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【少女小説】最短1週間でキレイになる方法 第2話


よかったら
第1話から読んでね✨ヽ(*^ω^*)ノ✨




『最短1週間でキレイになる方法』 ②


「なんで、助けてくれたの?」

  ゴミ箱から出て来たお兄さんは、地面に転がるアザラシの態勢から元気よく体を起こして、地面に座って、細くて長い足の間に両手を置いた犬っぽいポーズになって、不思議そうに私を見上げて、首を傾げた。
  私は立ったまま自分の膝に手をついて、お兄さんと一緒に首を傾げた。
「なんでって……怪我してないかなって……」
「ケガ? いてえ! ケガした! いってえ!  スッゲいってえ!!」
「そこ、病院ですよ? 病院に行きます?」
「行った方がいい?」
  綺麗なお兄さんは犬のポーズで座ったまま、手のひらを私に見せて来た。お手、じゃなくて待て!みたい。
  待て!の手は、ほんの少し擦りむいて、赤くなっただけ。血もにじんでない。あれだけ盛大に転んで、よくこれで済んだね。ゴミ箱が守ってくれたのかな?
「…….大丈夫そうですけど、念のために診て貰います?」
「治った」
「え?」
  言われて見たら、確かに手のひらの小さなすり傷は消えてなくなっていた。あれ!?傷があると思ったのは、見間違いだったのかな?
  ついジロジロ、お兄さんの白い手を見ていたら、お兄さんは手をギュッとグーに握り込んだ。そのままグーをスイっと空中で動かして、地面に転がったゴミ箱を立たせて、ゴミ箱の蓋を綺麗にゴミ箱へ着地させた。
  今の……明らかにそうだよね!?お兄さんがやったよね!?周りに何の装置も目隠しもないし、手品とは思えないよ!?
  驚いてお兄さんの綺麗なグーをマジマジ見たら、グーの向こうの綺麗な顔が、全然似合わないニヤっと悪い笑い方をした。
「最初に言っとく。俺は人間じゃない。だから怖がらなくていいぜ!」
「人間じゃない!? 怖い!!」
「怖くねえ! 怖いのは結局人間だって、いっつも人間は言うじゃん!」
「人間じゃなかったら何なの!? なんだか分からないものが怖いのも、人間だと思うけどな!?」
「自己紹介はもういいな。俺は君に礼するんだ」
「もう良いわけあるか~~!!!」
  お兄さんの話について行けなさすぎて、勝手にいっぱいいっぱいになって、つい叫びながらお兄さんの頭を叩いちゃった!
  うっかり初対面の、人間じゃない、犬みたいに座っている人?にツッコんじゃったけど、お兄さんは嬉しそうにニコニコ笑った。
「ウケる~♡」
「は!?」
「もう1回やって♡」
「もう良いわけあるか~~!!!」
  あまりにもお兄さんがやって欲しそうに頭を見せて来るから、しぶしぶもう一度叫んで、頭を叩いてあげた。
「ギャッハハハハ!! スゲースゲー!! もっかい、もっかい♡」
「もう良いわけあるかあ!! って、3度もして面白い!!?」
「ヒーヒー!! おもしれえ!!! もっか~い♡」
「いい加減にしなさい!!!!!」
  ビシッとツッコんであげたら、お兄さんは泣くほど笑って、座っていられなくなって、コンビニ前の地面でのたうち回って、見事にゴミ箱へ頭をぶつけた。
  ……これぐらいでこんなに爆笑するなんて、本当に人間じゃないのかも……?
  お兄さんが外国の人だとしても、テレビでコメディを見ていれば、これだけの事でのたうつ程は笑わないよね?
「いってっ! げっほえほっ! ウケ、すぎ、吐く~~!!」
「落ち着いて!? えっと!? 立てる!?」
  慌ててつい差し出した手を、パチン!と音がするぐらい勢いよく握って、お兄さんは立ち上がった。
  そのまま私の手をグイっと引っぱって、ゲラゲラ笑いながら問答無用で肩を抱いて来た!
  まだしつこく笑っているお兄さんの体は震えてる。ゴミ箱の中から出て来たのに、お花屋さんの前を通った時みたいに清々しい匂いがする。もしかしてこのお兄さんは、人間じゃなくて植物?
  ……じゃなくて!!!
  生まれて初めて、異性?に肩を抱かれてますけど!!!!?
  驚きすぎて、現実を理解するのに時間が掛かりすぎて、お兄さんに肩を掴まれたままになってる!
  今更お兄さんを押してみたけど、フランス人形みたいに繊細で華奢な見た目に反してビクともしない!
「ハア~! 笑ったあ~! ……よし! 君の願いを永遠に無限に叶えるか!」
