(新潮社文庫)を読了。関係性が薄めの連作短編集。

単行本発売時の「好書好日」のインタビューでも語られているが、これまでの恒川作品の最大の特徴といえば、幻想、ホラーファンタジー。デビュー作「夜市」から続く安定のスタイルを今作品は敢えて角度を変えて現実を描いている。(エッセンスとして多少 非現実的な要素は含まれている。)どこにでもいるような普通に生きている人間が、ある日突然何かのキッカケで生活が反転するかもしれない可能性。各主人公が背負う重たく影を持つ現実と、再生へ向かう心理描写がどこかキッパリと清々しく、その対比が絶妙なバランスで読みやすかった。とはいえ、個人的にはやっぱり従来の恒川節の世界観が好きなのだなぁ。恒川作品でいうと、「夜市」に収録されている「風の古道」がいまだに1位の座に君臨し続けている。


5/20
先日読了本の中で教授(坂本龍一氏)が、カルロス・クライバーの指揮について少し触れていたので、久しぶりに大好きな1枚を聴く。BeethovenのSymphony No.7はクライバーおじちゃん指揮&ウィーンフィルのアルバムが最も好きだ。

踊り出したくなる、絶妙な浮遊感、音が遊んでいて楽しいリズム、キラキラした音。(途中でとぼとぼしているシーンも好き)、指揮中の踊るクライバーおじちゃんを眺めているのも好き。思い立った時に聞き返す1枚ですが、やはり聴き終わると多幸感に包まれて笑顔になれる。今回も然り。だった。


5/21
AMから美容院。かれこれ20年以上同じ美容師のAさんにお願いしている。改めて長くお世話になっているなぁ。学生時代カメレオンかの如く毎度無茶なヘアカラーチェンジをお願いしたり、おかげで髪が痛み過ぎている癖に真逆のカラーを入れてもらうという強行突破で案の定モミの木みたいなカラーになったりして、ベテラン美容師にトラウマを与えてしまったりという時を経て、ここ5~6年は「すっかり落ち着いてつまらん」と言ってくれる暖かい人物。感謝。

音楽、文学、映画etc…カルチャーについて敏感で幅広く、サロンに集まる他の美容師さんやお客さんもカルチャーセンスが良くて毎度交わす会話が面白くて、20年来刺激と癒しを受けている大好きな空間。髪のメンテナンス以外にも受ける充足感が大きい。
本日は、最近イベントでDJ参加してきたばかりの担当さんのエピソードを聞きつつ、日本人と海外での一般的な音楽耳の違いについて語る。ガラパゴス化のジパングと考えうる非常に興味深く頷ける調査結果とか。

それから、数か月前、10代の頃に読み耽っていた作家が急激に懐かしくなり、乱読した話。
父の影響で10代の読書歴は渋いのだが、例えば馳星周、北方謙三、安部公房、司馬遼太郎、村上龍、花村萬月、江戸川乱歩、金原ひとみ etc… 「10代ぶりに花村萬月とか読んだら、もう何だか!色々超えて笑えた。」というエピソードを話したところ、Aさん爆笑ののち「花村萬月やばいな、急に読みたくなってきた。帰りに図書館寄ろうかな(笑)」という具合。この感覚が共有出来る感じは心底嬉しい。釣られて帰りに図書館を散歩して帰宅。充実休日。

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