Let it be

Lockdownが始まってから、いろんなバトンがSNSの中に飛び交って、受け取ったバトン ’10 influential albums on me Challenge ’ だった。

確か以前にも廻ってきて、書き始めたものの、忙しくてそれどころではなく途中でそのままになってしまっていた。今回は、家にずっと引きこもっていて正式に仕事もお休みだし、堂々とguilty freeで、音楽に聴き浸ったり、書きものに勤しむことも可能であって、ゆっくりと書いてみるか、と、その私にとって大きな影響を与えた作品について想いを巡らした。

そうして、音に聴いているうち、これはおそらくこれ迄の私の人生を象徴していて、私の人生はこんな風でした、と、お葬式の時にかけてほしいような、そういう音のリストなんだ、と、思いついた。なんなら、これ迄、ではなく今から先の未来軸で、こんな人生であってほしい、まだ今の私が到達していない何かを象徴している曲もこの10のリストの中に入っている。

’Let It Be'は三つ目に選んだ作品だった。

久しく聞いていなかったのだが、同居人が最近、よくその歌を歌ったりして、思い出したのだ。12年前のあの日の朝の事を。

それは予期していた事だった。数年間の闘病生活で旧友のお別れの日が近い事を、誰もがわかっていた。最期の1ヶ月は、時間がある限りホスピスの彼女を訪れ、たわいもない話をしたり、逝く覚悟みたいなことについて、また、LOQ(Life of quality)について私たちは話した。それでも、やはり、さよならとは辛いものだ。

彼女の訃報に、やりきれない気持ちで、その朝、私と相方は普段着ることのない正装に身を包んで、車に乗り込んだ。いつも会話は消え、私たちは無言で、カーステレオから聞こえるニュースに聴き入った。それから、相方の音楽仲間で親友であったパームスキンのフラットに向かった。そして、彼がいかしたスーツに袖を通して身支度する間、Bill Evansを聴きながら、お茶を呑んだ。

車に戻り、エンジンをかけ、いよいよ葬儀場へと向かった。彼らの男同士の会話を聴きながら、助手席から窓の外の景色を眺めてた。そして、ラジオから突然流れてきた曲に、私たちは話すのをやめ、音量をあげて聴いた、Let It Beを噛み締めるように聴いた。窓の外、走馬灯のように流れていく風景に、気持ち重ねて、走馬灯のように消えていった友人の人生を重ねて、涙をこぼした。まるで今日のこの時の為に神様がかけてくれた音楽のように思えた。

今思うと、あれは友人からのメッセージだったんじゃないかなと、そんな気もする。

そして、Let It Beを聴きながら、もう一度、私は12年前に書き残した'LOVE'を読み返した。そして、思い出した。まるで映画のように、あの時の気持ち、あの時の再会、弔いという悲しい機会だったが、あの時代を駆けぬけていった彼らが慈しみの心をもって集い、労いの言葉を掛け合った時のこと。久しぶりにあった編集長が、'Yo men, I know you've done well'お前もよくやった、俺はわかっているぞ、とハグしてくれた時、さらに泣きそうになった。総勢たるメンツが彼女の為に演奏し、朗読し、皆で出棺を見守った。それから、その後のバレンタインの日に、ジャイルスはValentaine specialと称して彼女の為に愛の歌をプレイしたのだ。

そうして、私は'Let It Be'を聴くたびに、あの日の朝のあの時に戻る。

そこにはたくさんのメッセージがあって、思い出す度、記憶の中から湧き出す泉のように溢れてくるものがあり、静かに静かに感動するのである。

人の尊さを思い出して、尊い気持ちにハートが揺さぶられるのである。

Let It Be.

Lockdown Londonより 天国の静ちゃんへ 愛と感謝を込めて


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