「ま、待ってよ!! 願い事って、無償の場合、どのお話でも1から3個くらいでしょ!? 後になって、実は有償だ〜! 叶えた願いの数だけ国を滅ぼすのが俺だ~! とか言い出されても困るんですけど!?」
「滅ぼして欲しいのか?」
「欲しくない!! 人類はみんな栄えて欲しい!!」
「なら君が忘れない限り、人類はみんな栄えるようにする」
「どうやって……?」
  肩にある馴れ馴れしい白い手を押しながら、白くて綺麗に整った顔を睨み上げた。
   こっちは本気で睨んでるのに、お兄さんはニヤッと笑った。フランス人形みたいに綺麗な顔と、表情が全く噛み合ってない……表情だけゲスくて、浮いてるんですけど。
「フ~~ン。君の願いは、家族みんなが健康で幸せに暮らす事、友達の夢が叶う事、女の子らしい見た目になって女の子扱いされる事か」
「え!? 私、何も言ってない!! 止めて!! 恥ずかしい!!!」
「会った順に健康にして〜、夢を叶えてやるか~。君の妹の愛ちゃんは、しゃべらないけどな。俺より上だから」
「私、愛の話なんてしてないよね!?」
「俺は愛してる♡」
「ハア!? ツッコまれて、爆笑してただけでしょ!? 急に何!?」
「キレイだ♡ 女の子扱いしてえ~♡」
  よりによって私に対して、綺麗って何よ!!?
  そっちこそ綺麗なフランス人形のくせに!!!
  そう思ってゴミ箱男を睨みつけたら、獲物を見る目で見下ろして来た。ゲスい、ゲスい!綺麗な人がゲスい態度を取って来ると、C級ホラー映画みたいですごく不気味!でもC級だから弱そう。十字架か何かで一発KO出来そう。
  ちょっと試しに……
  両手の人差し指で十字架を作って、お兄さんに見せてみた。
「止めろ!!  離れろ!!  頼んでませんからね!? 女の子扱いされたいなんて思った事さえないから!!」
「十字架は〜置いといて〜!」
「分かった。ここに置くね。……じゃなくて!」
「ヒヒヒっ!  君の名前は? 名前教えて♡」
「ハア〜!? 人の願いを勝手に丸裸にしたくせに、名前は分からないの!?」
「そんなもんじゃん♡ 教えてよ♡」
「絶対イヤ、無理! 教えない!」
「明日は大学か。5限終わったら教室まで迎えに行く。おデートだ、おデート♡ スカート履いて来い♡」
「え!? 大学!? え!? 明日!? え!? 5限!? えっ、今夜はどうするの? 帰る家はあるの?」
  驚きすぎて、ものすごく早口になって、思ってもいないような心配を口走っちゃった!さっきゴミ箱から救出したばかりのヤツに、何を言ってるの!
  案の定、ゴミ箱から出て来たゴミ男は、私の肩をグッと抱いた。しかもニヤッとした。どう見ても調子に乗ったよね。やっちゃった……。
  それにしても、淡い儚い色の外見に、ニヤッとゲスい笑い方は全然似合ってない。白い頬も、水色の瞳も、金色の長いクルクルヘアも、何1つ全く嵌ってない。もっと濃い色の方が合いそう。例えば、黒とか。
「んまっ! 家って程じゃねーけど、寝る場所ならある」
「まさか、橋の下? 今夜は雨よ? ビニールシートはあるの?」
「シートはねーけど、フタがある」
「…………」
「ん?」
「……ゴミ箱で寝る気?」
「いーだろっ♡ 昨日、一緒にいた女がホムセン(ホームセンター)で買ってくれたんだ♡ 飲みすぎて、なんでゴミ箱に入ったかは忘れちまったけど、きっとブチ込まれたな! ま、願いを叶えた後は、大体こうなる」
「…………」
「んん?」
「……何をした?」
「女がさ。結婚してる男を手に入れたいって言うから、平和にやるかと思って、男の奥さんに言い寄ったんだ。どちゃくそキュンになって、奥さんが機嫌よくなって、つられて男も機嫌よくなってさー。ニコニコ夫婦になって、俺はもういらないって奥さんに言われたから、俺に願い事した女に俺でいいじゃんって飲みながら話したら、ゴミ箱買ってくれた」
「ちょっと待って? それって願いを叶えるどころか、完全に壊しに行ってるよね?」
「俺が手に入るからいいじゃん」
「大雑把すぎ! その女の人は、その男の人が好きなんだからね!?」
「俺の方がいい男だから、上位互換だ!」
「どう考えたって下位互換でしょ! 人間じゃないんだから!」
「そっか! 人間じゃねーから、今からゴミ箱持って女のとこ行ったら、ウケるか!?」
「何が、そっか! よ!? ゴミ箱に押し込むだけで済ましてくれた、その女の人の気持ちも少しは考えなさいよ!!  行くんじゃない!!  アホーー!!!」
「ギャッハハハハハーーッ♡」
