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嫌いになりそうな先輩から借りた本

「最近本読んでる?」
先輩から言われ、私は素直に最近はあんまり読めてないと伝える。そう私に問いかけた先輩の片手には一冊の本があった。気になったので、その本についていくつか質問した。
「なんか綺麗な話だったよ。読みたかったら全然貸すし。長いから返すのもいつでもいいよ。」
タイトルは「ラブカは静かに弓を持つ」
表紙からは、あまり内容を推察することは出来なかった。帯には「本屋大賞ノミネート」の文字。
丁度担当していたインターンも終わったし、久々に本でも読んでみるか。そう思い、私は先輩からその本を借りることにした。

そして今まさに、その本を読んでいる。
丁度第1章が終わり、第2章に入るところだ。
読んでいると色んなことを思い出したり、色んな感情が湧き出て、つい今の感情を残したくなった。

ストーリーを簡単に説明すると過去にチェロを引いていた青年が、音楽教室にスパイとして調査を行う話。先輩から「綺麗な話」と聞いていたため、最初はどこが綺麗なんだ?と不思議に思ったが、読んでいると確かに綺麗な話だと感じた。

思い出したことは高校時代のオーケストラのこと。
教室で演奏している時は小さい音だと思っていた先輩のファゴットの音色が、舞台上では会場全体に響く音だと気づいた日のこと。
介護施設で「ふるさと」を演奏をした時、涙を流す人がいてくれたこと。
自分の音色に自信が持てなかったこと。
最後のコンクールで演奏している時、心の底から楽しいと感じたこと。

オケ、特に吹奏楽のことは、競争があったり思い出したくないこともあるしで、小説とかでは触れようとしてこなかった。
だから、こんなに綺麗な思い出が甦ってくることが、少し意外だった。
高校時代の思い出として、なんというかその頃よりも美化されて思い出しているだけかもしれない。
けど、大事なことを思い出せた。そう感じる。

多分だけど、最近の私には余裕がなかった。
締切に追われているくせに先輩は「余裕がある」なんて言うし、そんな中インターンは始まるし、資格の勉強もしないといけない。
そんな中、将来このままでいいのかと転職を考えたり。

やらないといけないこと、考えないといけないこと、そんなことで頭も行動もいっぱいいっぱいになっていた、気がする。

焦っていると分かっていても、余裕が無いからどうすることも出来なかったんだろうな。
余裕が無いと不安になる。不安が頭の中でずっと居座り続けるから、焦ってる自分なんて嫌いだし、嫌になってたんだろうな。

余裕がないせいで、 先輩の言葉を信じられなかった。先輩は焦っている私を見て、もっと気楽に仕事をしてもいいと伝えたかっただけかもしれない。
インターンだって、本当にいい経験になった。何より一緒にやってくれた同期が、人前にできるが苦手な中、一生懸命一緒に頑張ってくれた。
資格の勉強だって、焦ることは何一つない。私がやりたいと思った時に勉強すればいいだけの事だ。

私の周りは、とても有難いことに素敵な人で溢れている。そんな素敵な人たちの周りで生きていられている今の私が大好きだ。
これは高校の頃から変わらない。周りの人が面白いし、かっこいいし、大胆だったり、繊細だったり、とにかく素敵なんだって事が、私の誇り。

良かった。思い出せた。
これからまた焦って、大切なことも忘れて、全てが嫌になってしまう時が来るかもしれない。
その時は、本を読む余裕なんて無いかもしれない。
けどまたいつか思い出して欲しいな。
私は素敵な人たちに囲まれているし、そんな私の人生って最高なんだってことに!

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