「……はあ……。ダメだこりゃ……。それで? どこかに泊まるお金はあるの? 今夜は雨だよ?」
「奥さんに全部貢いじまった!」
  気が付いたら、謎に爆笑するゴミ箱男の手を肩から払って、ため息をつきながらリュックの中のお財布を出していた。
  女の子らしくなりたくて必死にバイトして貯めたお金だけど、目の前に何をするか分からない人?植物?ゴミ箱の精霊?がいるのに見過ごして温存しておきたいとは思えない……。こんなのと関わったってきっとロクな事ないのに……。
  これでますます、女の子らしさから遠ざかっちゃうな……。お人良しで騙されやすい地黒のおばあちゃんに近づいちゃうな……。
  嫌になるけど、これが私なんだよ。つい周りを助けて、自分は後回し。
  お財布からそうっと1万円札を抜いて、黙ってゴミ箱男に差し出した。お金を見たら、ゴミ男はパアッといい笑顔になった。
「スゲー! 万券だ!」
「願いを壊された女の人の所へノコノコ行って、刃物が出て来ちゃったらと思ったら……こっちが安眠出来ないから……。ひとまずこれで今夜は大丈夫でしょ? 雨なんだから、ちゃんと屋根のある所で寝るんだよ?  仕事は? 明日からの当てはあるの?」
「適当に行ったり来たりして、小遣い増やしてっから」
「……行ったり来たり……!?」
「今日はスロット行ったり来たりして、ガンガン増やすわ! 任せとけ!!」
「駄目!! スロットに行くお金じゃないから!! あったかいご飯を食べて、ゆっくり眠るためのお金だから!!!」
「スロットで増やせば、明日もゆっくり過ごせるじゃん!」
「負けたら今夜が越せないじゃない!! そんな単純な計算も出来ないの!?」
「スロット行く! スロットで増やす! スロット、スロット、スロット、スロット!!」
「もー!! スロットに行かないなら、お茶してあげるよ!? どうする!?」
「ノースロット! オッケ~♡」
  スロットゴミ男はコロッと笑顔になって、1万円札を持った私の手を押しのけた。しかも親指を立てて、パイロットみたいなグッド!サインをして来た。
  ……ほんっとうに……何なの!?コイツは!?
  人間じゃないとか、願いを叶えるとか、綺麗とか、ノースロットとか言って……訳が分からないから!!
  でもスロットより、1万円より、私に興味がありそうなのはちょっと嬉しいかも……。いやいや、謎のゴミ箱男にすぐ心を許しちゃダメでしょ……お金もしまわないと。でもでも、さっきの願いを破壊した話だって聞き方によっては、夫婦が不倫で大事故を起こすのを未然に防いだとも言えたりしないかな?実はそれが願い主の女の人にとっても、一番幸せとは言えないけど、無難な幸せだったりして?
  ひょっとしてこのアホは、知らないうちに人を助けて来たのかな?アホだから、狙っては出来なさそう。そう、アホだから。結果的に何とかなってるだけだったりして。
  うん。アホだもんね。アホだけど……でも……
  ちょっとだけ、えらいかもね。
  なんて考えながら、お金を素早くしまって、元通りにリュックを背負いなおした。
「……妹の診察が終わるまでだから、そんなに長くはお茶出来ないからね?」
「俺らのコンビ名って何にする? そっか! 君の名前から取るか!」 
「そっか! じゃないでしょ! 勝手にお笑いコンビを結成しないでよ! あと短時間のお茶でも、スロットは絶対に!」
  話している途中で、パーカーの中のスマホが1回振動した。
  いけない!愛からだ!
  慌ててラインを開いたら、スタンプで「家に帰るよ」と言っているみたい。
  もう診察が終わったの!?
  まだホットレモンも買ってないのに!?
  いつも2時間は待つのに!?
  急いで「ごめん!先に帰ってて」とメッセージを送った。すぐに、ちぎれかけた腕でOKするゾンビのスタンプが届いた。 ……びっくりするくらい返信が早い。
  愛って本当に不思議。まるでこうなるのが分かっていたみたい。病院に来たのもコンビニに来たのも、愛に頼まれたからだし……。
  まさか愛は……診察を受けてない?
  まさか。そんな訳ないよ。
  たまたまこうなっただけだよね?そうだよね?



ダメかなあ?



次回!!

〜スロットゴミ男のすごすぎる秘密!〜

ご期待下さい!!!



↓普段は真面目な小説家です。よろしく四万十川




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